1999年に結成し、活動休止を経て2014年に完全復活を遂げたPsycho le Cému。デビュー当時から続く奇抜なヴィジュアルと衣装ごとに変わるコンセプト、さらにはバンドという形態を超えて演劇やダンスを取り入れたライブは、今なお唯一無二の存在感とクオリティを誇る。
カラフルな世界観とポップなメロディで夢を描きつつ、一方では激しくシャウトしオーディエンスを煽る生身のロックも魅力である彼らが、まさしくその両面をフィーチャーしたニューアルバム『Light and Shadow』をリリースした。アルバムに先駆けて公開された、バンド史上初・黒で統一した新ヴィジュアルが示すものとは? そしてなぜPsycho le Cémuは、常にサプライズを仕掛けてファンを驚かせ、楽しませるエンターテインメントを貫くのか? フロントマン・DAISHI(Vo)に語ってもらった。
インタビュー=後藤寛子
ダークな衣装でやるにあたって、かっこいい曲ほしいな、曲書いてきてねって言ったら、みんな結構ごっそり書いてきたんです
――前作『NOW AND THEN 〜THE WORLD〜』は新曲とともに過去曲の再録も入っていたので、今回の『Light and Shadow』は復活後初の完全オリジナルフルアルバムになりますね。復活後はカラフルで明るい面が続いていたので、ダークなヴィジュアルとか、ヘヴィな路線って久しぶりなのかなと思ったんですが。
「そうですね。復活してからは外に向けてとか、もっとPsycho le Cémuを知ってもらう時にわかりやすくってところが強かったと思うんですけど。今回に関しては、よりコアな、今僕たちを応援してくれてる人たちがドンズバでいいなって思ってもらえるところも意識しながら」
――こういうの待ってた!っていう人も多いと思います。
「そう思っていただけるとすごい嬉しいです。もともとインディーズの頃とか、メジャーデビューしてからも、アルバムではわりと激しめだったりマイナー調の曲もやってたんですけど、ここまで押し出したのは初めてかなという……なんかヴィジュアル系シーンでやらせていただいてるのに、やっぱちょっと、普通のバンドとも違うんで(笑)。Psycho le Cémuが本気でヴィジュアル系やったらっていうとこがテーマでやらせていただきました。でも、やっぱ僕らっぽいものになったなって印象ですけど」
――アルバムのコンセプトはどういう感じで始まっていったんですか?
「去年『Doppelganger (〜Next Generations〜)』ってツアーで、学生服ともうひとつの派手な衣装の自分たちが出てくるってテーマでやってたんですけど、そのファイナルの豊洲PITで、僕たちの敵である『ゲルニカ団』っていう……メンバーが悪役にまわるっていうのを、1曲だけ今回の格好でやったんですよ」
――アーティスト写真の黒い衣装ですよね。
「そうです。で、曲終わったあと、そのアー写をドン!って出したら、お客さんが――復活の時より大きかったんじゃないかなっていうくらいの歓声があがり(笑)。サプライズ的なものを大事にしてると、ちゃんと反応があるんだなって思って。で、そこからこのダークな衣装でやるにあたって、かっこいい曲ほしいな、曲書いてきてねって言ったら、みんな結構ごっそり書いてきたんです(笑)。やっぱメジャー行くと――誰かに言われてるわけじゃないですけど、シングルっぽい曲を中心に書いてきてたからか、解き放たれたように。でも、昔やったら、やっぱり激しい曲にするとリフとか雰囲気はかっこいいけどちょっとメロに弱さが出ちゃったり、とかあったんですけど。今回はサビもちゃんと突き抜けるように、それでダークなのを書けるようになったんだなって。やっぱりメロディはすごく大事にしてるんで」
黒着るとやっぱ『ちょっとええやん』って――『めっちゃええやん』ってなりますよね(笑)
――じゃあこの衣装からすべてが始まったんですね。
「そのライブの時はアルバムになるとかも決まってなかったんですけどね。『Light』方面な曲は、ずっと曲出しはしてるんで、溜めてた曲から出して。だから今回書き下ろしたのは『Shadow』な部分って感じです」
――“Revenger -暗闇の復讐者-”“哀しき獣”“絶望のゲルニカ”あたりですか?
