映画『ビリー・アイリッシュ - HIT ME HARD AND SOFT : THE TOUR(LIVE IN 3D)』――24歳の真っ直ぐな意志と舞台裏を観た

映画『ビリー・アイリッシュ - HIT ME HARD AND SOFT : THE TOUR(LIVE IN 3D)』――24歳の真っ直ぐな意志と舞台裏を観た

ビリー・アイリッシュが、自らを見つめ直した最新作を携え、兄のフィニアス不在で挑んだ最新ツアー。映画『ビリー・アイリッシュ - HIT ME HARD AND SOFT : THE TOUR(LIVE IN 3D)』はその熱狂と裏側を巨匠ジェームズ・キャメロンと共に3D映画として捉えた、ポップアイコンの現在地の記録だった。このツアーには豪華なセットや衣装替えもなく、バックダンサーもいない。あるのは削ぎ落とされたミニマルな空間だ。そこに、自身の楽曲に結びつく色やサウンドの感覚を表現するよう徹底したという。そのステージを捉えた、ビリー本人が手にする小型カメラなど最大20台のカメラがもたらす映像は、客席からステージを見ているような臨場感にとどまらない。最前列を飛び越え、ビリーと同じステージを駆け回るような擬似体験を可能にしている。すぐ目の前で響く、一段と美しさと力強さを増したビリーのボーカルも驚くほど鮮明だ。なかでも本作で特に印象に残ったのはビリーのボーカルをメインに据えながら、同時にしっかりと残されていたファンの声。一言一句、コーラスやコール&レスポンスまで大音量でシングアロングする歌声がそのまま存在していた。それは、単にアイコンを崇める熱狂ではない。ビリーは同年代の代弁者であり、ファンはそれぞれの傷や内に秘めた感情を、彼女の歌の中に見出している。そして本人もそれを自覚し、真っ向から受け止めているように見えた。ビリーが表現したいツアーの姿とファンの熱量が、ジェームズ・キャメロンの技術によって立体的にキャプチャーされていた。さらに映画内では、ステージの裏側やインタビューも描かれている。会場中心にある360°ステージや移動の仕掛け、クルー向けに設置された各地の保護犬と戯れることができるパピールーム、開演前にセルフでヘアメイクをするリアルな舞台裏。そして、「自分がファンになりたくなるアーティストになりたい」と語るビリーの言葉。24歳のビリーが持つアーティストとしての意志と、その真っ直ぐな姿が、この映画には確かに刻まれていた。(石原有紗)

ビリー・アイリッシュの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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