静寂に包まれた深夜の編集部でこのベスト盤を聴いていると、思わず「じゅんやとまなぁみ～」「しゅんかしゅーとー」と拳を突き上げて歌いたくなる。で、この「拳」こそが、彼らの音楽のすべてだと言っていい。メロウなトラックでも、パワフルなアッパーチューンでも、ヒルクライムは常にエモいポイントを入れてくる。ただし、この拳は暴力的に振り下ろされることがない。ここが重要だ。小賢しいアホを黙らせるための拳ではなく、あくまでおのれを奮い立たせるための拳。その攻撃性が他者を決して傷つけないからこそ、ヒルクライムの曲はポップミュージックとして闘えるのだ。

シングルA面を中心にまとめた『GOLD』と、すべてのカップリング曲を収録した『SILVER』。同発される2枚を対比して聴くと、このユニットのスタンスが明確に浮かび上がってくるが、盤として分かれていても、この2枚はコインの裏表のようなものだ。どちらかが欠けるとヒルクライムではない、どちらかが過剰だとヒルクライムではない。このバランスが正常に保たれている間は、彼らはきっと大丈夫だ。（徳山弘基）

※ジャケット写真は『Best of Hilcrhyme ～GOLD～』