【10リスト】私たちの心を揺らした東京スカパラダイスオーケストラの名歌詞10

【10リスト】私たちの心を揺らした東京スカパラダイスオーケストラの名歌詞10
デビュー30周年を数えるディスコグラフィーが、ここまで豪華な共演者のラインナップと眩しい色彩感に溢れたバンドがあるだろうか。そして、現在に至るまでにかくも多くの別れと転機に遭遇したバンドが他にあるだろうか。スカを基調としたインストバンドから、至上のメロディと歌で時代を彩る高揚の使者へと劇的な進化を遂げ、さらにその可能性をアップデートしつつある東京スカパラダイスオーケストラ。ここではスカパラの「歌モノ」に焦点を合わせて、その「闘うように楽しむ」音楽世界に脈打つロマンと躍動感を読み解いていきたい。(高橋智樹)


①愛があるかい?

《君のまわりの世界には/どれくらい I never 愛があるかい?/暗闇に愛はカギさ 君の扉を開いて》
今ではパートの垣根を超えてほとんどのメンバーがボーカルを担当、という独自のスタイルを確立したスカパラ。そのバンド史においても珍しい「ボーカル専任」メンバー=杉村ルイ(クリーンヘッド・ギムラの実弟)が在籍した唯一のアルバム『ARKESTRA』(1998年)収録のシングル曲。大きな愛で世界丸ごとユートピアに塗り替えるような目映いフレーズは、トリビュート盤『楽園十三景』でUNISON SQUARE GARDENによってカバーされている。

②美しく燃える森

《帰ろうとせずに はなそうとしない/終わり待つ夜と この美しい森》
“めくれたオレンジ”(w/田島貴男)、“カナリヤ鳴く空”(w/チバユウスケ)に続く「歌モノシングル3部作」の3作目として奥田民生を迎えた“美しく燃える森”。スカとポップの森の奥深くへ導かれるような、それでいて高揚の階段を一歩また一歩と登るような豊潤な詞世界が、奥田民生の声と妖しく美しく響き合う――。ロマンとダンディズムに裏打ちされた谷中敦(Baritone sax)の筆致が、後のスカパラの表現に新たなエネルギーを吹き込んでいくことになる。

③銀河と迷路

《磨かれた朝に夢を見た冷たさが 残り/想いあふれていた/駆け巡る街で流れつく恋を待つ 二人/相手探し求め》
「歌モノシングル3部作」に続くシングル、しかもスカパラ初のドラマ主題歌のボーカルを務めたのは、ドラマー=茂木欣一。1999年の青木達之の急逝後、サポートを経て正式加入した茂木は同時に、「作詞家・谷中敦」のロマンと響き合う絶好のボーカリストでもあった。トーキョー・スカの多幸感あふれるサウンドと、シティポップ的な世界観のラブソングが高次元で融合、スカパラの新たな扉を開いたポップアンセム。

④追憶のライラック

《何度も/言い出して辞めた言葉の欠片を/集めて繋げる物語/自由に愛した記憶があるから/終わらない未来》
「歌モノシングル3部作その2」の第一弾として、ハナレグミこと永積タカシをフィーチャーした“追憶のライラック”。「僕」と「君」の間のもどかしくも狂おしく切実な愛の風景を活写した谷中の言葉はそのまま、歌詞という言葉を通して物語と未来を紡ぐことの難しさと大切さを、鮮烈なリアリティをもって伝えるものだ。なお、「歌モノシングル3部作その2」はその後“サファイアの星”(w/Chara)、“星降る夜に”(w/甲本ヒロト)と続いていく。

⑤閃光 feat.10-FEET

《ただ感謝ばかりを/口にするだけで/感動もない日々に/勝負もせず人まかせで/閉じこもってた/語り尽くされた/夢のない未来/塗り替えて生きていくんだろう/いつか》
「25周年スペシャルプロジェクト バンドコラボ」の第一弾となるこの曲の歌詞は、10-FEET・TAKUMAと谷中の共作によるもの。己の弱さと真っ向から対峙するTAKUMAのシビアなモードと、苦境にも揺るがない谷中のポジティビティが共鳴し合い、聴く者のメランコリアを鮮やかに位相変換するマジックを生み出している。《毎日が戻れない旅だから woh woh/響きあう魂といつまでも》と強靭なタフネス越しに未来を指し示すラストも最高。

