【10リスト】サカナクション、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!

【10リスト】サカナクション、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!
サカナクションは、これまで音楽性においても、音楽体験そのものにおいても、イノベーションの飽くなき探究を続けながら走り続けてきた。彼らは、音楽シーンというより「世の中」における自分たちの位置という「横軸」と、自分たちが結成時から積み重ねてきた遍歴や物語の「縦軸」という座標系の中で、絶えず揺れ動きながら活動してきた。ここにあげた10曲は、どれもそのバランスが素晴らしい。とてもサカナクションらしく、そして同時に音楽の未来も感じさせる、そんな楽曲ばかりだと思う。この記事をきっかけに、改めてその深みに触れてもらえると嬉しい。(小川智宏)



①三日月サンセット

デビューアルバム『GO TO THE FUTURE』の1曲目に収録されたこの曲は、まさしくサカナクションの第一歩。というか、曲自体の歴史はもっと古く、山口一郎(Vo・G)と岩寺基晴(G)が高校時代から組んでいた、いわば前身バンドの時代からあった楽曲だという。《二人》なのに孤独なこの情景が、ディープなのにどこか無機質なサウンドと相まって、映画のように感情と時間を描き出す。改めて聴き直すと素朴な印象だが、そのぶんサカナクションの変わらないエッセンスをダイレクトに感じることができる。

②ナイトフィッシングイズグッド

ギターのコードと歌のみから始まり、徐々に音が増えていき、中盤からは岡崎英美(Key)によるピアノの連打にハードなギターに重厚なコーラスワーク……とまるで、というかまんまクイーンな大展開(実際レコーディングの現場ではクイーンが雛形となっていたらしい)。だが、それが決して単なるギミックに収まらず、楽曲の主題そのものに密接につながっているのが素晴らしい。孤独でフォーキーな冒頭から、最後は4つ打ちのダンスミュージックへ。最後は、走り出すような勢いで《この先でほら 僕を待ってるから行くべきだ 夢の続きは》と歌う。そこに重ねられているのは、山口の強い確信だ。

③ネイティブダンサー

故郷・北海道から東京に拠点を移したサカナクションが初めて作ったアルバム『シンシロ』。このアルバムはメンバーそれぞれがアレンジを担当しているが、“ネイティブダンサー”は山口が担当した曲だ。“夜の踊り子”あたりにも通じる和の響きとジャズの鋭さ、そして抑制された展開が印象的だが、それ以上に耳に残るのはその歌詞。北海道と東京、2つの場所の風景が重なるように描写され、募るノスタルジーを山口は《思い出のように降り落ちた ただ降り落ちた そう雪になって》と、空から降る雪に仮託した。その切なさの中に、新たな場所(《この街のずっと最後方》)から進んでいく覚悟が滲む。北海道と東京という2つの場所の対比は、いうまでもなく7thアルバム『834.194』の大きなテーマでもある。曲名はジャズのサックスプレイヤー、ウェイン・ショーターのアルバムタイトルから。

④アルクアラウンド

この曲でサカナクションを知った人も多いのではないか。それまでの他の楽曲と比べても、きわめてキャッチーなサビのメロディ、ロックとクラブミュージックのミックス具合、シンプルな言葉が繰り返される歌詞、そして一発撮りのミュージックビデオ。すべてが決定的にポップで明快な、サカナクションの名刺のような楽曲である。そのぶん、山口の書く歌詞には《この地》(=東京)で始めていくという並々ならぬ決意が込められていて、それが楽曲のエモーションを生み出している。怒涛のテンションで走り抜けていくアウトロは、いつ聴いても気持ちが高ぶる。

