──“ブレインロット”が依然として数字を伸ばし続けています。ある種の成功体験というか、思惑通りにハマったという感触もあると思うんですが、どうですか?そうですね。歌メロだったりコード進行、声質、サウンドといろんなところに「どこかで引っかかれ!」という要素、聴いてくれた人や観てくれた人が「発見」できる要素は各所にちりばめているから、一度火がついたら燃え広がるように「ここもいいじゃん、ここもいいじゃん」っていうふうになっていくと思っていました。あとは、今流行っているものや1ヶ月前に流行っていたものを追うのだともう遅いから、海外のトレンドや過去の事例──海外のトレンドって早くて2、3年遅れで日本に来ると思うので、そういった事例も参考にしつつ、じゃあこれを今やる意味ってなんだろう?とか、今やるならこういうアレンジのほうが面白くなりそうっていう、研究と発明を常に意識してるんです。“ブレインロット”はそれがうまくハマったのかなって。──まさに。研究して仮説を立てたものを検証するのがリリース後という感じですね。うまくいかなかったなら、何がよくなかったのか、上っ面しか研究できてなかったんじゃないか、人の心を動かす本質はもっと奥にあったんじゃないか、とか。まだまだ研究しがいがあると思いますね。令和のJ-POPってこうでもいいんじゃない?みたいなところはもっと東京真中として語りたい
──今のお話にも通じると思うんですが、直近の2作を聴いて感じるのは、まだ日本では主流になっていないけど主流になり得るものというか、海外への意識の向き方なんですよ。もともと海外の音楽が好きなので。J-POPを広げるというか、令和のJ-POPってこうでもいいんじゃない?みたいなところはもっと東京真中として語りたいし、そういった時に自分のルーツは強みになりますよね。J-POPや歌謡曲から影響を受けて、それしか聴いてこなかった人には新しいJ-POPはたぶん作れないだろうし。──聴いてきた音楽の要素を落とし込むことで、「こういうのもよくないっすか?」っていうリスナーへの提案のメッセージになっていると思います。ああ、そうかもしれないです。やっぱり“ドゥーマー”、“ブレインロット”の方向性が東京真中なんだという見られ方をしたので、そこへ向けてあえて振ってる気はしますね。“ポッペンキュート”に関しては2年前に作った曲なので、まだ拙いなと思う部分はあるんですけど、それをどう心機一転させようかと思った時に韓国のボカロP/音楽プロデューサーであるTAKさんにアレンジをお願いして。──アレンジを自分の手から離すことに抵抗のあるクリエイターも多いですけど、作品としてよくするためならそれも辞さないという柔軟さは強みだと思います。優先順位としていちばん高いのは、聴いてくれた人の心が動くかどうかなので、そのためだったら他はあんまり関係ないかも。そこだけこだわっていれば、どこかしらに東京真中らしさは反映されるんじゃないかと思うので、仮に作詞や作曲が誰か他の人だとしてもいいし。
──最新曲の“フォーモ”に関しては、どういう取っ掛かりだったんですか?リリースの計画を立てるうえで、ここら辺で何か一発あったほうがいいよね、しかも超キャッチーなものを、みたいな話がチーム全体であって。だったら書きましょうか?って軽いノリで書いたのが最初だった気はします。方向性として考えたのは“ドゥーマー”、“ブレインロット”を聴いて好きになってくれた人の期待は裏切らないように、でもその2曲とは違った何かの仕掛けによって予想を裏切りたいということですね。あとは“ドゥーマー”、“ブレインロット”はかっこいい曲ではあるんですけどニッチというか、じゃあこれでYOASOBI、ヨルシカ、ずとまよ(ずっと真夜中でいいのに。)とかと戦えるか?っていうと、自分の中で「うーん、まだだな」と思ったんですよね。──なるほど。彼らと戦えるくらいのキャッチーさも、ちゃんとないとなと思って書いたので、私の中で“フォーモ”はだいぶキャッチー寄りの曲ではあります。クセのあるパートはあるんですけど。“ドゥーマー”、“ブレインロット”を聴いて好きになってくれた人の期待は裏切らないように、でもその2曲とは違った何かの仕掛けによって予想を裏切りたい
──自覚しているニッチな部分って、ある種のナードっぽさみたいなことですか?そうです。でも、そのナードさは決して悪いことじゃなくて、アーティスト活動におけるフェーズの問題だと思っていて。知名度がなくてまだファンが少ない時は、キャッチーなだけだと埋もれちゃうからどこかしら尖らないといけないけど、少しずつ東京真中を知ってくれる人が増えてきたタイミングでキャッチーさも増すことで、もう少し範囲を広げたいという試みではありますね。──キャッチーさの解釈もいろいろありますが、“フォーモ”の特徴はまず、とても軽やかにさらっと聴き切れる部分だと思うんですよ。それが過去曲との印象の違いにもなっていて。確かに、軽やかさみたいなものは増してますね。⋯⋯“ポッペンキュート”までは自分でミックスとマスタリングまでしてたので、密度勝負で音圧も高めにしないと市場で戦えないなという意識があったんです。だけど、“フォーモ”からはちゃんとエンジニアの方に依頼して、そこで「自分はこういう海外の音が好きで、J-POPに取り入れたくて」ということを結構話したので、そこが軽やかさに繋がってるのかもしれないです。インパクトのある曲とリピートしたくなる曲って必ずしも一致しないですけど、今回はリピートしてもらいたいなという意識が強かったというか。──サウンドのジャンル感やディテールはどのように固めていったんですか?ざっくり言うとフレンチハウス、K-POP、ちょっと変わったUKガラージの3つかな。それをJ-POPにしよう、みたいな。スネアの音をかなり太く作っているのはフレンチハウスっぽい感じだし、軽やかさで言ったらUKガラージだし、K-POPっぽい部分は展開やサビ終わりにテーマがある部分だったり。そういうのをごった煮にして再構築した感じですね。──そこにストリングスの入る感じや跳ね感も効いていて。フレーズもあまり長くなくて切ったりしてますもんね。ニューディスコっていうジャンルが結構好きなので、軽やかさはそこから来てるかもしれないですね。