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「どうして好きになってしまったのだろう」と考えるのは、それだけ心が傷ついたから。傷つけられたからもうどうでもいいと、割り切れたらあとを引かなくて済むのだろうけど、理由によってはそんな簡単に切り替えられないし、思い出がきれいであればあるほど縋りたくなってしまう。この歌は「もし出会わなければ」という単純な仮定の話をするものではまったくない。共に過ごした日々は肯定しながら、痛みと惨めさを抱いている。誰に何に苛立ちをぶつけたらいいのかわからないまま、不穏な転調も相まって最後まで曲を聴いても救われない。大森元貴(Vo・G)の歌唱も緊迫感があり、感情をなんとか抑えつけようとするけど溢れてしまうギリギリのラインをずっと攻めている。悲しみの淵にいるのに、大きな愛を感じさせる。愛と絶望のどちらも極限まで振り切った形で表現しているから、このアンビバレントさがどうしようもないほどに伝わってきて、1本の長編小説を読んだあとのような余韻を残す、壮大な5分22秒だ。(有本早季)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年7月号より)
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