『ヒット・ミ―・ハード・アンド・ソフト』の熱狂が、ついに日本へ――LAで魅せた“今”のビリー・アイリッシュ、そのすべてを刻んだライブレポート

『ヒット・ミ―・ハード・アンド・ソフト』の熱狂が、ついに日本へ――LAで魅せた“今”のビリー・アイリッシュ、そのすべてを刻んだライブレポート

現在発売中のロッキング・オン8月号では、ビリー・アイリッシュのLA公演のライブレポートを掲載しています。
以下、本記事の冒頭部分より。



2024年12月、LA近郊のキア・フォーラムで開催されたライブは、5日間の日程すべてがソールドアウトとなった。5日間を締めくくる12月21日の夜のライブは、ホームタウンのLAに戻ってきた彼女にとって、またしても記録を更新した2024年を締めくくるウィニングランのようだった。これは単なる比喩ではない。会場を見ると、アリーナの大部分はサーキットのような長円形のステージが占め、バンドメンバーや特殊効果装置の一部はステージに設けられた2つのピットに収められている。そのため、ビリーはステージの端をぐるりと一周するだけでなく、8の字に走り回ることもできた。

これほど縦横無尽に動き回れるのは、もともとの体力だけでなく、毎晩かなりの長さのライブをこなす中で鍛えられた部分もあるだろう。この日のライブでは、3ヶ月の北米ツアーを締めくくるLAでの5公演を経て、「くたくたになった」と認める場面もあった。

だが、地元ということもあり、友人や家族を前にしているような親密さも感じられたこの晩のライブでは、ビリーはステージの上で体を動かす喜びにあふれているように見えた──彼女はまさに、走る、もっと言えば疾走するために生まれてきたのだ。会場に集まった若いファンの大半は、彼女のトレードマークとなったその場でジャンプする姿が印象に残ったかもしれない。だが、この日の一番の目玉がビリーの躍動する姿かというと、決してそんなことはなかった。

ビリーのレパートリーには独創的なアップテンポの曲も数多くあるが、デビューから5年で、この世代でも最上級のバラードシンガーとしての地位を確立したのも間違いない。最後の曲ではなかったものの、“What Was I Made For?”は、セットリストのクライマックスと言ってもいいように感じられた。スポーツウェア姿のビリーはステージの南側の端に落ち着くと、ひざを体に引き寄せたり、足を組んだりしながら、アリーナの一方の端に向かって、一体の人形の人生を歌った。これは実に感動的な場面だった。

そしてタイトル通り、アルバムでも最高の曲である“ザ・グレイテスト”は(誓って言うが、タイトルに引っ張られたわけではない)、破局の痛みを切々と綴ったバラードだ。物憂げな小声で始まるからこそ、その後のダイナミックな展開が可能になり、ラストの絶唱はダウナーな歌詞と裏腹に、圧倒的な勝利を告げるかのごとく、聴く者の胸に響く。

一方で、ライブのオープニング曲の“チヒロ”のように、このアルバムやライブのセットリストがビート重視、あるいはクラブフロア向きのスタイルに方向を変えると、たちまち「こういうタイプの曲をもっと聴きたい」と思わずにはいられなくなる。“ラムール・ドゥ・マ・ヴィ”の後半部分は、チャーリーxcxの楽曲を思わせる曲調に転じるが、これはとてつもない高揚感を醸し出す一方で、こうしたサウンドは隠し味的な位置付けにした方がビリーにとってプラスになることもよくわかる。

チャーリーxcxといえば、彼女のアルバム『ブラット』のデラックス盤に収録された楽曲“Guess”にビリーはゲスト参加しており、自身のライブでもセットリストに加えている。さらに曲の冒頭には、ビリーが歌い始める前にチャーリーが登場する短い動画が上映された。(以下、本誌記事へ続く)



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