【ライブレポート】ニール復活! 説明不要のヒット曲連発! ペット・ショップ・ボーイズ、「ドリームワールド:グレイテスト・ヒッツ・ライヴ」を完全レポート

【ライブレポート】ニール復活! 説明不要のヒット曲連発! ペット・ショップ・ボーイズ、「ドリームワールド:グレイテスト・ヒッツ・ライヴ」を完全レポート

ペット・ショップ・ボーイズの「ドリームワールド:グレイテスト・ヒッツ・ライヴ」が、ついに日本上陸を果たした。

22年から始まった同ツアーは、活動40周年を記念した初のベストヒットライブで、披露されるのは全てシングル曲という、ファン感涙かつハイカロリーな集大成ツアーだ。故にロキソニの当日キャンセルは痛恨だったわけだが、「日曜日はごめんね」とニール・テナントがお腹をさすりながら言っていたように、ウイルス性胃腸炎によるやむを得ない事態だった。

そんなロキソニから2日、どこまでニールが回復しているか不安もあったが、蓋を開けてみればオープニングの“サバービア”から声量、声艶共に全盛期を思わせる見事な歌声を披露、その後も笑顔でステージをシャキシャキと歩き回るその姿は、ほぼ完全復活と言っていいもので、会場には安堵と歓喜が入り混じった歓声が湧き上がる。

その後も大合唱の“ホエア・ザ・ストリーツ〜”、アリーナ後方まで横揺れのダンスが広がった“ドミノ・ダンシング”、煌びやかな照明も含めてまさにディスコと化した“オールウェイズ・オン・マイ・マインド”etc.、ツアー初期にはやっていた“ゴー・ウエスト”がなくなった、という微かな残念ポイントはありつつも、それを差し引いても凄い、やってもやっても尽きないアンセムの数々を、御歳71とは思えないエナジーで打ち出していくのだ。

もちろん観客も負けてはいない。「今日はシングルのヒット曲ばかり……日本でもヒットしたかは分からないけど」とニールはお茶目に言っていたが、往年のファンもこぞって馳せ参じたこの日の観客は、歌って、踊って、PSBと自分のメモリーレーンを辿って気持ちを昂ぶらせて……と、とにかくこの公演を100%楽しみ尽くす猛者揃いだ。

ただし、「ドリームワールド〜」は単なる懐メロツアーではない。

80年代から今日に至るまでポップと、ダンスと、クラブカルチャーと、ハイブロウなアートの融合を試み続けてきた彼らが、何故斬新であり続けるのかを証明する、恐ろしくコンセプチュアルなショーでもある。

セットは最小限ながら隅々まで洗練されている。街灯のモチーフや、横断歩道や路線図のようなライン、人々のシルエットetc.が上手から下手へと動き続ける映像は、「万物は流転する」じゃないけれど、この世に確かなものはないのだという、PSBがキャッチーなポップソングの裏で繰り返し歌ってきたシニシズムとメランコリィを表現していた。楽曲も基本シームレスに演奏され、中盤以降はクリス・ロウが誘うクラブフロアの熱狂へと駆け上がっていく。ミニマムからマキシマムへ、モノトーンからカラフルへと、いつの間にか景色が変わっている、そのリキッドな感覚も堪らなくアートだ。

黒と赤に大胆に色分けされたビジュアルを切り裂くような爆音でド迫力だったのが“哀しみの天使”で、重低音とシンセの分厚い高音、そのどちらもクリアに鼓膜に到達するガーデンシアターの音響の良さを再確認させられた。同会場の扇型に開けた視界の広さも、ビジュアルアートとしての本公演への没入感を高めてくれるものだったのではないか。

何度か衣装替えを経てのアンコール、“ウエスト・エンド・ガール”は二人の原点を垣間見せるローファイなプレイ。ただし、アゲきって終わるのではなく、ラストが友人の死を悼み、「変わり続けていく人と時代」を歌った“ビーイング・ボアリング”であるあたりも、ファンが愛してやまないPSBの美学の結晶だった。

文=粉川しの


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