ボーズ・オブ・カナダ(以下BOC)が長年の沈黙を破り、ついにニューアルバムをリリースした。前作『トゥモローズ・ハーヴェスト』以来、13年ぶりとなる待望のフルアルバムだ。スコットランド出身のマイケル・サンディソンとマーカス・イオン兄弟によるエレクトロデュオBOCは、インタビューはおろかアー写やライブ活動もごくわずかという極めて匿名性が高いアーティストとして知られているが、翻って、コアな音楽フリークの間ではカルト的人気を誇り、名門ワープのレーベルメイトであるエイフェックス・ツインやオウテカと並びIDMシーンの重要アーティストとして存在を確立してきた。
事の発端は今年4月に入ってからだ。BOCから謎のVHSテープが一部のファンに郵送される、ロンドン、ニューヨーク、カリフォルニア、東京など世界各地に彼らの新たなアートワークが出現するなど、さも怪しげな動きを見せていたが、ついに “Tape 05”と題された新しい音源がYouTubeチャンネルにアップされ、新作到来を確信させる動きにリスナーの期待は一気に加熱していった。
そして5月29日、満を持してリリースされた5枚目のスタジオアルバムが、『インフェルノ』だ。この「地獄」のタイトルを冠した全18曲にもおよぶ大作で、BOCは新たな地平を開拓している。もちろん今作でも彼らのサウンドの最大の魅力である美しく郷愁を感じさせる質感は保ってはいるものの、とにかくいつもに増して不穏なのだ。
サンスクリット語で地獄を意味する“ナラカ”は体を芯から震わすようなベースやアシッド調のシンセ、聴き慣れない民族的な歌声とビートが多重に重なり合う。さながらナイン・インチ・ネイルズを彷彿とさせるような暗く重いグルーヴだ。“ザ・ワード・ビカムズ・フレッシュ“は不気味に処理されたサンプリング音声とリズムがディストピア映画のサウンドトラックを思わせる。
そして、多くの曲名からも明白なように今作でBOCが描いているテーマはかつてとは異なり、迫りくる世界情勢不安や残酷なリアリティに肉薄しているようだ。13年という長い時間の間に彼らは何を眼差してきたのか? その音を必ず確かめてほしい。(土屋聡子)
ボーズ・オブ・カナダの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
Instagramはじめました!フォロー&いいね、お待ちしております。