ある出来事の意味が、その次に起きたことによって変わってしまうことがある。7月5日に英国はバーミンガムにて開催された『Back to the Beginning』は、ブラック・サバスとオジー・オズボーンにとって有終の美を飾る歴史的な機会となり、その感動は全世界へと拡散された。しかし、それからわずか17日後に届けられたのは、他ならぬオジー自身の訃報だった。パーキンソン病の進行によりもはや自力での歩行や立ち上がることすら困難な状態にあった彼は、生涯最後となるライヴでも玉座に腰を下ろしたままパフォーマンスを披露していたが、そこでの気迫に満ちた表情と歌唱は、観る者の心を揺さぶらずにはおかないものだった。実のところ彼には複数回の引退宣言とその撤回を重ねてきた過去があるが、あのたたずまいに触れて「どうせまた何かしらやるんだろ?」などと軽口を叩くことのできる人間など皆無だったことだろう。しかしそこでオジーの演者としてのキャリアに終止符を打たれたばかりではなく、同じ月のうちに彼の生涯に幕が引かれてしまったのだ。
筆者は『Back to the Beginning』のストリーミング中継の一部始終を視聴したうえで「すべての出演者が生きているからこその感動」とでもいうべきものをおぼえた。あの一大イベントがオジーをはじめとするサバスのメンバーたち、さまざまな背景を持つ出演者たちのすべてが生きていて、同じ目的意識を持ち合わせていたからこそ成立し得たのだということの意義深さを痛感させられたのだ。もちろんオジーの他界によってその感動が薄れてしまうわけでは一切なく、むしろ彼があの瞬間を迎えられたこと自体が奇跡に近いのだと思い知らされる。ロッキングオン9月号では、これからも長きにわたり語り継がれるべきあの公演のレポートのみならず、それが実現に至った経緯を含むさまざまな現実が語られたインタビューをお届けする。そのインタビューの中ではオジー自身がみずからの理想とする「この先の人生の過ごし方」について発言していたりもするが、残念ながらそれももはや叶わなくなってしまった。改めて、哀悼の意を表したい。(増田勇一)
ブラック・サバス、『Back to the Beginning』の記事が掲載されるロッキング・オン9月号
