ロックとプロテストの精神が結集――暴力に講義するアーティストたち

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2月のグラミー賞授賞式ではバッド・バニーがスピーチでこう語り大喝采を浴びた。「ICEは出て行け。俺たちは野蛮人じゃない。動物でもない。エイリアンでもない。俺たちは人間だ。そしてアメリカ人だ」。ビリー・アイリッシュも「盗まれた土地に“違法”な人なんていない。ICEなんてファック」と発言。式典は、反ICEムードに包まれた。

違法移民の取り締まりを名目に各地へ派遣されたICE(米移民税関捜査局)だが、ミネソタ州ミネアポリスでは、平和的に抗議していた市民アレックス・プレティや、息子を送った帰りの車中にいた母レネー・グッドが射殺されるなど、衝撃的な事件が続いた。5歳の子どもが拘束される映像も拡散し、全米に抗議の波が広がった。

その状況に呼応するように、ブルース・スプリングスティーンも“Streets Of Minneapolis”を緊急発表。「ミネアポリスで起きている国家的暴力への応答だ。人々と、無実の移民の隣人たち、アレックス・プレティとレネー・グッドに捧げる。自由であれ」と記した。ボブ・ディランの“廃墟の街”を思わせるプロテストフォーク調で、瞬く間に反抗のアンセムとなり、2日でキャリア初の全米デジタルセールス1位を記録した。

さらに、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロが「ミネソタを守るための団結と反抗のコンサート!」を開催。現地映像を見る限りでは、92年発表の“Killing in The Name”では、ミネアポリスの状況と重なるような《死んだ者たちは正当化される/バッジをつけているからだ》という一節が観客によって大合唱され、会場には強い連帯の空気が満ちていた。スプリングスティーンもサプライズ登場し、“Streets Of Minneapolis”をソロで披露、ジョン・レノンの“Power To The People”などを共演。ロックとプロテストの精神が結集する瞬間となった。

モレロは常に「革命は一人のヒーローではなく、市民一人ひとりが起こすもの」と語ってきたが、このムーブメントの主役がミネアポリス市民であったことが希望だ。2月12日、米政府はミネソタでの大規模な移民取り締まり作戦の縮小を発表し、大統領もこれに同意したと明らかにした。(中村明美)



本記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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