【10リスト】フジファブリック、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!

【10リスト】フジファブリック、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!
喜怒哀楽では割り切れない感情のねじれも揺らぎもそのまま弾むようなポップナンバーへと昇華してみせるマジカルな色彩感。ダンサブルなポップの眩しさからプログレ的な音のスリルやスペクタクルまで体現する自らのクリエイティビティを、なおも刻一刻と進化させ続ける音楽探求精神――。バンド結成時からの中心人物=志村正彦の急逝という危機に直面しながらも、山内総一郎(Vo・G)・金澤ダイスケ(Key)・加藤慎一(B)の3人で新たな音楽を紡ぎ前進し続けているフジファブリック。3人で生み出した作品と志村の遺した楽曲とが重なり合い、響き合いながら、豊潤な音の景色を繰り広げているフジファブリックの表現世界を、10の名曲を通して改めて振り返ってみる。(高橋智樹)


① 桜の季節

四季をテーマにした4連作シングルでメジャーデビューを飾ったフジファブリックの1stシングル=「春盤」の表題曲。《桜の季節過ぎたら遠くの町に行くのかい?/桜のように舞い散ってしまうのならばやるせない》といった冒頭のフレーズが、日常にふと湧き上がるメランコリックな感情を鈍色の心象風景を精緻に捉え、《ならば愛をこめて 手紙をしたためよう》のサビで目映い高揚感の真っ只中へと導いてみせる……そんな志村正彦の筆致と、和やかな妖気とでも呼ぶべき唯一無二の磁場をくっきりと伝えてくる楽曲だ。

② 銀河

どこかフォーキーな趣の漂う志村正彦のソングライティング&夜の闇をかき乱すような詞世界が、16ビート&キック4つ打ちのリズムと一丸となってミステリアスな疾走感を描き出す、前述の4連作シングルの最後を飾る「冬盤」の表題曲。Aメロ/Bメロ/サビとまったく異なる言葉のテンポ感と風景を編み上げながら、聴く者すべてを「今ここ」の日常から自然と引き離し、《U.F.O.の軌道に乗って あなたと逃避行/夜空の果てまで向かおう》とイメージの異空間へと連れ去っていく――というフジファブリックならではのポップ哲学の結晶。

③ 茜色の夕日

志村が地元・富士吉田から上京して最初に作られた楽曲であり、インディーズ時代から大事に育まれてきた名バラード“茜色の夕日”。孤独も苦悩も拭い難く抱えながらも、《東京の空の星は見えないと聞かされていたけど/見えないこともないんだな そんなことを思っていたんだ》と珠玉のメロディとともに掲げられる言葉が、果てなき日常の靄の中に一抹の、しかし確かな希望を灯してくれる。志村急逝の直後、COUNTDOWN JAPAN 09/10の舞台でこの曲を弾き語りで歌った奥田民生が、涙をこらえきれず声を詰まらせた場面をご記憶の方も少なくないことと思う。

④ 若者のすべて

“Surfer King”や“パッション・フルーツ”、“東京炎上”、“TEENAGER”と多彩なポップナンバーが弾け回る3rdアルバム『TEENAGER』(2008年)に、凛としたソングライティングで揺るぎない軸を築いてみせた名曲。過ぎ行く夏のセンチメントそのもののような志村の歌が、シンプルに研ぎ澄まされたバンドサウンドの美しさと共鳴し、僕らはいつしか「あの頃の夏」へと引き戻されていく。リリースから10年以上を経てCMソングに起用(2018年)されるなど、フジファブリック名曲群の中でもひときわエバーグリーンな輝きを備えたマスターピース。

⑤ Sugar!!

