『恋に落ちた女の子にしては、なんだかずいぶん悲しそうだね』(原題:you seem pretty sad for a girl so in love)と題されたオリヴィア・ロドリゴのサードアルバムがリリースされた。まず目を惹くのは『サワー』『ガッツ』という過去2作とは明らかに異なるタイトルの語感。これはプロデューサー=ダン・ニグロとオリヴィアが人生について語り合っていたときに、ニグロから出てきた言葉なのだそうだ。今作が描き出すのは、まさにそんな、ハッピーなだけでもサッドなだけでもない恋愛をめぐる心の動きである。アルバムは大きく2部に分かれている。1曲目の“ドロップ・デッド”から7曲目の“パープル”までは「girl so in love」のパート。《The most alive I’ve ever been》(今まででいちばん生きている感じがする)という恋の始まりをキュートなサウンドとともに歌う“ドロップ・デッド”や最高潮にハッピーなヴァイブスを振りまく“u + me = <3”など、恋をしてどんどん高まっていく姿が描かれる。だが、アルバムはここでは終わらない。8曲目“ザ・キュアー”から始まる後半パート「you seem pretty sad」では、順調に見えた関係が壊れ、自己嫌悪に陥っていく心の動きが生々しく綴られるのだ。一方通行の愛の苦しみを歌う“ベグド”や、ロバート・スミスとのデュエットで自分自身を責める言葉を歌う“ホワッツ・ロング・ウィズ・ミー”。内省が深まれば深まるほどサウンドが優しく、穏やかなものになっていくのがなんとも切ない。最後、“エクスペクテーションズ”と“シガレット・スモーク”という2曲で彼女は過去と訣別して前に歩み出していく。そこまで描き切ることで、このアルバムはひとつの恋愛体験を総括し、乗り越えるセラピーとして完成した。今作が昨年末に破局が明らかになった俳優ルイス・パートリッジとの関係を描いていることは間違いないが、その感情の波を勢い任せに書きつけるのではなく、ひとつのストーリーとして再構築してパッケージしてみせたところに、オリヴィアのアーティストとしての成熟ぶりが表れている。(小川智宏)
オリヴィア・ロドリゴの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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