【10リスト】私たちの心を揺らしたあいみょんの名歌詞10

【10リスト】私たちの心を揺らしたあいみょんの名歌詞10
新作『瞬間的シックスセンス』をリリースしたばかりのあいみょん。昨年の大ヒットシングル曲“マリーゴールド”や“今夜このまま”も収録したこの2ndアルバムは、彼女の歌とメロディの魅力がぎゅっと詰まった、まさに大名作となった。今作に限らず、あいみょんの楽曲は、そこで描かれる「歌詞」がリスナーの耳にしっかりと残るものが多い。というわけで、これまで彼女がリリースしてきた楽曲の中から、今こそ改めて聴いておくべき10曲をピックアップし、その歌詞世界をひもといてみたい。できれば1曲分の歌詞すべてを通して理解してほしいと思うけれど、ここでは、その中でも特に、その物語の「核」をなすような言葉を引用して解説していこうと思う。気になった楽曲は、ぜひとも全貌をチェックしてみてほしいです。(杉浦美恵)


① 貴方解剖純愛歌 〜死ね〜

《ねえ? どうしてそばに来てくれないの/死ね。 私を好きじゃないのならば》


この楽曲であいみょんを知ったという人も多いはず。字面だけを追うとどこまでも猟奇的なこの歌詞を、ここまでカラッと歌い上げることができるのもあいみょんならではだが、衝撃的な歌詞はもちろんメタファーで、愛する人とともにいられない人生の無意味さを綴る歌詞は、そのおどろおどろしさとは裏腹に、切実で微笑ましささえも感じさせるのが面白い。サビの一番の盛り上がり部分に《死ね。》という歌詞をあてて、ライブで思い切りシンガロングできるように作られているのもいい。


② おっぱい

《揺れるたびに オトナになり/揺れるたびに オンナになる/揺れるたびに 変わってゆく/揺れるたびに 愛おしくて》

揺れているのは「おっぱい」だけではない。思春期に、初めて経験することや初めて抱く感情に、心の奥まで揺れて少女は大人になっていく。ゆらゆらと不安定だけれど、すべての出来事にときめいて、そして気恥ずかしくて、いつしか愛を知る。人生で一度だけ通過するまぶしい季節のことを、「おっぱい」のふくらみに重ね合わせて描いた、あいみょんの隠れた大名作。常々「その時の自分にしか書けない歌を書きたい」と言っているあいみょんだからこその瑞々しさでもある。まだ10代の頃に作った楽曲かと思うと、そのソングライティングセンスの早熟ぶりに改めて驚く。


③ 生きていたんだよな

《「今ある命を精一杯生きなさい」なんて/綺麗事だな。/精一杯勇気を振り絞って彼女は空を飛んだ》


記念すべきメジャーデビューシングル曲。あいみょんの独特な死生観をストレートに綴った歌詞が衝撃的だった。「生きる」ことと同等に「死ぬ」ことがあり、それを選んだ「彼女」は、誰よりも「生きて」いたのではないかと問うような歌詞。あいみょんは、実際にあった飛び降り自殺のニュースを目にして、この楽曲が出てきたのだと言う。だからか、どこかあいみょん自身が「自殺」について、どう受け止めるべきなのかを逡巡しているような歌詞でもあり、それを「良い」とも「悪い」とも結論付けない歌詞には、あいみょんの「正義」ではなく「誠実」が現れている。


④ 愛を伝えたいだとか

《健康的な朝だな/こんな時に君の“愛してる”が聞きたいや》


確かこの楽曲は、冒頭の《健康的な朝だな》という言葉がまず浮かんで、そこから作り込んでいったという話をリリース当時に聞いた。「健康的な朝」という言葉だけで、この歌詞の主人公である男子(男性)が見ているであろうカーテン越しのまぶしい陽の光だとか、「健康的」であることに物足りなさを感じていることだとか、様々な想像をかきたてるのが見事。聴き手のイメージや妄想の余地を残す作詞はあいみょんの真骨頂で、2ndシングルにして、早くもその才能が炸裂している。


