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back numberのシングルといえば、ここ数年は文字通り1曲入魂、ずしっと重みのある曲が多かったが、それとは明らかに毛色が違う新曲が急にやってきた。メロディの作り込みといい、ホーンもストリングスも全開の広がりのある音像といい、そしてモチーフを巧みに操りながら決して外には出せない感情を爆発させる歌詞といい、どれもが彼らにしか作れないバランスで成立していて、ニヤリとさせられるのに同時に胸の奥を締めつけられるような、なんともいえない余韻を残してくれる。にしてもこの感じ、つまりジトッとした後悔やら優柔不断やらを逆噴射的にポップに煌めかせてしまうback number一流の作法をシングルで投下するのは、下手したら“高嶺の花子さん”以来じゃないだろうか。それはどういうことなのか。メロディがガラッと変わるDメロのところに、なぜ清水依与吏が今これを生み出したのかという理由の一端が見える気がする。今も彼の中には「怪獣」がいて、しかもそいつは巨大化し続けているのだ。(小川智宏)(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年9月号より抜粋)
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