2021年のデビュー作『コラプスド・イン・サンビームズ』が絶賛され、現代のサウスロンドンシーンを代表するシンガーソングライターとして注目されてきたアーロ・パークス。彼女の音楽はUKソウルの伝統を感じさせる繊細なもので、2010年代のインディR&Bを経た親密なベッドルームポップとして聴かれてきたところがある。その内省的な歌は、傷つきやすい心に寄り添うものだったのだ。
そんなアーロが、フィービー・ブリジャーズとのコラボレーションを含むなど、より外向きになったセカンド『マイ・ソフト・マシーン』(2023年)を経て、新作『アンビギュアス・デザイア』をリリースした。これが、紛れもなく彼女の新たな章を告げる作品となっているのだ。柔らかな歌声やデリケートな感情表現はそのままに、より開放的で高揚感の漂う一枚に仕上がっている。
何でもアーロは、本作『アンビギュアス・デザイア』を制作するタイミングでナイトクラビングに夢中になっていたという。クィアクラブで、なりたかった自分として過ごせたと彼女は語る。そうしたダンスフロアで得られる快感やきらめく夜の時間の感覚がアルバム全体に注入されており、たとえばすでに発表されているシングルの“Heaven”や“Get Go”では明確にダンスミュージックに身を任せることの興奮が描かれている。
そして、これまででもっともビートが立ったダンサブルな仕上がりになっているのだ。とはいっても、アンダーグラウンドのUKクラブミュージックとの接続もあり、サウンドとしてはあくまで彼女らしい叙情性が際立つもの。ベッドルームの内省とダンスフロアの高揚が、そこでは美しく溶け合っている。
そして、この抜群のタイミングでフジロック出演が決定! 振りかえれば彼女は、初来日となった2022年のフジでも、手作り感のあるステージングと豊潤なアンサンブルや歌で観客を魅了していた。そんな温かさはそのままに、今回はダンスミュージックの気持ちよさが感じられるライブになるはず。アーティストとしてさらなる覚醒を見せたアーロ・パークスの現在を、全身で感じたい。(木津毅)
アーロ・パークスの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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