【インタビュー】変化の中で、本当の自分を歌う。ジャンルを越えた「LEX」という音楽──アルバム『Original』誕生の裏側を訊く

【インタビュー】変化の中で、本当の自分を歌う。ジャンルを越えた「LEX」という音楽──アルバム『Original』誕生の裏側を訊く
LEXは、2010年代後半以降の国内ラップミュージックを大きく更新したアーティストだ。10代半ばからSoundCloudを中心に楽曲を公開し、DIY的な活動で一気に頭角を現すと、そのスピードのままヒップホップシーンのトップへと駆け上がった。英語と日本語を自在に切り替える柔軟なフロウ、歌謡曲やロック、ダンスミュージックまでを呑み込むジャンル折衷感覚、どんな曲にも宿るポップで耳に残るフック、そしてZ世代的なスピード感で作られるソングライティング。そうした唯一無二のスタイルを持ちながら、感情をそのまま音に落とし込むような生々しさを併せ持つ点がLEXの稀有なところだろう。ファッションや恋愛、仲間への想い、孤独や不安まで、彼は私生活の延長線上にあるリアルなテーマを、飾らずに吐き出してきた。このたびリリースされたアルバム『Original』は、そんな彼の才能がヒップホップの枠をさらに押し広げ、大きく拡張された一作となっている。これはもはや、ジャンルを超越した作品だ。変化を続ける天才は今、どこへ向かおうとしているのか。彼の心の内を覗いてみた。

インタビュー=つやちゃん 撮影=SASU TEI


アルバムに収録されている全部の曲をひとりでやるって僕にしかできないし、僕だけのコンテンツ、僕だけのジャンルだと考えた時、これはオリジナルだなって

──初期から聴いてきたリスナーにとっては、今作はかなり驚くんじゃないでしょうか。サウンド的な変化もあって、すごく感慨深いというか、ついにLEXというアーティストがこんなところまで来たんだなとしみじみしちゃいました。

そうですよね。

──前作のアルバム『Logic 2』から約1年で、どういった心境の変化があったんですか?

今回、2曲目の“BABY”が完成したくらいから、アルバムの形が見えてきたんですよ。『Original』というアルバムタイトルは、元々頭の片隅にあって。やりたいアルバムの候補が自分の中に何個かあるんですけど、その中のひとつとして以前から頭の中にありました。


──想いとしては、今までのヒップホップ/ラップ中心のフェーズから、次のステップに行くという部分もあった?

ありますね。あとは、ラッパーとかアーティストとかいろんなジャンルの人がいると思うんですけど、このアルバムに収録されている全部の曲をひとりでやるって僕にしかできないし、僕だけのコンテンツ、僕だけのジャンルだと考えた時、これはオリジナルだなと思ったんです。

──これまでもロック調の曲などラップに限らないサウンドにも挑戦されていたと思うんですが、今回はバラードも増えて、その比率も高まったような印象もあります。これも最初から意図していた?

感覚的に手探りで作っているので、そこまでは計画的じゃなくて……なんか、歌の曲を作る機会が増えたのかなと思います。その日のバイブスで変わるんですよね。ヒップホップ作ったり、バラード作ったり。でも最近はバラードが増えてきた。

──何か心境の変化、環境の変化があったんですか?

生活の変化だと思います。東京に来たんですよ。それで、クルー(仲間のグループ)の海賊みたいなやつらから少し離れて、ちょっと心が清らかになったというか(笑)。生活が変わったのはめちゃくちゃ影響してると思います。東京に来て、ひとりの時間も増えた──元々ひとりで行動するのが好きではあるので。“億万長者”とか“ひとりぼっちの夜”は東京に出てきて作りましたね。

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──“億万長者”は、物質的なものが溢れる東京で、むしろ逆のことを歌っているのがとてもユニークで。これは東京に出てきたからこそ感じたことですか?

