①For Freedom
(1stアルバム『Where's My Potato?』/2010年)元々デモ音源に収録され、その後1stアルバム『Where’s My Potato?』にも収められたこの曲は、川上洋平(Vo・G)が社会人時代に「音楽をやりたい、仕事から解放されたい、自由になりたい!」という気持ちを突き詰めた末に生まれたものだと語られている。そういった自由への欲求は私たちも日常的に抱くものではあるが、彼らのその強い想いが宿ったこの曲はものすごくトリッキーであり何とも攻撃的! 拍取り困難なイントロに否応なしに耳が惹かれる攻撃的なロックチューンではあるが、歌詞の内容もこれまた刺激的。というより、まさに「[Alexandros] (当時は[Champagne])の世の中への宣戦布告」なのだ。自分がかっこいいと思った音楽を信じて這いつくばっている姿を嘲笑う奴らへの警鐘感をビリビリと感じるし、実際彼らは数年かけてシーンを統べるような存在にまでのし上がっていくのだから痺れる。≪誰かの優しい言葉でなく 激しいだけの嘘の言葉でなく/「私は 私だ」って言える事が何にも変えがたく心地良いんだ≫――常に自身が鳴らす曲、想い、何より「バンド」を信じて疑わない彼らの自信と誇りの象徴、それがまさにこの“For Freedom”なのだ。
②city
(2ndアルバム『I Wanna Go To Hawaii.』/2011年)記念すべき1stシングルとなったこの“city”の凄いところは、「自分たちの曲があなたを救い続けるから安心して進め」という優しさではなく、≪この歌も捨て 自らの言葉と身体で生きていけ≫と言える強さだ。それは聴き手を冷たく突き放しているわけでは決してなく、≪ここはどこですか/私は誰ですか≫という問いの答えを自ら掴みに行けという[Alexandros] からの激励のフレーズに他ならない (というか、まだ駆け出しに近い段階で「自分たちの歌を捨てろ」と歌える彼らの精神力がまずすごい) 。そんな切なさや哀愁を漂わせながらも胸のど真ん中に強く刺さるこの曲に、一体何度励ましてもらったことだろう。手元にある存在証明書に頼りがちな日々、何千何万という人が行き交う街の中に決して埋もれてしまうなよ。己の存在意義は、己が導け――誰かに媚びることなく己を貫く彼らの原点を歌う、決して色褪せることのない不朽の名曲だ。
③spy
(3rdアルバム『Schwarzenegger』/2012年)「人生の岐路に立つ瞬間」というのは人によってさまざまだが、その中でも一際悩ましい選択を迫られるのは「仕事を決める時」なのではないだろうか。実際[Alexandros] はメンバー全員が社会人経験者であり、社会人としての苦労も仕事を辞める時の決断も全て経験している。だからこそこの曲には強い説得力が宿っているし、≪また何度も妬むだろう/もう一つのlife送れたはずだって≫と「別の道」があることも知っている。だが彼らは、≪だがいつかこうも歌うだろう/ジャズコにプラグぶっ差して/「我が人生に悔いはない」/ってさ≫と、いつの日かでっかいステージの上からそう叫ぶために虎視眈眈と生きていく道を選択した。ロックスターだってひとりの人間だということをこの曲から教えてもらえるし、進路に惑う度に強く励ましてくれる。