【全文掲載】グラスゴー発の5人組バンド、ヴルアにインタビュー――ポストパンク/クラブミュージックからの影響やボビー・ギレスピーとのコラボについて語る

【全文掲載】グラスゴー発の5人組バンド、ヴルアにインタビュー――ポストパンク/クラブミュージックからの影響やボビー・ギレスピーとのコラボについて語る

グラスゴー発のバンド、ヴルア。エレクトロニックでハードなダンストラックが並ぶアルバム『エスカレート』は、クラブの一夜を丸ごとパッケージしたような激快作。結成の背景から音楽的影響、グラスゴーシーンの現在からボビー・ギレスピー参加の舞台裏まで、メンバーがラフに語ってくれた。

(インタビュアー:伏見瞬 rockin'on 26年3月号掲載) 


●今回は日本にあなたたちを紹介するためのインタビューです。結成の経緯を教えてくれますか。

ヘイミッシュ・ハチェソン(Vo)「あー、日本の皆さん、ヴルアです。自分はヘイミッシュ。コナー・ゴールディ(G)とナイル・ゴールディ(B)は兄弟で、ガキの頃から一緒に音楽を作ってた。コナーが主催してた地元のギグに自分が前のバンドで参加して、ナイルはサウンド担当で手伝ってて。そこに2人の母親もいて『今度始めるプロジェクトあるじゃない? あの子をフロントマンにどうよ!』って(笑)。その一声で自分が加入した」

ナイル「うちの母親は大の音楽好きだし、息子にとって母親の意見は絶対だから(笑)。ヘイミッシュをスタジオに呼んで一緒にやったらいい感じで、そこにフルベットした」

●子どもの頃から音楽が身近に?

ナイル「いやマジでほんとそう。母親自体は音楽やってるわけじゃないけど、とりあえずキッチンにあるラジオでフェイスレスもレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンもかかってた。子どもの頃から英才教育されてる(笑)」

ヘイミッシュ「自分も常にパーティやってるみたいな家で育った。普段からガンガンに音楽がかかってたよ。大人が退屈し出した隙に子どもだけでDJ始めるような環境。母は90〜00年代の超アッパーなトランスが好きで、父は80年代ポストパンクやゴス、それに60年代のガレージロック。父は昔バンドやってたから、晩飯の最中に音楽の議論が始まったり(笑)。強制じゃないけど、そりゃそんな家に育ったらこうなるよなって」

●『エスカレート』はクラブ体験をそのまま凝縮したように感じます。

コナー「もう、完全にそれを狙って制作中からジャンルの境界を曖昧にしていくのをテーマにしてた。テクノからブレイクビーツ、元々のパンク/ポストパンクのライブ感も織り交ぜて、その先にどう展開できるかっていう。クラブミュージックへの愛情を全面的に還元すること、それと自分たちが今生きてるグラスゴーのリアルを描くことも大事。完成したアルバムを前に『グラスゴーのクラブで起きる一夜をギュッと凝縮した』って全員が思った」

ナイル「コナーが『青春およびグラスゴーの一晩の夜遊びを一枚にするなら今回が理想形』って言ってたけど、まさにそう。思春期にどこにいて、そこから今どういう状態に至るのか。その間の良いことも悪いことも全部ひっくるめて、大切な人への愛や葛藤を、恍惚感と緊張感に溢れる音で描くのを狙ってた」

●生々しいエナジーを詰めるための工夫は?

コナー「まず生楽器パートを全部ライブ録りするところから始めたんだ。グラスゴーのスタジオでライブレコーディングして、その時点ではもっとポストパンクっぽい音だったと思う。そこから今回が初の共同プロデュースでManni Deeに入ってもらった。クラブミュージック的に先進的な人で、技術もキャリアもすごい。バンド畑じゃない人が共同プロデュースしてミックスするのが新鮮で、録った音をぶった切って別物に作り変えていった。でもライブの生々しいエネルギーは失わないようにってずっと意識してた。音がクリーンになりすぎないように議論して、マスキングと衝突のバランスも気にして、クラブやハコの生々しさをあえて残した」

●今のサウンドに至ったのは自覚的なプロセス? それともいつの間にか今のサウンドになってた?

