小学6年生で曲を作り始めた大森元貴(Vo・G)が、バンドでメジャーデビューするために、明確なバンド像のもとにメンバーを探し、結成された
Mrs. GREEN APPLE。あらゆる情報が氾濫している世界を生き抜くための希望と絶望を、誠実に鳴らす新しきポップミュージックを生み出し続けてきた。大森の早熟な天才性故に、サウンドアプローチは多岐にわたり、Mrs. GREEN APPLEの音楽に対して様々なイメージを持っている人もいるかもしれない。しかし、彼らの思想は一貫してブレていない。そんなMrs. GREEN APPLEのディスコグラフィーは、その都度「ポップ」の常識を更新してきた闘いの歴史でもある。(小松香里)
①我逢人
大森と若井滉斗(G)が18歳の時にリリースされた初の全国流通盤のミニアルバム『Progressive』の1曲目。ライブの最後やアンコールで演奏されることが多かったとても重要な曲。小気味良いギターのカッティングで幕を開け、《貴方はその傷を/癒してくれる人といつか出会って/貴方の優しさで/救われるような世界で在ってほしいな》という大森の願いの原点ともいえる歌詞が永遠に心を震わせる。
②StaRt
大森は“StaRt”をライブで演奏する際、「デビュー曲をやります」と紹介するが、正確にはメジャーデビューミニアルバム『Variety』の1曲目。タイトルも、歌詞も、そしてサビには「ドレミファソラシド」という音階が仕込まれている等、まさにはじまりの曲。羽生結弦のお気に入りの曲としても知られる。自らの門出を祝うドラムロールを皮切りに、膨大な音と言葉が押し寄せ、すべてをアップデートする覚醒感──若き天才・大森の才能がいかんなく発揮された革命の1曲。
③Speaking
初のシングルは、今でこそ「ミセス・サウンド」を形成する重要な要素となっているEDMやエレクトロをバンドサウンドに取り入れることに挑んだ曲。《ねえ聞かせて 君の好きな歌はなに?》という問いかけから始まり、「みんな」の孤独を一気に埋めていく。哀しみと孤独を胸に秘め、肩を組むことで世界を生き抜こうという勇気に満ちている。
④サママ・フェスティバル!
それまで陰の気持ちを陽性の音楽に変換していたミセスだが、一転して陽の気持ちをもとに作った超キャッチ―なエレクトロポップ。《「海へ連れてって」/「花火へ連れてって」/「未来へ連れてって」/大好きなモノがどんどん増えてく!》。夏の高揚感が爆発し、今を楽しむだけでなく、音楽の力で未来に連れていこうというエネルギーが眩しい。
⑤鯨の唄
2ndフルアルバム『Mrs. GREEN APPLE』のリード曲。テレビ朝日系『関ジャム 完全燃SHOW』で
蔦谷好位置が絶賛したことで注目が高まった。初めて大森がストリングスリフで始まるデモを作った曲で、アルバムが出る約一年半前に行われた初ワンマンで披露されていたが、曲のスケールの大きさ故にしばらくライブで封印されていた名バラード。
⑥WanteD! WanteD!
カンテレ・フジテレビ系ドラマ『僕たちがやりました』オープニング曲として書き下ろされた。「Mrs. GREEN APPLE=明るい」というイメージを覆す目的で、EDMやトロピカルハウスを大胆に導入し、ダークでセクシーなビートミュージックとしてドロップされた。発売から2年後、ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019における
初のGRASS STAGEのライブでは1曲目に据えられ、数万人の観客を沸かせた。
⑦Love me, Love you
音楽的な力を養うため、これまで触れてこなかったサウンドに挑んだ3rdフルアルバム
『ENSEMBLE』。“Love me, Love you”の華やかなブラス/オーケストラのアプローチは、音楽的且つエンターテインメントなアルバムの象徴だ。
『ENSEMBLE』を引っ提げたホールワンマンツアーでも1曲目に演奏され、ゴージャスなオープニングを担った。
⑧青と夏
映画『青夏 きみに恋した30日』の書き下ろし主題歌。Mrs. GREEN APPLEのメンバーと同年代のキャストが躍動するスクリーンの中で、二度と戻らない夏の切なさと輝きを200%にして鳴らしてみせた。《次の恋の行方はどこだ/映画じゃない/主役は誰だ/映画じゃない/僕らの番だ》のフレーズに胸を高鳴らせた人も多いはず。「平成最後の夏!2018年AWA夏うたランキング」で1位も飾った、まごうことなき夏の名曲。
⑨僕のこと
「第97回全国高等学校サッカー選手権大会」応援歌。弾き語り調の冒頭から、目標に向けて切磋琢磨した日々と、得られなかった栄光に対する諦念と、すべてを受け入れて進むのは自分なのだという覚悟が、走馬灯のように押し寄せていく。タイアップ曲であるが、大森は初めて歌詞について妥協せず戦ったという。優勝チームはたったひとつでそれ以外はすべて敗者であるという事実に毅然と向き合った、Mrs. GREEN APPLEの意志が透徹された曲。
⑩Attitude
初のアルバム表題曲。
4thフルアルバム『Attitude』の序盤に据えられ、このタイミングで自らが音楽を作る根源そのものを書く必要性を感じた大森のヒリヒリとしたメッセージが胸を刺す。それまで放ってきた革新的なポップミュージックの進化版且つ集大成と言える『Attitude』への導入として、まずはその強き想いと、鮮やかな音を凝縮する必要があった。Mrs. GREEN APPLEとは、この“Attitude”という曲を体現したバンドなのである。