「そうです、そうです」
――前作で過去の曲も入れつつアルバムを出して、これがPsycho le Cémuだぞっていうことを提示したことで、次に向かえるって気持ちもあったんですかね。
「そうですね。次は進化したPsycho le Cémuが出せたらなって……やっぱ攻めたいなっていうところで。過去だったら、“Revenger~”っていう曲を1曲目に持っていけるほどキャパシティーは広くなかったかもしれないです。今でこそですね」
――今回、セルフプロデュースと、岡野ハジメさん、Yamamoto Yohskeさん、ゆよゆっぺさんと、プロデューサーもさまざまですよね。
「まずセルフもやりたいっていうのもありつつ、新しい人ともやりたいなっていうのが、最初の段階で出てたと思います。あと、昔からやっていただいてる岡野さんと」
――書き下ろしたダークな曲の“Revenger -暗闇の復讐者-”“絶望のゲルニカ”はゆよゆっぺさんがプロデュースということですけど、初めてですよね。おもしろい組み合わせだなあと。
「初めてでした。ノリが若いんですよ、レコーディング中(笑)。『僕、“聖〜excalibur〜剣”めっちゃ聴いてました!』とか、きゃぴきゃぴしてるんですよね。歌録りもおもしろかったです。『今はもうピッチ気にしないで下さい!』とか、『ここはもういっちゃいましょう!』みたいな感じで、ほんとにノリよく録れました」
――“哀しき獣”はセルフプロデュースで。
「はい。嬉しそうでしたよ、ギターのLidaくんはもうこんな楽曲大好きですからね。暇あったらメタリカのDVD見てますからね(笑)。ギターはやっぱあれぐらい弾きたいんじゃないですか」
――私のメモにも「ギターソロがかっこいい」って書いてます(笑)。
「喜ぶと思います(笑)」
――そういうダークな部分も打ち出しつつ、キラキラでポップなシングル“STAR TRAIN”もありますし、本当にいろんな曲が入ってますが、1枚のフルアルバムとして聴いてみていかがですか。
「最初に“Revenger~”が来たあと、2曲目“妄想グラフィティー”、3曲目“STAR TRAIN”っていうキャッチーな曲がくる感じが良かったなと。“妄想グラフィティー”が、僕個人的には頭2個くらい抜けてるんじゃないかなって思ってて。だからこれが『Light』の代表曲で、『Shadow』の代表曲が“Revenger~”って感じですね。あと、いつものダンス曲というか、楽器を持たずにやってる曲が“JUNGLE×JUNGLE”っていう」
――確かに、聴いていてきっとこれは振付があるんだろうなと思ってました。
「ふふふ。ドラムのYURAサマがエアロビのインストラクターの資格をちゃんと持ってるんで。クオリティあがったのはいいんですけど、振付が難しいんですよ(笑)。すごい猛練習しても、ツアーでやっぱ失敗してました。今やっと……くらいです(笑)」
――で、きっかけになったという衣装についてもお伺いしたいんですが。DAISHIさんは今回は手が……。
「これ男の子なら誰もが1回はめてみたいやつですよ。うちのメンバーもやっぱりはめました、楽屋で(笑)。男の子心をくすぐるっていうね」
――こだわりポイントってありますか?
「とにかく衣装が黒ってことですよね(笑)。僕ら黒はNGなんで、基本は。黒い衣装着てるメンバーがいないバンドを作ろうっていうのがもとのコンセプトだったんで。でもやはり、少年時代はX(JAPAN)さんだったりD'ERLANGERさん、BUCK-TICKさん、LUNA SEAさんとかに憧れてやってますから。黒着るとやっぱ『ちょっとええやん』って――『めっちゃええやん』ってなりますよね(笑)。だから当時僕らが憧れた、黒い衣装を着ているヴィジュアル系をサイコがやったらって。今ならライブでもしっかり見せれるんじゃないかなとか」
――今だからこそなんですね。
「だからこの『Light and Shadow』が合体したような、進化したPsycho le Cémuになればいいなっていうのが、次の課題だと思いますね。この二面性を、ひとつのライブで見せれるようになれればなとは思ってます」
お芝居とか変なことしなくても、ライブ1本2時間半とかを見せれるようになったっていう意味での進化はできた
――今まさにこの衣装でのツアー中ですが。まずライブが先にあって、アルバムが出るのがツアーファイナルの直前(5月9日)っていうのはこだわりだったんですか?
