【10リスト】スピッツ、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!

1987年のバンド結成から今年で30年。日本のロック/ポップミュージックの至宝と呼ぶべき名曲を数多く発表しながらも、時代の趨勢に歩みを乱されることもなく、メンバーチェンジや活動休止もなく、確かな足跡を僕らの心と記憶に残してきたスピッツ。それこそキャリアのどこを無作為に抽出しても「一生聴き続けられる名曲10」のリストが完成することと思うが、結成30周年記念のシングルコレクションアルバム『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』発売を機に、スピッツのポップマジックをひときわ明快に伝えてくれる重要曲について、改めて触れていきたい。(高橋智樹)



①ヒバリのこころ

(1stアルバム『スピッツ』/1991年)
今より格段にファニーな当時23歳の草野マサムネの歌と、「ビートパンクその後」を感じさせる腕白な疾走感あふれるアンサンブルとのコントラストが、あたかもローバーミニのキュートな躯体にフェラーリのエンジンを積んだかのようなスリリングなバランス感を描き出している。言わずと知れたデビューシングル表題曲であり、インディーズ時代からのレパートリーでもあった楽曲(歌詞は一部変更されている)。ネオアコにもパンクにもギタポにも割り切れないこの音風景はしかし、後に唯一無二のポップの磁場を生み出す重要な出発点である。

②空も飛べるはず

(5thアルバム『空の飛び方』/1994年)
当時ロックバンドという言葉から誰もがイメージしたはずのラフで無軌道な爆発力を一掃した、真っ白なキャンバスに丹念に音を配していくような方法論――同時に今や僕らが「スピッツの音楽」と聞いて真っ先に想起する音像を確立したのは、シングル前作“君が思い出になる前に”とこの“空も飛べるはず”だろう。《幼い微熱》と《神様の影》のフェティッシュな対比越しに日常をファンタジーへと編み上げるこの曲は、マサムネのハイトーンヴォイスを「ロックっぽくない声」ではなく「最高の個性」として再認識させる福音でもあった。

③青い車

(5thアルバム『空の飛び方』/1994年)
《君の青い車で海へ行こう》と涼やかに始まるサビを《そして輪廻の果てへ飛び下りよう/終わりなき夢に落ちて行こう》と続ける人も、抑え難いセンチメントを《冷えた僕の手が君の首すじに/咬みついてはじけた朝》と綴る人も、マサムネ以外にはまずいないだろう。衝動のうねりを田村明浩のベースラインに託し、﨑山龍男のドラムを極限までタイトに、三輪テツヤのギターをパステルカラーの響きへ磨き上げた音世界で、マサムネの歌が天高く飛翔する――。4人の緻密で複雑な個性が、どこまでも滑らかなポップの質感を作り上げている。

④ロビンソン

(6thアルバム『ハチミツ』/1995年)
現時点でのスピッツ最大のヒット曲であるこの曲を、マサムネ自身は「地味な曲」と感じていた――という話は有名だが、それは取りも直さず、世間的に見れば「魔法」そのものだったスピッツのポップの方法論が、マサムネの中ではすでにデフォルトのものとして認識されていたことを物語っている。そして、彼らの「魔法」の在り処に日本中が気づいたことにより、アルバム『ハチミツ』はミリオン超えセールスを記録、さらにドラマ『白線流し』主題歌に“空も飛べるはず”が起用……といった具合に、文字通りバンドの運命を激変させた1曲。

⑤チェリー

(7thアルバム『インディゴ地平線』/1996年)
冒頭から《君を忘れない》と離別の曲であることを宣言しつつ、弾むビートとカラフルに咲き乱れるメロディで聴く者を包み込み、《"愛してる"の響きだけで 強くなれる気がしたよ》とサビで歌い上げる頃には心も身体も多幸感そのものの色彩で埋め尽くされているという、ファンタジック・サイド・オブ・スピッツの代表曲と言うべきナンバー。自身初のシングルチャート首位曲“空も飛べるはず”は発売後2年近く経ったリヴァイヴァルヒット的な1位だったが、この曲は発売4週で1位獲得。まさにスピッツに時代が追いついた決定的瞬間だった。

