【10リスト】感覚ピエロ、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!

【10リスト】感覚ピエロ、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!
感覚ピエロというバンドは、どこを切っても独特だ。既存のシステムや方法論に頼らないバンドの行動指針も、時代の趨勢と寄り添うようで寄り添わない音楽性も、そしてバカバカしさから艶やかさまでをキレッキレの言葉で表現する歌詞の世界も。彼らの魅力を伝えるには10曲では不十分だが、悩みに悩んで絶対に聴いてほしい楽曲を選んだ。これを入り口に、感覚ピエロの深い森に足を踏み入れてもらえたら嬉しい。(小川智宏)


①メリーさん

何にせよ、この曲がすべての始まりだった。感覚ピエロが最初にこの世に問うた“メリーさん”は、文字通りの意味でこのバンドのすべてを物語っている。鋭いギターサウンド、スリリングなリズム、毒っ気のあるエロティシズムと少しのユーモア、そしてその裏側に潜むシリアスなテーマ性。《ストラトキャスターのノイズが流れた。》というサビのフレーズが象徴するように、この曲が歌っているのはロックバンドの妖艶なるロマンであり、感覚ピエロがここから何をやってのけるのかという宣戦布告だ。そのぞくぞくするような緊張感は今ライブで聴いてもまったく変わっていない。

②O・P・P・A・I

いまだかつて、こんなに切れ味鋭くかっこよく、このワードを叫ぶロックソングがあっただろうか(いや、ない)。とりわけ横山直弘(Vo・G)の歌にギターが追従するところなんかはバカバカしくて笑ってしまうし、ふとした瞬間に頭をよぎる「おっおお、おっおっおっおっぱい」のフレーズを噛みしめるたびに自分が感エロ中毒(あるいはおっぱい中毒かもしれない)であることを痛感するが、それはともかく、この曲が凄いのは、実はどこまでも身も蓋もない妄想ソングでありながら、同時に率直なラブソングでもあるところだ。《ゆれる》のはおっぱいだけでなく、理性の断崖絶壁に立つ主人公の心でもあるのだ。

③Japanese-Pop-Music

ファンやリスナーを決してナメない、というのが感覚ピエロのひとつの美学というかプライドだという気がしている。であればこそ彼らは常にファンの裏をかくことを考え続けるし、いざメッセージを発信するとなればどこまでも本気で向き合おうとするのだが、この“Japanese-Pop-Music”はまさにそんな姿勢を体現する楽曲だ。皮肉や挑発が満載の歌詞だが、ここで横山が挑発し、ガチで勝負を挑んでいるのは音楽シーンや業界ではなく、それを受け取って聴いているあなた自身なのだ。キャッチーな裏打ちダンスビートをかき消すように鳴らされるギターのノイズが「本気で受け取れ」と言っているようだ。

④拝啓、いつかの君へ

ご存知のとおり、ドラマ『ゆとりですがなにか』の主題歌に起用され感覚ピエロの名を一躍広めるきっかけとなった代表曲中の代表曲。《「あんたの正義は一体なんだ?」》というフレーズに込められた抜き差しならない心情は、秋月琢登(G)がずっと書き続けているテーマだ。《今ココに在るものすべて僕等が壊してあげるから》、《理解されなくてもいい 今はまだ何も見えなくても》――まるでこの曲が広がる運命を予期していたかのように、常に自力で道を選び独立独歩で歩んできた感覚ピエロというバンドのありかたを改めて宣言しているようなこの曲の歌詞は、いつ聴いても刺激的だ。

⑤夜香花

美しく壮大なバラード。作詞をしたのはベースのタッキーパイセン(滝口大樹)だ。機関銃のようなビートとギターリフで空気を切り裂くファストチューンが目立つ感覚ピエロだが、ミディアムナンバーやバラードにも名曲は数多い。そしてこういう曲でこそ、横山の抑揚の効いた表情豊かなボーカルが際立つ。幻想的なギターのアルペジオからはじまり、感情を押し殺すようなAメロから徐々に思いが溢れ出すようなBメロ、美しく切ない愛を歌い上げるサビへ。ベタといえばベタだが、トリッキーな曲が多い感覚ピエロだからこそ、ここぞというときにライブでこの曲が演奏されるととんでもなく「効く」のだ。

