KREVA曰く「選曲がストレートだけど、内角ギリギリのストレート、バットが全然届かないストレート、ど真ん中でゆっくりなストレートもある」という今回のステージは、さすがにただアニヴァーサリーを祝うだけの内容にはならない。今回も、リリースのたびに、ライヴのたびに新たな挑戦を繰り返し、そのすべてを一流エンターテインメントへと仕立て上げて来たKREVAらしいパフォーマンスが待ち受けていた。アップリフティングな中にもファンにしっかりと語りかける目下の最新シングル曲“トランキライザー”でスタートした本編は、続く“挑め”が熱い間の手を引き受けたところで恒例、サングラスを外すKREVAの流し目ポーズへ。「まずー。そっから30センチ近くに来ようが、15メートル離れようが、俺は変わらずカッコいいから!」と、序盤から異様な熱を孕んでしまったフロアの安全にも気を配ってみせる。
そして《似たような経験すら 過去に無い》《レースみたいに金、銀、銅メダル/わかりやすくない》。そんなリリックを持つ“BESHI”が「俺の歩み」で「みんながいないと成り立たない」と語られてからプレイされる。誰も見たことがない景色、誰も伝えたことがない心情を歌おうとするKREVAの道程は、いつでも孤独な創造の苦しみと隣り合わせで、だからこそファンの支えを必要としているのだと感じられた。「ラップの次には、俺のDJ的な面白さを観て欲しい」と語り、今度はセンチメンタルな表情を覗かせる楽曲の数々を披露してゆく。“王者の休日”が“ビコーズ”へとシームレスに連なり、一瞬ブレイクしたかと思えば“今夜はブギー・バック”のカヴァーが挿入される。再び“ビコーズ”へと舞い戻ると今度は“I Wanna Know You”が溢れ出し、挙げ句の果てには上記の楽曲群が入れ替わり立ち替わりでフレーズを覗かせるという、所謂DJミックス的なプレイを半生バンドがアクロバティックな演奏で繰り広げるのだった。こちらもライヴならでは秀逸なパフォーマンスだ。
そして、10年前のKREVAがソロ・アーティストとしての表現を初めて世に伝えることになった、インディーズ/限定リリースのシングル曲“希望の炎”。ライヴで聴くたびに、KREVAのヴォーカリストとしての成長をありありと伝えてグッとさせられるが、今回も半生バンドのアレンジに支えられた大名演だ。そこから飽くなき前傾姿勢をオーディエンスと分かち合う“アグレッシ部”、本編ラストにはメジャー・デビュー・シングルの“音色”を配置する。プリズムのように浮かび上がるレーザーの演出も美しく、「こう、グワーっと昇って行こうとする気持ちを押さえて、横に広げる感じ。みんなで熱くなりたい」とジェスチャーを交えてKREVAが伝えようとしていた終盤のヴァイブは、しっかりと一面のオーディエンスに染み渡っていたのではないだろうか。
十年一日の如く振り返るには余りにも濃密、だからこそあの手この手を尽くして伝えようとする、アニヴァーサリーにして変わらずチャレンジングな、胸熱のステージであった。なお、KREVAは8/3(日)に、「ROCK IN JAPAN FES. 2014」のGRASS STAGEにも登場予定。思えば、彼が初めてソロの舞台として挑んだのが、「ROCK IN JAPAN 2004」のGRASS STAGEであった。あれから丁度10周年の感慨深いステージである。さらに、その前日8/2(土)には、KICK THE CAN CREWとしてGRASS STAGEのトリを務める。スペシャルな舞台が続くが、ぜひ楽しみにしていて欲しい。(小池宏和)
■セットリスト
01.トランキライザー
02.挑め
03.基準
04.ストロングスタイル
05.成功
06.PROPS KREVA Brend Mix
07.BESHI
08.王者の休日
09.ビコーズ~今夜はブギー・バック~ビコーズ
10.I Wanna Know You
11.かも
12.Na Na Na
13.KILA KILA
14.OH YEAH
15.イッサイガッサイ
16.Have a nice day!
17.希望の炎
18.アグレッシ部
19.音色
(encore)
01.全速力 feat. 三浦大知
02.Revolution