「ラウドロックは好きですか?」とライブのMCでも呼びかける
coldrainは、ここ日本でヘヴィな音楽をメインストリームに押し上げたバンドと言ってもいいだろう。2020年2月、彼らが地元・ポートメッセなごやで初開催したフェス「BLARE FEST. 2020」は、名古屋を「世界の中心」に変えてしまうほど凄まじい盛り上がりを記録した。その主催者でもあり、人気と認知をますます拡大させているcoldrainの定番曲やライブ必須曲など、改めて「ラウドロック」の看板を掲げて夢を叶え続けている彼らの音楽的魅力について年代順に遡って紹介していきたい。(荒金良介)
①Final Destination
記念すべき1stアルバム『Final Destination』の表題曲であり、本作の冒頭を飾るナンバー。ライブではアンコールなどの重要なポジションで披露されることも多く、間違いなくcoldrainの名刺代わりとも言える代表曲である。Masato(Vo)の抑揚を付けたメロディアスなボーカルが印象的で、ライブでは音源以上にエモーショナル全開に迫って来る。長年プレイし続けてきたこともあり、彼らが辿って来た歴史もシワとなって刻まれ、とりわけ感情移入を誘う楽曲だ。年を追うごとにアンセム感が増している不朽の名曲。
②Die tomorrow
TVゲーム『ワールドサッカー ウイニングイレブン 2011』に収録されている楽曲。歌い出しから、この1stミニアルバム『Nothing lasts forever』のタイトルが歌詞に入れられており、本作を象徴する重要曲であることがわかるだろう。切実な曲名にもドキッとさせられるが、《Listen to the voice inside》という歌詞は周囲の雑音を気にせず、自分たちの心に耳を傾けて突き進め!と説いているようにも聴こえる。ブレイクダウンを効果的に取り入れた重厚なサウンドもかっこいい。
③To Be Alive
自分の弱さや内なる敵……つまり自分との闘いという意を込めた2ndフルアルバム『The Enemy Inside』収録曲。作品全体を通しても守りに入るどころか、攻めの姿勢を貫いており、パンチ力がグンと高まった一枚と言えるだろう。そのオープニングを飾るこの曲は緩急の起伏はもちろん、スクリームとメロディアスなパートを上手く使い分け、観客を巻き込んで一緒に歌えるパートも備え、現場でも熱い一体感を誘う1曲だ。
④No Escape
初めてアメリカレコーディングを行い、
パラモア、
ブレイキング・ベンジャミン、
キルスウィッチ・エンゲイジなどを手がけるデヴィッド・ベンデスをプロデュースに迎えた2ndミニアルバム『Through Clarity』収録曲。人気ゲームソフト『バイオハザード オペレーション・ラクーンシティ』CMソングにも起用された楽曲だ。イントロから高揚感を刺激され、キャッチーなサビの広がりも最高で、初めて聴いた人もその輪の中に入れるポップ性に長けたナンバー。ライブでも異常に盛り上がる。
⑤The Revelation
前作『Through Clarity』に引き続き、デヴィッド・ベンデスをプロデューサーに起用した3rdフルアルバム『THE REVELATION』収録の表題曲。エレクトロなイントロから一気にヘヴィなリズムを刻み、スクリームで押しまくるボーカルに目が覚める思いだ。とはいえ、サビではcoldrainらしい天に突き抜けるようなメロディラインが顔を見せ、coldrain流のメタルコアサウンドを提示。特に《welcome to the revelation》における歌詞の反復フレーズはライブでも大合唱が沸き起こる。
⑥Evolve
2014年2月から1ヶ月に渡り、英メタルバンドの
ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタインとヨーロッパツアーを回り、海外にも活躍のフィールドを広げ始めたcoldrain。そして同年、前2作でデヴィッド・ベンデスをプロデュースに迎えた経験を踏まえて作られた3rdミニアルバム『Until The End』はセルフプロデュースにシフトした。本作は従来の美メロはそのままに、より一層アグレッシブな破壊力を高めることに成功。この曲はド頭からブリブリの剛腕リフで攻め、曲名通りにリスナーを巻き込む凄まじいエネルギーに満ちている。
⑦Gone
海外ツアーが増える中、「自分たちのルーツにある音楽が一番熱くなれる」と当時Masatoは発言していたが、ある意味バンドの原風景に回帰した4thフルアルバム『VENA』が完成。メンバー全員が大好きな
セヴンダストを筆頭に
パパ・ローチやタップルートなど、00年前後のラウドロック/ニューメタルを今の自分たちで咀嚼したら、どんな楽曲が生まれるだろう。そんな発想から作られた楽曲群は、余分なものを削ぎ落としたストレートな作風で勝負している。この曲もまさにそうで、ハンドクラップを導入したパートを含めて、ライブ映えを意識したシンプルなリフやメロディが冴えている。
⑧ENVY
結成10周年の節目に出た5thフルアルバム『FATELESS』は、バンドの魅力であるツインギターと美しいメロディに磨きをかけ、coldrainのストロングポイントを強化した一枚に仕上がった。また、本作は
インキュバス、
ストーリー・オブ・ザ・イヤーなどを手がけたマイケル"エルヴィス"バスケットがプロデュースを担当。会場のキャパも大きくなる中、スケール感を意識した楽曲が増え、この曲もヘヴィネスとメロディアスの両翼を広げたロックサウンドで人気のあるナンバーだ。本作のレコ発ファイナルでは初の日本武道館公演(18年2月6日)を決行。ラウドロックという自身の音楽性を貫いたまま武道館に立つ姿はあまりにも感動的であった。
⑨MAYDAY (feat. Ryo from Crystal Lake)
メンバー自ら「最高傑作」と位置付ける6thフルアルバム『THE SIDE EFFECTS』。ここに来て、過去作とは一線を引く遊び心や実験精神を盛り込んだ作風となり、もはや何をやってもcoldrainになることを証明した一枚。そのトップを飾るこの曲は同じく海外を股にかけて活動する
Crystal LakeのRyo(Vo)を迎え、Masatoと熱い掛け合いバトルを披露。ヘヴィネスの向こう側を見せつける破壊力を発揮し、「BLARE FEST. 2020」初日でもこの曲を再現してくれ、凄まじい盛り上がりを記録した。
⑩JANUARY 1ST
引き続き『THE SIDE EFFECTS』収録のこの曲を取り上げないわけにはいかない。過去にも“Miss you”などバラードタイプの曲調はあったけれど、この曲はバラードにしてバンド史上初めてMVまで作った楽曲であり、しかもそこに日本語の訳詞まで流している。歌詞カードを読めばわかることだが、映像でストレートに伝わるならば手段は選ばない。そんなバンドの熱い心意気がこのMVから伝わってくる。アコギを用いた静謐な曲調は、今やライブにおけるハイライトの一つ言っても過言ではない。ラウドロックの看板を掲げながら、こうした歌もの曲が素晴しいのもcoldrainが世界で堂々と渡り合える要因だろう。