【10リスト】Aimer、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!

【10リスト】Aimer、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!
2011年にメジャーデビュー。数々のドラマ・アニメなどのタイアップにも起用され、その時に激しく、時に優しく、あらゆる情景を深く包み込む唯一無二の歌声で物語に寄り添い彩ってきた女性シンガー・Aimer。自身の作詞曲や提供曲において、バラードやミディアムナンバー、ダンスナンバーやロックなど、様々なジャンルの音楽を、その歌唱力と巧みな表現力で情感豊かに届け続けている。そんな彼女の歌を、様々な観点からじっくりと味わえる10曲をピックアップ。彼女が一言一言、一音一音丁寧に紡いでゆく楽曲の核心に触れてほしい。(沖さやこ)


①六等星の夜

2011年9月にリリースされたトリプルA面シングルとなるメジャーデビュー盤に収録。六等星とは、街明かりのない夜空でようやく肉眼で見える程度の光量の星のこと。同曲がエンディングテーマに採用されたアニメ『NO.6』の「6」とも掛けられている。
不安という感情を《終わらない夜》に例え、そんな状況でなければ気付かない小さくも掛け替えのない光=希望の大切さを歌う、ピアノとストリングスが効果的なバラード。《こんなちいさな星座なのに/ココにいたこと 気付いてくれて ありがとう》というラインなど、「ちっぽけな自分」を星座に置き換える側面もあり、この「自分」もAimerだけではなく、タイアップ作品の登場人物、はたまたリスナーにも捉えられるなど、歌詞のすべてにおいて様々な解釈ができる。光と闇をどちらも嘘偽りなく描くことで聴き手に寄り添う、Aimerの原点であり真骨頂的楽曲。

②RE:I AM

2013年3月にリリースされた5thシングル/EPの表題曲。タイトルは「Aimer」のアナグラム。『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)episode6「宇宙と地球と(そらとほしと)」』主題歌であり、劇伴作家・澤野弘之が作詞・作曲・編曲を手掛けている。HR/HM的でヘビーなギターで幕を開けたかと思いきや、途中アコースティックギターとピアノ、幻想的なストリングスやコーラスが表立ったセクションに入り、それらすべてが邂逅して新たな景色を作っていくドラマ性は格別。それらのアプローチが可能なのは、気品のあるメロディと、静かながらに強い意志を感じさせるボーカルがあるからだ。悲しみや切なさを孕みながら勇敢に一歩一歩踏み出していく切実な想いが気高く描かれている。

③誰か、海を。

2014年9月にリリースされたEPの表題曲であり、菅野よう子が劇伴を担当した「ノイタミナ」アニメ『残響のテロル』のエンディングテーマ。菅野プロデュースのもと、作詞には青葉市子、エンジニアにはシガー・ロスM83、シュガーキューブスなどを手掛けてきたケン・トーマスが参加するという、Aimerの新機軸かつ表現のキャパシティを拡張している。仄暗く緊迫感のあるサウンドスケープ、《沈んでゆく魚と太陽を/浴びたいのだ》や《毟られた翼》など息を飲む世界観の言葉たち、少年性と希望を手放す寸前に生まれる気だるさが漂うボーカルなど、絶望的ながらに美しさを感じさせる楽曲。毒々しいストリングスと無機質なプログラミング音など、ビョークの『Homogenic』に通ずる世界観を思い浮かべた人も多いのではないだろうか。Aimerのボーカルの存在感や深みを育んだ楽曲とも言える。

④Brave Shine

2015年6月にリリースされた8thシングルの表題曲でありTVアニメ『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』2ndシーズンオープニングテーマ。《守りたいものを守れる強さ/それを信じられなくなる弱さ/すべてを受け入れて 未来(あした)を探す》という歌詞のとおり、守りたいものを守るという強い意志や直向きな姿勢が、シリアスなロックサウンドにも言葉にも貫かれている。
そのぶれない世界観があるからこそ、Aimerのボーカルの特色がドラマチックに作用してくるのがこの曲の重要な箇所だ。ウェットでありながらハスキーな彼女の声質は、性別という概念に左右されず「人」としてのメッセージを発するのに非常に適しているだけでなく、繊細さを併せ持つ。「守る」という強い意志を生んだのは「守りたい」という願い。その清らかさを細やかに美しく波打たせる唄に酔いしれる。

⑤蝶々結び

2016年8月にリリースされた11thシングル表題曲。RADWIMPSの野田洋次郎が楽曲提供&プロデュースを手掛け、コーラス参加し、さらにギター&コーラスとして永積崇(ハナレグミ)が参加している。野田のソングライティングのひとつの手法――RADWIMPSの“最大公約数”や“マニフェスト”などに代表される、一見恋愛と関係なさそうな題材をラブソングに昇華する文脈と、「運命の赤い糸」や「愛しい/糸しい」という古くからの言い伝え、つまりラブソングの王道の文脈が結ばれた、非常に意味深い楽曲だ。
幼い頃から慣れ親しんでいる結び方でありながら綺麗に形作ることが難しく、簡単にほどけてしまう蝶々結び。それを愛し合うふたりの関係に重ねて、このふたりなりに、このふたりだからこそ美しく結んでいこう歌う真摯な愛情が胸を打つ。Aimerと野田によるオクターブユニゾンと、Aimerの潤いのあるフェイクと永積のコーラスによるラストセクションに、感嘆の溜息が零れる。