⑤ 君はロックを聴かない

《君はロックなんか聴かないと思いながら/少しでも僕に近づいてほしくて/ロックなんか聴かないと思うけれども/僕はこんな歌であんな歌で/恋を乗り越えてきた》


大好きな人に自分をわかってほしいと思うその気持ちを、自分が愛してきた歌を「君」にも聴いてほしいと表現する。あいみょんというソングライターは、イマジネーションを駆使してラブソングを描く、実はどちらかというと作家気質の作詞家でもあるのだが、そこにはやはり「あいみょん自身」の感情や経験も滲んでいるように思う。実際あいみょんのことを知るためには、彼女が触れてきた音楽について知りたくなるし、1stフルアルバム『青春のエキサイトメント』に収録された“憧れてきたんだ”なども同様で、影響を受けた人や背中をおしてくれた歌があって、今の「自分」がある──ということを、あいみょん自身が誇らしく思っているからこその歌詞なのだと思う。


⑥ 漂白

《どうしようもなく心が汚れた日は/あの日を思い出して洗い流す/心を優しい泡で洗い流す》


過去を消し去りたいから思い出を洗い流すのではなく、あの日の思い出があるから汚れた心を洗い流すことができるという、なんともあいみょんらしい思考が、ここに隠されている。誰かを傷つけたことも、誰かに恋したことも、その瞬間のピュアな思いを忘れずにいることで、何度でも自分の心は「漂白」されるのだ。映画『恋愛奇譚集』の主題歌として書き下ろした作品でありながら、あいみょんの生活とか人生とか恋愛に向き合う時の考え方が自ずと出ているような気がする楽曲である。


⑦ 満月の夜なら

《君のアイスクリームが溶けた/口の中でほんのりほどけた/甘い 甘い 甘い ぬるくなったバニラ》


あいみょんの、官能的な比喩表現の巧みさはこの楽曲に限ったことではないけれど、その卓越した言葉選びのセンスはこの楽曲で露わになったと思う。男性目線での表現でありながら生々しくなりすぎず、でも恋人との甘い時間をフィジカルに感じさせてくれる歌詞は、さすがの一言。官能小説を読んで、その表現を参考にすることもあると公言しているあいみょんだが、おそらくそれ以上に洗練された言葉を模索することに余念はないはずで、インスタントな快楽としての官能ではなく、深く純粋なラブソングとして心に響く歌詞が完成している。


⑧ マリーゴールド

《麦わらの帽子の君が/揺れたマリーゴールドに似てる/あれは空がまだ青い夏のこと/懐かしいと笑えたあの日の恋》


昨年、あいみょんの大躍進を裏付けた5thシングル。麦わら帽子の素朴さを、マリーゴールドの花に喩えたのも秀逸だし、夏の追憶を呼び起こす切ないメロディも素晴らしい。この楽曲で描かれているのが「今まさに恋に落ちている二人」なのか「もうすでに別れてしまった二人」なのか、あるいは「かつての純粋な恋心を懐かしんでいる二人」なのか、どうとでも捉えられる余白がありつつ、そこにはやはり「終わり」がなんとなく滲んでいて、だからこそ普遍的にどんな世代のどんな属性の人にも、その「切なさ」が共有されたのだと思う。完璧なサマーソング。


⑨ GOOD NIGHT BABY

《さよならの後に/会いたくなるように/キスは我慢しておこう》


愛し合うふたりがおやすみを言って別れる時の愛しさと、でもそれを一人になってまた噛みしめる喜び、その純粋な思いが表現されたラブソング。キスをして気が済んでしまえば、そこで思いが薄くなってしまうような気がして、だからまた次に会う日のためにとっておく。大人の駆け引きでもなく、子供っぽい独りよがりでもなく、その間にある名づけがたい感情を歌にするのが、あいみょんはとても得意だ。確かに別れ際って、相手との関係性がとてもよくわかる瞬間でもあるし、自分の気持ちに改めて気づく瞬間でもある。そこに着眼するのも、やはりあいみょんならでは。


⑩ ひかりもの

《心は優しくなれたかな/身体は柔らかく温まって/はじめよう 新しい何かを今/つまらない事ではもう/泣かないぞ》

2018年の自分のことを「ひかりもの」と自称したあいみょん。「今しか光ってないもの」という意味で、23歳の自分を表現した言葉だ。そしてこの曲は、あいみょん自身に深く傷つく出来事があり、「もう悲しくて悲しくて曲を作った」ものだという。珍しく、自身の感情を楽曲に昇華するという作業をしようと思ったのは、あいみょんにとって2018年という年があまりにも濃く、忙しなかったからだとも思う。自分自身をなくしてしまいそうな時にも、あいみょんには「歌」があって、そこでまた優しくなれるし、また新しいことを始めようとポジティブにもなれる。改めてシンガーソングライターとして生きる自分を見つめ直すかのような、最新アルバムの中でもとても重要な楽曲だと思う。
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