⑥道なき道、反骨の。

《俺たちの時代も未来は/見えなかった/夢一つあとは何一つ/望まない》
インディーズパンク街道を邁進してきた横山健と、苦闘の果てに唯一無二のトーキョー・スカ・ワールドを築き上げたスカパラ。文字通り「道なき道」を歩んできたもの同士のコラボは《恨まずに終わりにしようか/嫌な夢》のフレーズで幕を開け、《俺たちの時代も未来は/見えなかった》と先の見えない混沌の時代を渾身のメロディと歌で照らし出す。《走れ一人で泣くときも/涙は後ろ、体は前へ》の歌が、さらなる魂の加速度を描き出している。

⑦ちえのわ feat.峯田和伸

《くっついたままで いちゃついて/バカでいたい×2 もっとバカをしたい/めんどくさいのが愛だろっ?/離れたくないんだ》
銀杏BOYZ・峯田和伸へのありったけのリスペクトのようでもあり、峯田という稀代の情熱炸裂表現者を通して自らのエモーションを全開放しようとする谷中とスカパラの新たなトライアルのようでもある“ちえのわ”。《壊したいくらい いらついて/投げ出したいときもあるよ/ふたり繋がれた知恵の輪/ばらばらにしたくない》とスリリングに爆走する真摯な愛情と、ラストを飾る上記のフレーズの無防備な言葉が、聴く者の心をハダカにする1曲。

⑧メモリー・バンド

《ずっと一緒にいられなくなっても/いつまでも 忘れやしない/ぼくら人生のステージの上には/いつだって全員で並んでいる》
渋谷すばる脱退直前の7人での関ジャニ∞とテレビ朝日『関ジャム 完全燃SHOW』で最後の生セッションを展開したのはスカパラだった。そして、谷中はこの“メモリー・バンド”の歌詞を、渋谷のことを思い浮かべて書いたという。《ことばで ただ 慰めるより/眼を 見て 分かりあえるのさ/別な 道を 歩くときでも/もし それが さよならでも》――キャリアも背景も異なれど、苦しい別れを繰り返しながらさらに「その先」を目指す者の覚悟の結晶。

⑨明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次

《夢も愛も絶望も呑み込んでいく運命の炎/それがオマエという時限装置なんだろ?/他の誰なんだ?》
《人生は美しいアルバムじゃない/撮れなかった写真さ》――デビュー当時はEPICソニー(当時)のレーベルメイトでもあり、ともに長い年月を経てなお自らの黄金期を更新し続けている宮本浩次という存在へのあふれんばかりのオマージュが、そんな冒頭のフレーズのみならず全編に焼き込まれた“明日以外すべて燃やせ”。《オマエという時限装置》のリリックを歌い上げる宮本の気迫の歌を抱きしめるように、スカパラの音像がひときわ優しく響く。

⑩リボン feat.桜井和寿(Mr.Children)

《しあわせよ、こんにちは。そばにいて/会えない間も 手は繋いでた/たまには嘘もついてたね/元気です!と》
ジャンルもスタイルも超えた融通無碍な包容力を獲得したスカパラの音楽世界が、ついには日本屈指のロックアイコン=Mr.Children桜井和寿と共鳴し合うに至ったのは、まさに必然と言えるだろう。《祈るように待つのはもうやめた/哀しみはデタラメに塗り潰せ》という言葉のリボンで、来るべき新世代への超弩級のエールを贈った谷中。上記の《たまには嘘もついてたね/元気です!と》のフレーズは、逆境にあっても決して希望を捨てずに「闘うように楽しむ」ことで道を切り開いてきたスカパラ・マインドの証そのものだ。
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