【10リスト】Ado、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!

【10リスト】Ado、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!
歌い手としてネット上で注目を集め、“うっせぇわ”でのメジャーデビュー以降は小中学生から大人まで巻き込んで熱狂させる時代を代表するシンガーとなったAdo。彼女の変幻自在なボーカルと、曲を出すごとに進化していくような底知れなさから生み出されるインパクトは、デビューから時を経てなお失われないどころか、ますます強まっている。そんなAdoの強力な楽曲群の中から、ずっと聴き続けたいマスターピースを10曲セレクト。多彩さの裏にどこまでも人間らしい感情が宿る彼女の歌に、改めて衝撃を受けてほしい。(小川智宏)


①うっせぇわ

ご存じ、Adoの名前を歌い手界隈から外に引き摺り出し世に知らしめたメジャーデビュー曲。作詞作曲はボカロPのsyudouだ。YouTubeにアップされたミュージックビデオは圧倒的な勢いで再生され、「歌ってみた」系の動画も大量発生し、文字通りの社会現象として広まっていった。社会から押し付けられる価値観やマナーに真っ向から反抗する歌詞、ビートとギターリフで相手をタコ殴りにするようなサウンド。syudouにこの曲を書かせたのは間違いなく怒りのエネルギーだが、その自暴自棄寸前の熱に意味を与えているのはAdoの曲そのものと一体化するような凄みだ。だって、みんな忘れているがこの曲を歌った時のAdoはまだ高校生。社会人のマナーなんて知ったこっちゃなかったはずなのである。

②レディメイド

2020年のクリスマスイブにドロップされた、“うっせぇわ”に続くセカンドシングル。のちにファーストアルバム『狂言』の1曲目となったことからもわかる通り、その後のAdoのディスコグラフィを考えるうえでも重要なポイントとなった1曲である。というのは、この曲は“うっせぇわ”とその後の楽曲をつなぐブリッジのような役割を背負っていたと思うからだ。ジャジーで生感の強いサウンドはある意味で“うっせぇわ”と正反対、しかし《大人にだけはなりたくなんかない》という歌詞にはあの曲と通じるマインドを感じる。曲を書いたすりぃがどんな意図をもってこの曲に取り組んだのかはわからないが、結果的に見ればこのタイミングでこの曲が出てきたことが、Adoの行く末を大きく広げることになったのではないかと思う。
 

③ギラギラ

てにをは作詞作曲のサードシングル。ロックとソウルを掛け合わせたようなグルーヴィなサウンドとシリアスなコード進行、そしてイメージを次々と突きつけてくるような作詞のマナーにはてにをはの世界観が色濃く出ている。そしてその楽曲のニュアンスを汲んで、というよりも楽曲のムードに引っ張られるような形で、Adoの歌はまたしても新たな顔を見せてくる。1行目の《あーもう本当になんて素晴らしき世界》からして情感の温度設定が見事だし、転調して派手に展開するサビでの表情も豊か。そのサビから入っていく2番のAメロの声の震えにはこっちが震える。酸いも甘いも噛み分けるような歌を展開した先でラストの《ギラついてこう》に辿り着いた瞬間、ピュアネスが皮肉を追い越していくところにすっとAdoの素顔が見えるような感じがする。

④踊

「アド」の「オド」という曲名には「ダジャレかい!」とツッコみそうになったが、曲を聴くととんでもなかった。パリピ上等なレゲエのビートとブリブリに効いた低音が完全にダンスフロア仕様のサウンド。DECO*27(作詞)とGiga、TeddyLoid(作曲)という鉄壁の布陣が繰り出す本気のダンスミュージックの上で、多彩なテクニックや声色を駆使しながらリスナーを煽り倒していくAdoのボーカルが見事だ。で、やっぱりここでもこの曲を他ならぬAdoが歌うということ自体がメッセージになっている。この曲の主人公が抱えている孤独や劣等感のような感情は少なからずAdo自身にリンクする部分があっただろうし、それを逆流させることでこんなにも強力なダンスチューンになるというエネルギーの使い方は、Adoが歌い続ける理由そのものだという気がするのだ。

⑤阿修羅ちゃん

ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』第7シリーズの主題歌となった楽曲。演奏にはベースでキタニタツヤ、ドラムでゆーまお(ヒトリエ)が参加して、鳴り響くホーンセクションとともに熱いロックサウンドを展開している。Neruの書いた曲自体はどちらかといえばオーソドックスな気がするのだが、その調和をひとりでかき回して景色を変えていくAdoのボーカルが痛快である。冒頭の《ねえ、あんたわかっちゃいない》から次の《誰それがお手元の世界に夢中》〜《選ばれる為なら舌を売る》《裏切られた分だけ墓を掘る》、全部声のキャラを変えて歌っているのだ。「阿修羅」が顔を3つ、腕を6本持つ神様だからそうなっているのだろうが、そのアイデアを実現できるのは歌い手として多様な曲を歌い続けてきた彼女ならではだ。

