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人と人が、それぞれの人生を持ち寄って、恋に落ちる。その瞬間の高揚感、確かさと不確かさ――それらが3分少々という時間の中に、見事に閉じ込められている。語りすぎることはなく、感情的になりすぎることもなく、それでも、流れゆく時間と共に動き続ける人の心の在りようが、この曲には捉えられている。止まることのない時計の針とか、他人という存在とか、自分にはコントロールし切れないものに翻弄されながら、その無力さと共に、それでもホタルのように命を発光させ続ける人間の姿が描かれている。マッチングアプリ「Pairs」のWEB CM挿入歌として書き下ろされた1曲。全景としては“憂、燦々”などにも通じる爽やかでポップなサマーソングだが、それをバンドサウンドのダイナミズムだけでなく、様々な音が入れ代わり立ち代わり現れては消えていく、鮮やかかつ摩訶不思議なサウンドデザインで魅せている新機軸。その緻密な音の意匠が、夏の熱狂に清涼感のある風を吹き込ませる。(天野史彬)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年8月号より抜粋)
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