⑥カタオモイ

2016年9月にリリースされた4thオリジナルフルアルバム『daydream』収録曲。彼女の歌声に魅了された豪華アーティスト陣が参加したアルバムで、この曲はandropの内澤崇仁が作詞・作曲を担当している。
人生をフルコースにたとえると君に出会ったことはフルコースであり、老いてギターを思うように弾けなくなっても隣で一緒に歌ってほしいなど、様々な言い回しで「僕」から「君」への愛情が綴られていく。と思いきやサビは「君」視点にスイッチ。「僕」とは真逆に、《Darlin' 夢が叶ったの》、《「愛してる」》と単刀直入な言葉で「僕」=「Darlin'」への想いが描かれる。ふたりそれぞれの片想いが成就する歓喜の楽曲だ。ギターのリフレインとフィンガースナップというラフな印象を与えるセクションを基盤にしたサウンドメイクも、かけがえのないささやかな幸せを彩っている。

⑦ONE

2017年10月にリリースされたトリプルA面となる13thシングル収録曲。爽快感に満ちたダンサブルなポップナンバーで、解放感のあるサウンドは新たな世界へと高らかに飛び立っていくイメージそのもの。歌詞も《君だけの旗 振りかざして/明日を恐れないで》や《誰かが決めた君の“君らしさ”なんて/Turning over 素顔で》など、懸命に生きる人々を鼓舞し、一人ひとりが持つ個性を尊重するストレートな言葉たちが並ぶ。それはリスナーに向けられているものでもあり、この曲でこれまでになるほどの晴れやかな楽曲に挑戦したAimer自身に投げかけられているものでもあるだろう。透明感のある歌声で放たれる《歌え 進め 届け You're the one》という言葉は、どこまでも勇敢だ。

⑧I beg you

2019年1月にリリースされたトリプルA面となる16thシングル収録曲であり、『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅱ.lost butterfly』主題歌。同作品の劇伴を手掛ける梶浦由記が作詞・作曲・編曲を手掛け、歌詞にはメインヒロインである間桐桜の心情が描かれている。オリエンタルなムード漂うサウンドスケープは妖しく響き、Aimerは崩れてしまうぎりぎりの温度感で楽曲に通う悲痛さや狂気性を歌で表現。《ねえ輪になって踊りましょう》や《やがてキラキラ夢の中》などの少女性、ダークなのにもかかわらず軽やかなビート感、物憂いコーラスが、より楽曲の世界観をよりカオティックかつ沈痛なものにする。最後の《離さないで》と《愛してる》という懇願の念が、火傷のように焼き付く感覚もまた趣深い。

⑨STAND-ALONE

2019年5月にリリースされた配信シングルであり、ドラマ『あなたの番です』主題歌。ドラマが持つ「歪んだ世界」や「誰を信じていいのかわからない」という環境が色濃く影響した楽曲で、その恐怖と対峙しながらSTAND-ALONE=自らの足で立つ、孤立する人間の心情を綴っている。《窓辺に 月明かりも届かない場所》であり《一人立ち尽くす/星の見えない夜》は、《何もかも投げ出して/暗闇に浮かぶ星になりたい夜》。ハードなギターや重いドラムなど、ラウド色の強いサウンドに乗せて届けられる、《悲しい歌ずっと/歌ってもいい》と言い切れるくらいの状況になっても諦めない――その強い信念に圧倒される。

⑩春はゆく

2020年3月リリースの18thシングル表題曲であり、『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅲ.spring song』主題歌。同劇場版シリーズの第1章主題歌“花の唄”、第2章主題歌“I beg you”に続いて、劇伴音楽を担当する梶浦由記がプロデュース及び楽曲提供を担当している。「聖杯戦争」の真実と、少年と少女の物語の結末が語られる3部作の完結編。その世界観から生まれる拭うことのできない悲しみや深い愛情が、オーケストラとプログラミング、バンドサウンドで綿密に描かれる。特に、息遣いで微かな感情の波さえも歌へと取り込むAimerの柔らかな声、ほろほろと鳴るハープの音色と、消え入りそうなコーラスの三位一体が魅せる美麗な感傷性は、楽曲の深層だ。
春はゆき季節は変わる。だが桜が運んだ想いや景色は消えることはない。様々な感情を内包した、静謐で壮大な愛の歌。『Fate/stay night』という物語だけでなく、Aimerの音楽人生のひとつの境地と言ってもいいのではないだろうか。
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