コナー「自然に進化していった感じかな」

ナイル「影響を受けてる音楽が流動的で、しかも多岐にわたってるんだ。全員で気持ちいいポイントを探りながら一つの方向性に集約した感じだね。『これってフェイスレスっぽくね?』『ザ・プロディジーっぽくね?』ってなったら全振りして、どこまで突き詰められるか試して落としどころを見つけた。そこにヘイミッシュの声がハマった」

コナー「初期の“ディザイア”のライブでも、インダストリアルなドラムマシンに生ドラムが重なる展開で、違う毛色の音をかけ合わせるのは最初から意識してた。みんないろんな音楽を聴いてるから、一つのことをやるのが逆に難しいのかも」

●“アイ・ウォント・イット・ユーフォリック”の《Take It or Leave It》というフレーズはザ・ストロークスを連想しました。影響は受けてる?

ヘイミッシュ「それはもう。アークティック・モンキーズの名フレーズ《I just wanted to be one of The Strokes(ザ・ストロークスの一員になりたい)》の通りだよ(笑)。10代の頃に好きだったのがザ・ストロークス、ザ・ハイヴス、ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブ、ザ・ブラック・エンジェルズとか、ガチど真ん中の世代(笑)。いろんな音楽を聴いてるから自然と音ににじみ出る。《Take It or Leave It》は意識してなかったけど、やってるうちに『ちょっとザ・ストロークスっぽくね?』って思った(笑)。要するに愛だよね。自分たちを導いてくれた音楽への愛」

ナイル「ジャンルに優劣ってないと思う。好きなアーティストとそうでないのがいるだけ。あの曲を書いたときは、たまたまロウなロック寄りのモードだったのかも」

コナー「子どもの頃にワクワクしてた気持ちで毎回書いてる。どんなにニッチで変態っぽい方向に振り切れても、いざ曲作りになると『10代の影響が出てるじゃん』ってなる(笑)。なんだかんだ頭の中でキャッチーなサビを追っかけてたりする。移動中のバンの中でかかってる音楽もカオスだし(笑)」

ヘイミッシュ「一緒に酔っ払って盛り上がれるなら、どんな音楽でもウェルカム(笑)」

●グラスゴーのシーンで共感できるアーティストは?

コナー「昔から優れたバンドを輩出してきた街だよね、最近だとThe Eraとか。ラップも盛り上がっててUP2STNDRD周辺もキテる。才能あるプロデューサーや友達のバンドもたくさんいる。今は演奏できるバーやライブハウスがほんとに10軒くらいしかないから、自然と同じ場所に集まって顔見知りになって、アイデアを共有しあう。ジャンルごとに派閥で分かれる感じもなく、最初からメルティングポット状態。若いバンドならMilangeも超おすすめ。何度かうちのサポートもしてくれてる」

●ヴルアにとって野望や理想像は?

ヘイミッシュ「とりあえず常に自分たち自身をエキサイトさせ続ける。世界に打って出たい。ライブでは誰でも安心してのびのび楽しめるスペースを作るのが大事で、45分でも1時間半でも日常を忘れて、同類と頭の中空っぽにして楽しめる場を作りたい。10代の頃の自分たちにとってのライブがそういう場所だったから。それを今度は自分たちが世界に向けて発信していきたい。行けるならどこにでも喜び勇んで行って、ガンガンにライブをやりたい!」

ナイル「マジでそれな。それ以外はボーナスみたいなもん」

●“ア・クリア・タイド”ではボビー・ギレスピーが美しいポエトリーリーディングを披露しています。彼の参加した経緯は?

コナー「実は前半は自分の声なんだよね。だいぶ前に書いた詩で、最初はアルバムに入れるつもりじゃなかったけど流れでそうなった。『ボビーが来たら最高じゃない?』って話してたら、ミックス担当のジェームズが動いてくれて、1週間後にWhatsAppで音源が送られてきた。スマホからボビーの声が流れてくるの、マジでヤバい(笑)」

ヘイミッシュ「どんだけシュールなんだって(笑)」

●ボビーから反応はありました?

コナー「ヨーロッパツアーに連れてってもらった。プライマル・スクリームの前座として7公演同行させてもらって。近寄りがたいところがなくて、マジでいい人たちなんだよ!グラスゴー訛りでガンガン盛り上がったね(笑)」

ナイル「ある晩は話が盛り上がりすぎて、ボビーがアンコール出るの忘れて、他のメンバーが楽屋に迎えにきた(笑)」

●プライマル・スクリームの反体制的アティチュードは受け継いでいますか?

コナー「めちゃくちゃある。クラブカルチャーもパンクも反体制的なムーブメントの中から生まれたものだし、自分たちも超超超意識的。こないだもグラスゴーのライブで難民コミュニティのために募金を集めたんだ。コミュニティを気にかけて還元するのが重要で、大きなステージより地元の草の根の活動を大事にしてきた。自分たちが活動できてるのも、地域の基盤を作って支えてくれる人たちがいるから。そういう人たちに全力で恩返ししていきたい」


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