《全力で走れ 全力で走れ 36度5分の体温》……スポーツチャンネルのタイアップ曲として制作された楽曲であるというシチュエーション以上に、バンドとして/ソングライターとしてさらなる加速を志す志村の情熱が眩しいくらいの疾走感となって焼き込まれている11thシングル曲。亀田誠治との初タッグによる“Sugar!!”や“同じ月”に加え、スウェーデンに渡っての初海外レコーディングによる楽曲も収めた4thアルバム『CHRONICLE』は、志村の音楽的冒険心を最大限に凝縮した作品であり、さらなる新章への指針となるはずだった。

⑥ 夜明けのBEAT

2009年12月24日に急逝した志村は、『CHRONICLE』の次のアルバムに向けて楽曲のデモを残しており、そのデモを基に山内・金澤・加藤がアレンジを完成させる――という特殊な形でリリースされた5thアルバム『MUSIC』。『モテキ』のドラマ版主題歌&映画版オープニングテーマとしても使用されたこの“夜明けのBEAT”に収録されているのも制作段階の志村の仮歌ではあるが、触れた瞬間に感情のリミッターを融解させてくるようなサビのメロディの魔力は、志村のポップ異才ぶりが新次元に到達していたことをリアルに物語っている。ボーカルトラック同様に、デモからそのまま収録されたという間奏部分の志村ギターソロも必聴。

⑦ 会いに

『MUSIC』の制作期間は同時に、残された山内・金澤・加藤にとってはバンドの未来図を懸命に模索する試練の時間でもあった。そして、志村の楽曲と《会いに行くよ》の歌詞しか形になっていなかったこの“会いに”を、加藤が詞を書き、山内がボーカルを務める形で3人は完成させるに至った。《まとまっていない気持ちだけれど 届けてみたいから》、《コンパス指さない地図なんだけど 迷ったりしないよ》というフレーズには、困難な状況の中でフジファブリックの「これから」の道を踏み出そうとする意志が沸き立っている。

⑧ STAR

山内がリードボーカル、3人それぞれが詞曲を手掛ける、というフォーマットで再び走り出した新生フジファブリックの第1弾アルバム『STAR』の表題曲(作詞:山内&加藤、作曲:山内)。雄大なイントロからBPMを上げてスリリングなコズミックポップへと流れ込み、《星を目指そう》とサウンドアドベンチャーを展開しつつ、「新体制」の方向性を明快に印象付けてみせた。その一方で、《君の声はこだましてる/頭の中離れないよ/巡る思いは置いといて/さあ行きますか》という一節に、亡き志村への3人の想いが滲む。

⑨ SUPER!!

楽曲タイトルや《ギラギラ燃えてるハートできっと誰もがSUPER!!/今を生きている!!》といった歌詞にも続出する「!!」(同曲が収録されたアルバムタイトルも『STAND!!』だ)に、何よりポップ全能感に満ちた歌とアンサンブルに、デビュー10年以上を経てもっと前へ先へと突き進もうとするバンドのモードが結実したパワフルなアンセム(作詞:山内、作曲:山内&金澤)。《輝き放ってちょうだい》、《殻を飛び出してちょうだい》というフレーズが、聴く者もバンド自身も奮い立たせる強烈な「その先」へのエールとして響く。

⑩ 東京

デビュー15周年を迎えた2019年、自身10作目のフルアルバムとなる『F』を締め括った楽曲は、《仰いで踏み出して 貫いた夢だけは/諦めるなよ友よ》と都会で孤軍奮闘する友人へ向けた言葉を綴った“東京”(詞曲とも山内)。前年の「フジフレンドパーク2018」で“手紙”の曲名をコールする際に間違えて「東京」と言ってしまった山内が、後に「“東京”という曲を作ることにしました」とツイートしたことから生まれたこの曲が《元気でやってますか 笑えてますか》と東京から故郷を想う“手紙”と呼応し、さらにその“手紙”の後期ビートルズ直系の王道ポップバラード感が「“茜色の夕日”のその後」の如く鮮やかに立ち昇ってくる――。すべてを抱えて進み続けるフジファブリックならではの有機的な共鳴の形が、そこには確かに存在している。
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