【10リスト】ASIAN KUNG-FU GENERATION、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!

【10リスト】ASIAN KUNG-FU GENERATION、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!
暴発必至の衝動をダイレクトにギターロックに叩き込んで、2003年のメジャーデビューから瞬く間にシーンど真ん中に躍り出たASIAN KUNG-FU GENERATION。だが、その音楽が単に「曖昧模糊とした00年代のムードに風穴を開けたロックのダイナミズム」の域に留まらず、2017年の現在に至るまでロックの未来を指し示す羅針盤として支持され愛されているのは取りも直さず、アジカン自身が常に時代とリアルに響き合い、時代を批評しながら、時代を突き動かすメロディと言葉とアンサンブルを紡いできたから――つまりロックという表現そのものをアップデートしてきたバンドだから――に他ならない。そんなアジカンの足跡を、以下に挙げた10の楽曲越しに振り返ってみることにしたい。(高橋智樹)


① 遥か彼方

この“遥か彼方”が収録された『崩壊アンプリファー』はインディーズリリースの翌年にキューンレコード(現・キューンミュージック)から再発&メジャーデビュー、“遥か彼方”はTVアニメ『NARUTO -ナルト-』のオープニングテーマに抜擢――と書くと華々しい船出のように見えるが、1996年のバンド結成から今作リリースまでの6年半は、後に後藤正文(Vo・G)自身も「その時の気持ちを思い出すとね、今でも悪夢の中にいるような気分になる」と語っていた通り、苦悩と試行錯誤の連続だった。レディオヘッドと同じ5人編成でスタート、後藤正文はじめメンバーの洋楽志向を反映して当初は全曲英語詩だった彼らが、初めて日本語詩の楽曲“粉雪”(同じく『崩壊〜』収録)を作ったのは2001年のこと。その翌年に発売された『崩壊〜』の幕開けを飾っているのがこの“遥か彼方”。前のめりなビート感、痺れるようなギターサウンドとともに《生き急いで搾り取って/縺れる足だけど前よりずっとそう、遠くへ》と突き上げる爆走感は、その後の『君繋ファイブエム』とともにアジカン自身を時代の表舞台へと急き立てる原動力にもなっている。


② 君という花

燃え盛る衝動炸裂感とともに「新たな地平を切り開く闘志」を掲げた1stシングル『未来の破片』に続き、アジカンがこの2ndシングル表題曲“君という花”のメロディとサウンドで提示したのは、ロックと時代を真っ向から引き受ける意志と包容力そのものだった。日々の葛藤も苦悶も、ブルータルなロックの快楽原則とはまったく異なるタフでポップなロックナンバーに結晶させてみせたアジカンの音は紛れもなく、ロックの希望そのものとして響いていた。ほどなくリリースされた1stフルアルバム『君繋ファイブエム』はいきなり20万枚超のセールスを記録。この問答無用のブレイクによって、翌年(2004年)に控えた自身初のワンマンツアー「five nano seconds」は「デビュー間もないバンドの新たな経験の場」から「予想を遥かに上回って全国各地で沸き返るファンの圧倒的な期待値にキャッチアップするための闘いの場」へと姿を変えることになる。


③ リライト

前述のような「エモーショナルかつ衝動的なロックバンド」としてのデビュー当初のパブリックイメージは、この“リライト”という楽曲に(現時点で)アジカン最大のヒットナンバーという結果を与え、やがて2ndフルアルバム『ソルファ』を自身初の週間チャート1位へと送り込むに至った。が、アジカン自身にとっては『ソルファ』というアルバムは、デビュー間もなく放り込まれたシーンの競争感の真っ只中での狂騒感と、それでも一歩でも前へ先へと進もうと切磋琢磨するミュージシャンシップとのせめぎ合いの記録でもあった。彼らが2016年、結成20周年のプロジェクトとして「『ソルファ』再レコーディング」に照準を定めたことも、彼ら自身の変革への意志ともがき回る実態との乖離に苛まれていた当時のモードを如実に物語っている。


④ Re:Re:
※再録ver.

この“Re:Re:”は2016年の『ソルファ』再レコーディング盤リリースに先がけて、新録バージョンがシングルとして発売されているが、その2016年版“Re:Re:”を聴くと、当時のアジカンが夢想していた音楽的なビジョンがよくわかる。ライブを通じて練り上げられたアレンジメント。よりタイトに、より無駄なく研ぎ澄まされたサウンドスケープ――。「ずっと決着つけられずにいたアルバムだけど。やっぱりいい作品だと思いました。12年越しでやっと思った。これはいい作品だよって」と『ソルファ』再レコーディング盤リリース時のインタビューでゴッチも語っていたが、時代の荒波の中で決死の覚悟で削り出された彫像にようやく瞳が象られたくらいの新鮮な驚きと喜びは、“Re:Re:”を初めて聴いた当時の感激も丸ごと刷新するものだった。


