今や名実ともにUKインディシーンを代表する6人組:ブラック・カントリー・ニュー・ロード。
今年4月にドロップされた傑作『フォーエヴァー・ハウロング』は直感的かつ革新的なサウンドスケープで、国内外のメディアから高く評価され、新生BC, NRの一つの到達点を見せつけられた1枚だ。その後、バンドは新作を携えて世界各国をツアーして周り、ついに待望の単独日本ツアーが実現。大阪、名古屋、東京の3都市を巡る来日ツアーは、かねてよりバンドと親交のある日本人アーティストたちも参加し、ステージを盛り上げていた。
最終日の東京公演はソールドアウト。EXシアター六本木のアリーナは、スペシャルゲストアクト:青葉市子がパフォーマンスを終えた時点であふれるほどの満員状態。BC, NRの開演時間が迫るにつれて、観客の期待と熱気も上昇していくのが感じられた。
ほどなく場内が暗転。メンバーが登場すると、想像以上の大歓声と拍手がフロアを埋め尽くした。オープニング曲は新作アルバムから”Two Horses”。女性ボーカルの幽玄に重なり合うハミングから壮大なバンドのアンサンブルにブリッジするこの楽曲で、フロアは完全にロック。熱気は一瞬にして最高潮に到達した。
続く”Salem Sisters”も同アルバムからの1曲。バンドの屋台骨としての役割を見せつけるかのような力強いドラムビートは、ふくよかな歌声と重なり合い、観客をグルーヴの渦に巻き込んでいく。
その後もアルバム『フォーエヴァー・ハウロング』から多くの楽曲を披露した彼ら。楽曲ごとにメンバーが入れ代わり立ち代わり、さまざまな楽器を演奏することで、まるで季節が移り変わるように全く違う風景を見せてくれた。
何より印象的だったのは、互いに目を合わせながらとにかく楽しそうに演奏する彼らの姿。心の底から音楽愛している6人組から、ありのままに音を楽しむ喜びを分けてもらった気がした。この夜の会場が終始多幸感に満ちあふれていたのも、きっと観客の皆がその喜びをしっかりと噛み締めていたからだろう。
約1時間半の全セットリストが終わり、退場曲にPet Shop Boysの”Always On My Mind”が流れると、フロアからは鳴り止まない拍手と歓声が上がり、どこまでも希望に満ち溢れている一夜だった。
バンドとして新たなるステージに突入したBC, NRだが、その現在地は刻一刻と変化し続けている。今後の展開にも引き続き目が離せない。(土屋聡子)