⑥渚

(7thアルバム『インディゴ地平線』/1996年)
一昨年、リリースから20年近い時を経て“渚”がCM曲としてテレビから流れてきた時に、「色褪せない」どころかますます鮮やかさを増して響くその歌とサウンドには驚きと感激を禁じ得なかった。実験精神あふれるリズムパターンと、陸海空が混じり合うような雄大な風景を併せ持ったこの曲が、前述の“チェリー”と立て続けに1位を獲得(しかも“渚”は初週1位)しただけでなく、まるで色合いの異なるその2曲のどちらもが『インディゴ地平線』という青くざらついたアルバムの質感の一部を成している。これがポップマジックでなくて何だ。

⑦メモリーズ

(22ndシングル『メモリーズ/放浪カモメはどこまでも』/2000年)
当初のルーツ=ビートパンクとはまるで異なる「オルタナ〜グランジ版スピッツ」とでも呼ぶべきアグレッシヴな楽曲を畳み掛けていた『ハヤブサ』期の象徴的な1曲。あのマサムネの声を惜しげもなく歪ませたところへ、ディストーションと爆裂リズムを重ねてロックの彼方へ撃ち放つ――『ハチミツ』、『インディゴ地平線』、『フェイクファー』で構築された世の中の「スピッツ像」も痛快に裏切る、言わばスピッツの「野生の証明」。なお『ハヤブサ』には当時のプロデューサー=石田小吉による大サビを加えた“メモリーズ・カスタム”が収録。

⑧春の歌

(11thアルバム『スーベニア』/2005年)
『CYCLE HIT 1991-2017〜』にも収録されるシングル曲だが、もともとアルバム『スーベニア』用の曲として制作→後に「アクエリアス」タイアップ決定→シングルカット、という経緯から考えると、この曲のメロディの伸びやかな全能感は『スーベニア』の、沖縄からレゲエまで幅広く体現した音楽的な開放感によって醸成されたと推測できる。《歩いていくよ サルのままで孤り/幻じゃなく 歩いていく》、《春の歌 愛も希望もつくりはじめる/遮るな 何処までも続くこの道を》の歌声から浮かび上がる決然とした冒険精神に、ただただ胸が熱くなる。

⑨魔法のコトバ

(12thアルバム『さざなみCD』/2007年)
実写映画版『ハチミツとクローバー』の書き下ろし主題歌。それまで曲ごとに個別に存在していた「ポップでファンタジックな世界」と「センチメントの揺らぎ」の垣根がこの頃から目に見えて無効化され、その詞世界だけでなく音楽面でも、光と影がひとつの曲により濃密に混在するようになった。陽だまりのような音像と《魔法のコトバ 二人だけにはわかる》とマサムネのメロディが伸び上がる一瞬で狂おしい切なさと人恋しい寂しさを掻き立てるこの曲は、感情をダイレクトにまさぐる「魔法」の妖力が格段に高まったことを証明している。

⑩みなと

(15thアルバム『醒めない』/2016年)
僕と同様に、スピッツの長いキャリアの中でこの“みなと”が一番好きだという人は決して少なくないと思う。最小限の音色で港と「その先」の風景を壮大に活写するサウンドスケープ。《汚れてる野良猫にも いつしか優しくなるユニバース》と聴き手を正しく「個」へ解きほぐし抱き締める言葉のセンス。そして、《君ともう一度会うために作った歌さ》と「歌うたい」の立場から掲げられるマサムネの歌――脳内で反芻するだけで涙が零れそうなあの旋律が、あと一歩、少しでも前に進みたいと願い日常を生きる僕らの背中をそっと押してくれる。



【シングルコレクションより】スピッツの新曲、もう聴きましたか? その①1987→
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