⑤目が明く藍色

アルバムごとに必ず大きな転換点となる楽曲を産み落としてきたサカナクションだが、4thアルバム『kikUUiki』においては、この“目が明く藍色”がそれだった。“ナイトフィッシングイズグッド”を超える7分近い長さもさることながら、この曲を聴いてまず胸に迫るのはそこに込められた切実さだろう。緩急のコントラストが揺れ動く感情をヴィヴィッドに活写し、そのカオティックな音のなかからまるで朝日が昇るように新たな希望が生まれてくる。記憶と現在、空想と現実が直結し、音と言葉が渾然一体となって心を揺さぶってくるこの曲は、サカナクション体験のもっともコアな快楽を教えてくれる。

⑥エンドレス

この曲、そしてこれが収録された5thアルバム『DocumentaLy』が生まれてきた背景や、ギリギリまで苦しんだ果てに完成したという経緯については、ファンであればよく知っていることだろう。そういう意味でもサカナクションにとっての重要曲であることは間違いないのだが、それと同時に音楽的にもフォーク(=個人性)とクラブミュージック(=共有性)、マイノリティとマジョリティのちょうどあいだで音楽を作り続けているサカナクションにとって、この時点でのひとつの到達点といえる曲だ。ライブで聴くと一層わかるが、シンプルなサウンドデザインと一方でパーソナルな心情を注ぎ込んだ歌詞が、完璧なバランスで同居している。

⑦夜の踊り子

アッパーなビートが始めから終わりまで鳴り響き、まるで琴のようなギターの音が和風情緒を高めていく。ミュージックビデオでメンバーは和服を着ているし、ダンサーというか日本舞踊の踊り手も出てくるし、とコンセプチュアルな楽曲ではあるが、それらは言うまでもなくサカナクションを構成してきた基本要素であり、タイアップに際してそれをデフォルメしてみせたのがつまりこの曲。だからとてもサカナクションらしいし、ライブでも長く定番曲であり続けている、ということなのだと思う。この曲のサビのキーはすごく高いのだが、そこで裏返る山口一郎の声に、ものすごく「人間」を感じる。

⑧ミュージック

ライブでこの曲を披露するときは、ラップトップを並べたクラフトワークのようなスタイル(初めて観たときは本当にびっくりした)で演奏し、後半で瞬時にバンドセットに転換して怒涛の展開に飛び込んでいく、という構成になっているこの“ミュージック”(その瞬間のエジーこと江島啓一のドラムが好きだ)。その演出からも伝わるとおり、音楽的にも歌詞のメッセージの面でも、サカナクションのもつあらゆる二面性と音楽への貪欲な情熱がすべて注ぎ込まれているのが、この“ミュージック”だ(それゆえ曲名もこれしかありえなかった)。

⑨新宝島

サカナクションの最新のアンセムといっていいだろう。いうまでもなく、アルバム『sakanaction』以降のサカナクションが向かう道を決定づけた代表曲だ。90年代風のシンセの音色とリズム、「描くこと」の本質に徹底的に向き合った歌詞。サビで一気に広がるメロディは、映画『バクマン。』の主題歌という枠を超えていくインパクトをもっていた(最初に聴いたときは笑ったが、今はイントロを聴くだけで盛り上がれる)。この曲のもつマニアックな探求心と突き抜けた大衆性はそのまま『834.194』というアルバムに繋がっているし、何よりこの曲に宿るある種の無邪気さが今のサカナクションのパワーを生んでいるのだと思う。それから、この曲のモッチ(岩寺)のギターソロは本当に絶品。ギャグだと思っていたら、いきなりガチでビンタされるような痛快さだ。

⑩忘れられないの
ソフトバンクのCMソングとして書き下ろされた、アルバム『834.194』のリードトラック。ちょっとレイドバックしたファンク/ソウルのグルーヴが新鮮。音の構成自体はシンプルなバンドサウンドで、とくに草刈愛美(B)のベースラインは、それこそ“三日月サンセット”など初期のサカナクションを彷彿とさせる。テンポ感も含めて原点回帰したような感触もあるが、的を絞ったプロダクションの方向性は、ここまで試行錯誤をしてきた結果辿り着いたものだろう。上京してきたときの心情を丁寧に綴った歌詞にも切なさというより、ある種の肯定感や希望が見える。
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