強く感じましたね。東京に来て、人も物も多くて、それで一時期ブレたこともあったけど。でも自分の心に、自分という人はどういう人間なのかを再確認した。

──先日も、Instagramのストーリーズに意味深な投稿をされてましたよね。自分の過去に対して……反省しているようなニュアンスの。

ああ、そういうのはありますね。思ったことをスッと投稿しちゃう癖があるんですよ。で、すぐ消すんですけど。でも証拠は残っちゃう(笑)。

──ああいうのを見ていると、今LEXというアーティストはすごく変化の時期にあるのかなと思います。

なんか……反省について考えていて……。反省って、子どもの時はすぐできたじゃないですか。怒られて、ごめんなさいみたいな。でも大人になると、すぐ反省できないんですよね。俺これだけ頑張ってるしとか、理由をつけてなかなか反省できない。でも、本当はもっと素直でいたいんです。そういう気持ちを書いたんだと思う。

──地元のクルーのみんなと離れたことは、歌詞にも影響しましたか?

影響はあります。心境の変化もあって、攻撃的な表現は少し削ぎ落とされた気がします。元々そんな人間じゃないんですけど、より削がれたと思う。なんか、クルーってやっぱりみんなで同じ船に乗ってる感じだったんですよ。海賊みたいに。でも自分は元々わりと大人しめで、みんな仲良くしようよってタイプだったし。それが東京に出てきて、より明確になった感じかな。

──そもそも、なぜクルーと離れてひとりで東京に出てきたんですか?

なんでですかね? 流れ着いたって感じ。仲間は好きだし、今も繋がりはあります。でも、たぶん単純に東京で挑戦してみたかったんだと思う。

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“億万長者”は『ポカホンタス』を観たあとに作った曲で。アメリカの先住民たちが、他の国に自然を壊されていく話を観たあと、なぜか“億万長者”ができた


──今作ではサウンドが多岐にわたってますけど、作り方自体は変わったんでしょうか。弾き語りっぽい曲もありますが、基本はDTMで作るというのは変わっていない?

変わらないですね。朝、水風呂に入って、部屋でトラック流して、部屋の中を歩きながら鼻歌から始める。バラードも、ヒップホップ的な作り方をしてます。

──ラップと歌は、どういう理由で使い分けている?

たぶん、気分だと思います。ピリついてる日はヒップホップが作りたくなる。でも、最近はずっと歌ってるな。レコーディング前日から気分を作っていく感じですね。

──先行曲の“ALONE”が出た時、次のアルバムのモードが見えた気がしたんですよ。これは東京で書いた曲ですよね?

そうです。この曲は、ちょっと作り方が違ってて。歌詞は書かずに、メロディラインだけ先に決めて、曲が完成してから歌詞を書いた。最後の2曲、“億万長者”と“ひとりぼっちの夜”もそう。で、“億万長者”は『ポカホンタス』を観たあとに作った曲なんです。アメリカの先住民たちが、他の国に自然を壊されていく話じゃないですか。あれを観たあと、なぜか“億万長者”ができた。ちょっと、繋がりが意味わからないかもしれないですけど(笑)。


──今作からは、甲本ヒロトや尾崎豊みたいなエモーションを剥き出しにするタイプのアーティストに近いニュアンスも感じて。東京へ来て、聴く音楽も変わったんですか?

ずっと70〜90年代の音楽ばかり聴いてますね。ジャンルでいうと、ポップになるのかな。最近はポリスを聴いてます。MVも面白いんですよ。

──ポリスは意外ですね! 現行のUSヒップホップは?

最近は、そんなに聴いてなくて。

──トラヴィス・スコットの来日ライブには行かれてましたね。

そうそう。ああいう夜の時間帯はいいんですよ。聴くと元気になる。でも、朝からヒップホップは、ちょっと気持ち的にも合わないから。

──今作は、日本語がすごく剥き出しで、丸裸の言葉が並んでいます。そういったところは、日本語の曲からの影響もあるのかなと思ったんですが。

ああ、そうだ、最近は安部勇磨さん(never young beach)の“おかしなことばかり”を聴いてます。起きてすぐ聴く。メロディラインが本当によくてね(と言って曲を流す)。

──なんだか、LEXの新曲と言われても違和感がない感じがしますね(笑)。

自分でもそう思います。メロディの感じが好きなんですよ。

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