「1回、曲を配信で出しながらツアーを回るっていうのをやってみようってアイディアがあって。MVも途中から公開して、小出しにしていきながら、ツアーでどんどんアルバムのフルに近づいていくっていう感じに」
――新しい試みですよね。ツアー前半のお客さんとかだと、何もない状態だったわけで。
「そうですそうです。逆に言ったら新曲をライブで聴けるってことですね」
――それってメンバー的にも緊張感ありますよね。
「めちゃくちゃあります(笑)。今回6パターン作ったんですよ。セットリストとお芝居と。初めてじゃないですかね、6パターンもツアーで作ったのは。むちゃくちゃになりますよ(笑)」
――ツアータイトルが『Doppelganger ~ゲルニカ団 漆黒の48時間~ ~PLC学園 最期の48時間~』となっていて、1日目がこの黒い衣装のゲルニカ団、2日目に、カラフルなドッペルゲンガーっていう2パターンが発表されてて。さらに事前にツイッターで「正義 or 悪」のお題に対して投票してもらって、毎回お芝居の結末が変わるんですよね。
「そうなんですよ。ドッペルゲンガーの正義が勝った時は、アンコールで青いPLC学園の学生服で登場するんですけど、ダークサイドが勝ってしまった場合は、血糊のついた黒い学生服で、ちょっと濃いメイクで出てくるっていう。それを見たさに、行くライブ増やそうかなって人もいてくれたり(笑)。結構ダークサイド落ちが少ないんですけど……たまたまなんでしょうけど、『私ダークサイド落ちしかあたってないから、正義バージョンが見たい』とか(笑)」
――お芝居の結末が変わってくるって初めてですよね。
「そうですね。それと、逆にお芝居何もしなくて、ずっとかっこつけてるライブも初めてでしたね。ダークなほうは、お芝居なし、本編MCなし、ほぼシングル曲なしで。結構挑戦やったんですけど、強みになりましたよ。お芝居とか変なことしなくても、ライブ1本2時間半とかを見せれるようになったっていう意味での進化はできたと思います。だからリハーサルすげえ短いっすよ(笑)。演劇の部分とダンス曲も少ないですし、決めごとがないんで。でも成長しますね。みんな気合い入ってますよ」
――このゲルニカ団のキャラクター設定ってあるんですか?
「それがファイナルの豊洲PITでわかるんですよ。ふたつがガチャンと一緒になって、ちゃんと完結するように考えていて。気持ち良い感じにはなるかと思います」
幼馴染でずっとやってるんですけど、もうわいわい、ほんとに小学生ですよ(笑)
――楽しみですね! 思えばPsycho le Cémuが復活する時、もしかしたら衣装とかシンプルになって復活する可能性もあるのかなと思ってたんですよ。でもやっぱり5人がこういう衣装で、今も遊び心を忘れてないというか、仕掛けとか、ライブも作り込んでやってくれるのはさすがですよね。
「……それしか怖くてできないっていう(笑)。いきなりライダースにジーパンでとか、僕ら怖くてできないです。ライブのサプライズも、ファンの期待との闘いですね。そういう恋愛する男の方いるじゃないですか。ああいうのに陥ってますよ。自信がないんでしょうね(笑)」
――飽きさせないようにと(笑)。
「休止してる間はヴィジュアル系シーンに全然いなかったんで、最初勉強するところから始めましたし。初めてゴールデンボンバーさんを見た時は、『それがあったかー!』と思いましたよね(笑)。僕ら、ドラマーがドラムセットから出てきて前で踊るとか、楽器持たないっていうのも新しいこと発見できたなって思ってましたけど、そのままエアーバンドでいっちゃうんや!みたいな(笑)」
――今も昔もサイコのスタイルはオリジナルだと思いますよ。
「先日フランスの『Japan Expo Paris』に出させていただいた時、休止前にアメリカツアー回ってた時と近しき反応が返ってきたのは、時代関係なくおもしろいのかなとは思いましたね。Psycho le CémuのあとにMAN WITH A MISSIONさんでしたからね。どっちも盛り上がってくれてて」
――日本でも、最近は若いお客さんとか、曲は知ってたけどライブを見るのは初めての人とかも多いんじゃないですか?