⑥疑問疑答

映画『22年目の告白−私が殺人犯です−』の主題歌として書き下ろされたこの曲。映画の世界観やテーマを背景にしながらも、それが感覚ピエロが歌い続けてきたテーマと完全にリンクしているという意味で、とても幸福なタイアップソングだと思う。唸りをあげてドライブするギターとアキレス健太(西尾健太/Dr)の速射砲ドラムでカタパルト発進しつつ、《− あなたの世界は、何色か? −》というメインテーマを繰り返し提示する怒涛のアグレッシブチューン。「色」というのは感覚ピエロにとって重要なキーワードのひとつだ。何色にも染まらない「あなた色」を探せというシリアスなメッセージが、切迫感をもって突きつけられる。

⑦A BANANA

アキレス健太が作詞の腕を振るう最強のサマーパーティソングで、ミュージックビデオがYouTubeでR18認定されたという伝説も残している。《やれっこないのはわかっちゃいるけど/今宵は俺の桶狭間!》、《シャンパン片手にギャルビュッフェ》とほとんど意味不明だけど、ハイテンションなのがよくわかる歌詞、腰にクるグルーヴと徹頭徹尾アッパーなリズム。エロに振り切るだけ振り切ってヤリ逃げという潔さが、かえって清々しい。“O・P・P・A・I”もそうだが、感覚ピエロのエロは生臭くも気色悪くもないところがいい。深夜テレビのようなノリで何も考えずに盛り上がれるキラーチューンだ。

⑧ハルカミライ

切っ先鋭い攻撃性とテンションを持った感覚ピエロらしい王道曲でありながら、どこか他の曲とは違う抜けの良さを感じさせるのはこれがアニメタイアップとして書き下ろされた楽曲だからか、あるいは新会社設立やエイベックスとのパートナーシップなど、バンドの歩みを改めて明確にするタイミングで期するところがあったからか。独特の美学と挑発的なメッセージに満ちた横山の歌詞に対して、秋月の歌詞には人間の弱さや不安が滲んでいることが多いが、この曲のひたすら《ハルカミライ》を目指そうというモードには少し違う力強さと明るさを感じる。《それぞれの行き先に/この歌が届くように僕は歌うよ》というフレーズには頼もしさが漂う。

⑨さよなら人色

感覚ピエロに名曲は数あれど、もしひとつ選べと言われたら僕はこれかもしれない。2018年にリリースされた初のフルアルバム『色色人色』のテーマソングとも言えるこの“さよなら人色”には、ドラマ性、メッセージ性、そして前向きな力強さの三拍子が揃っている。アレンジ面もシンプルでありながらバンドの個性的なバランスとクセをよく伝えるものになっているし(特にリズムとリフ)、くるくると表情を変える横山のボーカルもいい。盛り上がりポイントも明確で、ライブ映えもする。芸術点も技術点もハイスコアなのだ。秋月の歌詞は明快な言葉を遣いながら、ひとつの季節を乗り越えて未来へと進む意志を滲ませる。聴き終えた後に残る余韻が気持ちいい。

⑩落書きペイジ

『色色人色』以後にリリースされた配信シングル群はどれもテンションの高い佳曲ばかりだが、そのなかでもこの“落書きペイジ”はエネルギッシュだ。《−言い訳ばかり探している毎日にサヨナラ告げるよ−》、《終着点は見えないけど 大丈夫さ そんな気がするんだ》という歌詞は、主人公の物語であると同時にもちろん感覚ピエロ自身の物語でもある。バンドとして短くないキャリアを積み重ねてきたからこそ、その殻を打ち破って新たなフェーズに突き進む、そんな進化への思いが刻まれているような気がする。《初めての不安も 始まる希望も/二つを一つに この両の腕で/愛してみせよう》という最後のラインに宿るものに、胸が熱くなる。
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