①My Instant Song
2015年6月にリリースされた、MONOEYESにとって最初の音源『My Instant Song E.P.』の表題曲であり、同年7月にリリースされた1stアルバム『A Mirage In The Sun』収録曲。細美武士のソロとして始動した制作から、MONOEYESというバンドになるという急展開を見せたプロローグを経て、その産声とも言える“My Instant Song”を聴いたときのワクワクは忘れられない。彼らの「フットワーク軽くライブをやる」というスタンスのみならず、私たちにとって「歌」とは?という問いへの答えも伝わってくるタイトル。ライブでオーディエンスが歌う光景が見える《オーオーオー》というコーラス。いちばん歌を活かしつつも、「この4人じゃなきゃダメだったんだ」と思えるアンサンブル。そして、そのすべてを包み込む温かな空気感。躓いたときのお守りとしてポケットに入れておきたい、永遠の名曲だ。②When I Was A King
『My Instant Song E.P.』収録で、『A Mirage In The Sun』には未収録。アルバムに入っていないにもかかわらず、高い人気を誇る。きらめくメロディから、ビートが力強くなり、サビで思いっきりツタツタ走り出す。初めて聴いたとき、こんなメロコアど真ん中をやっちゃうの!? 完全にライブハウスしか見えない!という驚きと喜びが去来したことを覚えている。とはいえ、切ない雰囲気や繊細なギターなど、このメンバーならではな聴きどころも。ここからMONOEYESがはじまるというスタートダッシュにも思えた、物語に欠かせない序章。③Run Run
『A Mirage In The Sun』収録曲。一音目から爆発力があり、パワーあふれるドラミングが堪能できる。歌がはじまると、それを際立たせたアレンジになるものの、来るぞ来るぞ……という予兆を見せつつ、サビでさらなる爆発が。ライブでのキラーチューンになったのも頷けるくらい、これぞ!という展開を誇っている。細美の歌声もどんどんエモーショナルになっていき、演奏も熱を帯びていく。ただ、突っ走るだけではなく、しっかり緩急も付いており、やはり細美武士は、MONOEYESは、一筋縄ではいかないと思わせられる。④明日公園で
『A Mirage In The Sun』収録曲。MONOEYESは日本語詞もやっていくんだ、と思わせた楽曲のひとつ。いきなり歌はじまりで、そのあともサビまで歌が止まらない──という展開を考えると、MONOEYESにとっての歌モノと言っても過言ではないのでは。とはいえ、ゆったり歌を聴かせるというよりは、歌詞に耳を澄ませて、ガシガシ口ずさんで、コブシを突き上げているうちに終わるようなスピード感で、彼ららしさが表れている。《夢幻のように》というリフレインには、いつも大切な思い出や大好きなシーンを重ね合わせてしまう。⑤Get Up
2016年リリースの『Get Up E.P.』収録曲であり、2017年リリースの2ndアルバム『Dim The Lights』にも収録されている。どっしり地に足のついたミドルテンポと、キラキラ輝く水面のようなギター。粛々と熱を高めていく曲調に、MONOEYESの新しい季節がはじまる予感がした。正直、派手さや激しさは、このEPなら2曲目の“Borders & Walls”のほうが突き抜けており、“Get Up”はどちらかというと、じっくりと聴かせる印象。しかしそれが、そもそも細美のソロとして始動したMONOEYESの「バンド」としての成熟を際立たせたと思う。
⑥Borders & Walls
こちらも『Get Up E.P.』収録曲であり、『Dim The Lights』にも収録されている。そして、なんといってもスコット作詞&作曲&ボーカル曲。アメリカ発のポップパンク・バンド、アリスターでもボーカルを担っていた彼の弾けた歌声が、暴れ馬のようなやんちゃな、でもひとしずくの切なさが混ざった曲調に乗って炸裂している。これを聴いてワクワクしないキッズがいるんだろうか? 間違いなくMONOEYESの幅を広げ、ライブを躍動させることにひと役かったキラーチューン。⑦Roxette
こちらもスコット作詞&作曲&ボーカル曲で、ライブで細美の「スコットが決めるぜー!」というひと言からスタートする記憶も鮮明な『Dim The Lights』収録曲。ドラム、ギター、そしてバンド全体のアンサンブルと、勢いよく展開しつつ、力強くも切ない歌へと突入していく。聴きどころは、なんといってもサビ。細美とスコットの、実はよく似た歌声が織り成すハーモニーが琴線を震わせる。MONOEYESには、ふたりの素晴らしいボーカリストがいるんだということを、この曲は改めて知らしめたと思う。⑧Interstate 46
2019年リリースの『Interstate 46 E.P.』に収録されており、2020年リリースの3rdアルバム『Between the Black and Gray』収録曲。これまでライブバンドとしてのMONOEYESに向き合ってきたけれど、このあたりから、さらに深い場所へと連れていってくれるバンドという期待値が上がってきたように思う。洗練された演奏と歌。風景や物語が浮かんでくる音像。そして、サビを筆頭にした極上のメロディ。総じて、一瞬で広大な土地にワープする気分が味わえる楽曲になっており、閉じこもっていたコロナ禍に音楽の力を感じさせてくれた。⑨リザードマン
コロナ禍にリリースされた『Between the Black and Gray』収録曲だったので、なかなかライブハウスでシンガロングできなかった。でも《いこうぜ》など鼓舞してくれる歌詞に、ひとりで口ずさんでも力をもらえることを実感したキッズも多いはずだ。私自身も、状況も相まって、決意と希望の歌と捉えて聴いていた。深い場所へと連れていってくれる楽曲が多かった『Between the Black and Gray』の中では、日本語詞、且つサビで2ビートが炸裂する軽やかさで、キッズを歌わせ、飛び跳ねさせてくれる。⑩Ladybird
ポップパンクの名プロデューサーであるマイク・グリーンが手がけた『The Unforgettables E.P.』から先行して、2024年6月にリリース。短いイントロから、あっという間にグッドメロディの歌声が響き渡り、力強いサビへと向かう。細やかな工夫や高い技術がちりばめられているのに、聴いた瞬間にグッとテンションが上がるようなわかりやすさがある。ライブバンドの人懐っこさはそのままに、華麗な進化を遂げた第一歩。東北から、日本から、世界へと轟いていく可能性を感じさせる、2024年型ポップパンクだ。『ROCKIN'ON JAPAN』2024年10月号にMONOEYESのインタビューを掲載! ご購入はこちら