⑤ ブルートレイン

ポストロック的なWギターの掛け合い、緻密かつスリリングなドラムアレンジが織り成す物憂げなAメロ〜Bメロで、トータル4分19秒の楽曲の中でサビまで2分強かけてじっくりと世界観を編み上げ、《剥き出しで走る夕/歪なレール上を転がるように》というサビの躍動感を立体的かつ複層的に描ききっていく――。自らを自由闊達な音楽的進化の中へ解き放った3rdアルバム『ファンクラブ』の象徴的な楽曲だ。なお、「ライブで絶対再現できるものを」という想いから『ファンクラブ』ではオーバーダブを排し、複雑なアレンジを4つのパートで構築している。伊地知潔(Dr)はデビュー10周年(2013年)当時の取材で、「ギターが2本でしかやれない分、ドラムに求められることが多くて。結果として、ライブでの再現がもっと難しくなっちゃったんですよ、俺的に(笑)」と『ファンクラブ』当時を振り返っている。


⑥ 転がる岩、君に朝が降る

《出来れば世界を僕は塗り替えたい/戦争をなくすような大逸れたことじゃない/だけどちょっと それもあるよな》という途方もないロマンと《理由(わけ)もないのに何だか悲しい/泣けやしないから余計に救いがない/そんな夜を温めるように歌うんだ》という日常の現実を隔てる大きな河の両岸に手を差し伸べて、行き場のない僕らの情熱をロックの大平原へと導いてきたアジカンの核心そのもののような楽曲。『ファンクラブ』の音楽スパルタ進化劇を経て、その想いを衒いなく放射するストレートなアンサンブルとともに、彼らが響かせる「転がる岩」=「ロックンロール」の存在証明的ナンバーとして、今なお胸震わせる1曲だ。


⑦ 新世紀のラブソング

ハイブリッドな質感の冒頭のリズムアレンジや、《ほら 君の涙 始まれ21st/恵みの雨だ/僕たちの新世紀》というラインには、20世紀的な価値観を拭い去れずにいる時代の流れを断ち切って、新たな風景を自分たちの手で描き始めていこうとする決意が満ちあふれている。野球少年時代の追想も9.11後の世界の困惑もひとつのパースに盛り込んでみせるゴッチの筆致が冴え渡る1曲。その「目の前のものすべてを刷新する」という挑戦精神は『マジックディスク』の随所で鋭利な輝きを放っており、その視線はアジカン自身にも向けられている。《「繋いで」それだけを頼りに意気込んだ彼らの/屍 掻き集めるなら新しい何かを》と歌う“イエス”はそんな「アジカン殺し」の象徴でもある。


⑧ ソラニン

2013年9月、横浜スタジアム2Daysの1日目に行われた「ファン感謝祭」では人気投票で堂々1位に選ばれた“ソラニン”(ちなみに2位は“Re:Re:”、3位は“君という花”)は、浅野いにお原作の映画『ソラニン』のメインテーマであり、アジカン史上初めてメンバー以外による歌詞(浅野本人が作詞)を導入。2010年発売の『マジックディスク』の中では「extra track」という位置付けだった“ソラニン”を、当時の取材でゴッチ自身は「フラッシュバック00年代」と形容してくれていたが、00年代音楽シーンが生んだロックアイコン=アジカンが、00年代的な空気感を描いた漫画『ソラニン』とのコラボを通して、00年代という時代そのものを対象化し「その先」へ進むために必要不可欠な楽曲でありプロセスだった――と今振り返って改めて思う。


⑨ 踵で愛を打ち鳴らせ

アジカンのメインソングライター=ゴッチもまた、東日本大震災とその後の混沌とした状況に大きく影響を受けた表現者のひとりだが、日本の現状への問題提起は自らが発行する新聞『THE FUTURE TIMES』へと遠心分離し、アジカンの音楽はよりいっそうロックンロールとしての強靭な訴求力を獲得していくことになる。内面世界を掘って楽曲に昇華&共有していく00年代的な季節は終わった――そんな実感が、《オールウェイズ/夢のない街まで繰り出して》、《オールウェイズ/踵で愛を打ち鳴らそう》という弾むようなサビのフレーズからも滲んでくる。その独特のリズムパターンとともに、パワフルなビート感を前面に打ち出した『ランドマーク』期を代表する1曲でもあるが、キヨシは前述の取材で「でも、あれはPHONO TONESなんですよ(笑)。PHONO TONESのセッションで(中略)『これはアジカンで使える』っていう発明だったんで」と明かしている。


⑩ 荒野を歩け

『Wonder Future』(2015年)でのラウド&ダイレクトなロックンロール爆発モードと、その流れを受けて制作された『ソルファ』再レコーディング盤(2016年)での自己再検証作業を経て、湘南シリーズ一発録りアルバム『サーフ ブンガク カマクラ』(2008年)にも通じるパワーポップ感を獲得した最新シングル曲。可憐で酒豪で天真爛漫な「乙女」と、そんな彼女への想いゆえに凸凹悲喜劇を繰り広げる「先輩」の姿を描いたアニメーション映画『夜は短し歩けよ乙女』の主題歌として書き下ろされた曲ではあるが、《理由のない悲しみを/両膝に詰め込んで/荒野に独りで立って/あっちへ ふらふら また/ゆらゆらと歩むんだ》という言葉はそのまま、時代に翻弄されながらもふらふらゆらゆら前進するしかない僕らの姿と地続きのものだ。アジカンのロックはいつだって、僕らのすぐ隣で、未来を指し示しながら鳴り響いているのだ。
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