「多いと思いますね。昔『コロッケ!』ってアニメの主題歌を、『サイコロ コロッケ』って名義でやってたんですけど、その世代の子らが来てくれてるんですよ。年月感じますけど(笑)。あとクレヨンしんちゃんが『ごめんなサイコルシェイム』とか『おやすみなサイコルシェイム』って言ってくれてるって――作者の方が好きだったみたいで。それをあとから知ったんですけど、友達の姪っ子とかに『しんちゃんがバンド名言ってるで』って言われて『なんのこと?』って(笑)」
――(笑)。いろんなところで広がってるんですね。これからもこのスタイルで突き進んでくと思うんですけど、この先やってみたいこととかありますか?
「今メンバーで喋ってるのは、ここからさらに同じことを繰り返すっていうよりは、もうちょっと突き詰めていって――海外の映画っぽい感じのニュアンスとかやってみたいなって話はしてます。まあ、60くらいでこの衣装とか、ちょっとおもしろいと思うんですよね(笑)」
――そこまでやり続けるぞと。
「もうあと1周くらいなんで(笑)。でもすごく楽しくツアーやらせていただいてますし、5人集まったらもうアイディアの出し合いばっかりなんで」
――その空気感っていうのは昔から変わらず?
「ちょっと仲悪いほうが、バンドってぴりぴリしててかっこいいじゃないですか? そのかっこよさがないですね、僕ら。幼馴染でずっとやってるんですけど、もうわいわい、ほんとに小学生ですよ(笑)。武道館っていう目標をひとつ立ててるんですけど、それもありつつ、もう一度ライブひとつひとつ噛みしめながら、楽しみながらやれてるって感じですね」
――では、ひとまずの集大成となる豊洲PITに期待ですね。
「長いライブになりますんで(笑)。楽しみにしてて下さい」
MV
「Revenger -暗闇の復讐者-」 Music Videoアルバム全曲試聴トレイラー
リリース情報
『Light and Shadow』2018年5月9日(水)発売
【豪華盤】(CD+DVD Type A+フォトブック+グッズ(特製三方背BOX仕様)) 15,000円(税込) WPZL-31426/7
特製三方背BOX仕様
32Pフォトブック
オリジナルロングTシャツ(フリーサイズ:Mサイズ相当)
DVD Type A
- Psycho le Cému 15th Anniversary Live<TOKYO PARALLEL WORLD ~はじまりの奇跡~>完全版
- Psycho le Cému 渋谷公会堂 追加公演 「復活!理想郷旅行」(2002.5.11)秘蔵映像
- 「妄想グラフィティー」Music Video & Making Video
【初回限定盤】(CD+DVD Type B) 5,000円(税込) WPZL-31424/5
DVD Type B
- Music Video集(2015年の復活後の全作品)
- 「Revenger - 暗闇の復讐者 -」 Music Video & Making Video
【通常盤】(CDのみ) 3,000円(税込) WPCL-12849
1. Revenger-暗闇の復讐者-
2. 妄想グラフィティー
3. STAR TRAIN
4. JUNGLE×JUNGLE
5. 哀しき獣
6. 絶望のゲルニカ
7. 命のファンファーレ
8. SILENT SHADOW
9. ファイティング!
10. 大空を目指すあの花のように
ライブ情報
「TOUR 2018 Doppelganger~ゲルニカ団 漆黒の48時間~ ~PLC学園 最期の48時間~」3月3日(土)柏PALOOZA
3月4日(日)柏PALOOZA
3月10日(土)HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3
3月11日(日)HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3
3月17日(土)福岡DRUM Be-1
3月18日(日)福岡DRUM Be-1
3月20日(火)岡山IMAGE
3月21日(水)岡山IMAGE
3月24日(土)KYOTO MUSE
3月25日(日)KYOTO MUSE
4月7日(土)名古屋ELL
4月8日(日)名古屋ELL
4月14日(土)梅田クラブクアトロ
4月15日(日)梅田クラブクアトロ
4月21日(土)新横浜NEW SIDE BEACH!!
4月22日(日)新横浜NEW SIDE BEACH!!
4月28日(土)札幌cube garden
4月29日(日)札幌cube garden
5月2日(水)盛岡change WAVE
5月3日(木)盛岡change WAVE
5月5日(土)仙台darwin
5月6日(日)仙台darwin
<ツアーファイナル>
5月12日(土)豊洲PIT 第一部
OPEN 11:30/START 12:30
5月12日(土)豊洲PIT 第二部
OPEN 17:00/START 18:00
提供:SWEET-HEART / ワーナーミュージック・ジャパン
企画・制作:ROCKIN’ON JAPAN編集部