⑥心という名の不可解

Adoが敬愛するまふまふが満を持して書き下ろした、2022年最初の配信シングルがこの“心という名の不可解”。これまでのAdoが歌ってきた曲の中でも、いちばん「Ado自身」の内面に迫った楽曲なのではないかと思う。とにかく多様な歌を歌ってきたAdoに曲を提供するということは作り手自身の「Ado論」を提示することに他ならないが、その意味でこの「まふまふによるAdo論」はかなり芯を食っている気がする。たくさんの顔を持ち、曲ごとに姿形を変えていくAdoというシンガーの真ん中にある「心」ってなんなの?と、この曲は問いかけているように読めるし、それを歌うAdoもいつになくニュートラルな佇まいで歌詞とメロディに向き合っている感じがする。もちろんサビの力感などは圧倒的だが、そのあとにふと訪れる独り言のようなタッチにこそ、僕はAdoを感じてしまう。

⑦マザーランド

大陸的な空間の広がりを感じさせる、スケールの大きなサウンドが心を弾ませるダンスポップチューン。とくにサビで一気にメロディもトラックも爆発する瞬間には鳥肌が立つほどの興奮を覚える。煮ル果実の書いたこの曲は“心という名の不可解”と同じように「Adoそのもの」をテーマに据えながら(《うっせぇわじゃ済まない現実》という歌詞も登場する)、そこに新たな役目というかあり方を付け加えていく。オリンピック中継(正確には『TBS系スポーツ2022』)のテーマソングだからというのも大きいだろうが、この曲はある種の「応援ソング」だ。《劣勢らにラブを》というフレーズが物語るように、打ちひしがれる者に対して歌われる愛の歌だ。《おいで 私がMotherlandになるよ》という1行を歌ったことで、Adoはそれまでとは違う世界との向き合い方を受け入れたのだと思う。

⑧新時代

2022年のAdoを決定づけた『ONE PIECE FILM RED』プロジェクト。映画オリジナルキャラクター「ウタ」の歌唱キャストとして歌った映画の主題歌が中田ヤスタカのこの曲だ。中田のクリエイティブとしてもかなり新鮮な、ストレートでパワフルなエレクトロロックで、空気をつん裂くようなハイトーンがまさに「新時代」の幕開けを祝うように鳴り響く。それまでのAdoの曲には常に陰の部分がつきまとっていたが、ここでの彼女はそのすべてを振り切るように飛翔している。Adoではなくウタだから生まれた曲、歌えた歌であることは確かだし、その意味ではある種のギミックなのかもしれない。だが、これがまさに世界規模で鳴り響き、Adoの新たな代名詞となったことはとても大きなことだと思う。Adoがウタの力を借りてAdoという殻を突き破ってみせた1曲だ。

⑨私は最強

こちらも『ONE PIECE FILM RED』の劇中歌としてウタが歌う曲。提供しているのはMrs. GREEN APPLEで、サウンドもメロディもミセス印満載のロックナンバーになっている。キーもバカ高いしテンポも早いし、何より大森元貴の手グセを容赦なく詰め込んだような曲なので、歌うだけでも相当難しいはずなのだが、それを歌いこなすだけでなく細やかなニュアンスまで付けて表現しきっているのはさすがとしか言いようがない。あのいちばん高い《最強》というフレーズをあれほどパワフルに響かせることができるのはAdoしかいないんじゃないかと思う。“新時代”がそうであったように、この曲も「ウタ」のキャラクターが前提になっているが、それによってまたしてもAdoの新しい引き出しがバコーンと開いている感じがある。

⑩行方知れず

映画『カラダ探し』の主題歌で2022年10月にリリースされたこの曲を書き下ろしたのはなんと椎名林檎。椎名の歌詞やサウンドとAdoの声、言われてみれば合わないわけはないのだが、初めてそれを知った時はかなり驚いた。そして楽曲はといえばやはりというべきか全力投球の林檎節である。ノイジーで分厚いギター、攻撃的なドラム、妖艶さと切れ味をどちらも全部注ぎ込んだメロディと節回し。それをAdoはどう受け止めたのかという対決感がとてもスリリングだ。でもこの曲を歌うAdoには以前のように曲に合わせてガラリとキャラを変えてそこに向き合っていくような感覚はない。『ONE PIECE』を経て懐が深くなったとでもいえばいいのか、こちらもAdoなりの直球を投げ返しているのだ。シンガーとして腹が据わっているというか、一歩も逃げない感じがとても頼もしい。


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