KREVA@Zepp DiverCity TOKYO

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ステージの幕が開くと同時に、岡雄三(B)、熊井吾郎(MPC)、菱山正太(Key)、白根佳尚(Dr)という顔ぶれによる「半生バンド」の華々しい音出し、そしてその中央には極彩色のセットアップを身に纏い、大量のスモークとバックライトに包まれて佇む一人の男。ソロ・デビュー10周年のベスト盤『KX』を携え、6/18の大阪から全国10公演のスケジュールで繰り広げられて来た「KREVA ライブハウスツアー2014『K10』」。クライマックスはZepp DiverCity TOKYOの2デイズである。2日目ファイナルの舞台にも、オーディエンスとの緊密な距離感の中でアニヴァーサリーを交歓し、事務所スタッフやレーベル、家族、多くのファンに感謝の言葉を伝えるKREVAの姿があった。

KREVA曰く「選曲がストレートだけど、内角ギリギリのストレート、バットが全然届かないストレート、ど真ん中でゆっくりなストレートもある」という今回のステージは、さすがにただアニヴァーサリーを祝うだけの内容にはならない。今回も、リリースのたびに、ライヴのたびに新たな挑戦を繰り返し、そのすべてを一流エンターテインメントへと仕立て上げて来たKREVAらしいパフォーマンスが待ち受けていた。アップリフティングな中にもファンにしっかりと語りかける目下の最新シングル曲“トランキライザー”でスタートした本編は、続く“挑め”が熱い間の手を引き受けたところで恒例、サングラスを外すKREVAの流し目ポーズへ。「まずー。そっから30センチ近くに来ようが、15メートル離れようが、俺は変わらずカッコいいから!」と、序盤から異様な熱を孕んでしまったフロアの安全にも気を配ってみせる。

KREVA@Zepp DiverCity TOKYO
「初めてのやつも、いつも来てくれてるやつも、誰一人置いて行かないから!」「今日はK10のK点。俺の『基準』、見せてやるぜ!」と告げて、引き続きアドレナリンだだ漏れのラップ・チューンをガンガン投入してゆく。キーボードの秀逸な美メロがなびく中、“成功”の《胴上げ》《超やべー!》の押韻がオーディエンスに預けられる光景は、KREVAとファンが築き上げて来た共闘関係・信頼関係を象徴していた。ここでカラフルなジャケットを脱ぎ捨てたKREVAは「鬼になっていいですか? ラップの鬼になっていいですか?」と、“PROPS”のトラックとフックに他の楽曲のヴァースを次々放り込んで来るという大技を披露。“THE SHOW”→“国民的行事”→“I REP”→“ひとりじゃないのよ”→“Shock”→“PROPS”とリリックを繋ぎ合わせ、アーティスト活動の紆余曲折をストーリー仕立てにしてしまう一幕だ。通常盤30曲収録の『KX』でさえ零れ落ちてしまうKREVA史を、技術と知性で補うパフォーマンスである。

そして《似たような経験すら 過去に無い》《レースみたいに金、銀、銅メダル/わかりやすくない》。そんなリリックを持つ“BESHI”が「俺の歩み」で「みんながいないと成り立たない」と語られてからプレイされる。誰も見たことがない景色、誰も伝えたことがない心情を歌おうとするKREVAの道程は、いつでも孤独な創造の苦しみと隣り合わせで、だからこそファンの支えを必要としているのだと感じられた。「ラップの次には、俺のDJ的な面白さを観て欲しい」と語り、今度はセンチメンタルな表情を覗かせる楽曲の数々を披露してゆく。“王者の休日”が“ビコーズ”へとシームレスに連なり、一瞬ブレイクしたかと思えば“今夜はブギー・バック”のカヴァーが挿入される。再び“ビコーズ”へと舞い戻ると今度は“I Wanna Know You”が溢れ出し、挙げ句の果てには上記の楽曲群が入れ替わり立ち替わりでフレーズを覗かせるという、所謂DJミックス的なプレイを半生バンドがアクロバティックな演奏で繰り広げるのだった。こちらもライヴならでは秀逸なパフォーマンスだ。

KREVA@Zepp DiverCity TOKYO
「いろいろインタヴューとか受けて、振り返ってみてどうですかって訊かれるんだけど、《振り返るよりも 塗り替える》(“BESHI”)って歌ってるじゃんねえ。ターニング・ポイントはどこですかって訊かれても、グループやってた人がソロになったんだから、そこが最大のターニング・ポイントでしょ。でも、この作品がターニング・ポイントかな」と披露されたのは、“かも”だ。そして「10年の戦いで、どんなアウェーの現場でもイケた曲」という“Na Na Na”や、「この10年には、日本でも大変なことがあったでしょ。俺も、音楽やってる場合じゃないんじゃないかなって落ち込んでたんだけど、人に頑張れって言うより、自分が頑張ってるところを伝えようと思ったら、この曲が出来ました」と語った“KILA KILA”と、活動の節目になった楽曲群にも説明を添えてプレイしてくれる。そこから、コール&レスポンスでオーディエンスの声をきっちり引き出しての「季節を先取り」なサマー・アンセム連打は、さすがの沸騰ぶりを描き出してしまった。

そして、10年前のKREVAがソロ・アーティストとしての表現を初めて世に伝えることになった、インディーズ/限定リリースのシングル曲“希望の炎”。ライヴで聴くたびに、KREVAのヴォーカリストとしての成長をありありと伝えてグッとさせられるが、今回も半生バンドのアレンジに支えられた大名演だ。そこから飽くなき前傾姿勢をオーディエンスと分かち合う“アグレッシ部”、本編ラストにはメジャー・デビュー・シングルの“音色”を配置する。プリズムのように浮かび上がるレーザーの演出も美しく、「こう、グワーっと昇って行こうとする気持ちを押さえて、横に広げる感じ。みんなで熱くなりたい」とジェスチャーを交えてKREVAが伝えようとしていた終盤のヴァイブは、しっかりと一面のオーディエンスに染み渡っていたのではないだろうか。

KREVA@Zepp DiverCity TOKYO
じっくりと熱くなれる感動的な本編クライマックスではあったが、これでは終わらない。閉じていたステージの幕が再び開くなり、立ち上がるのは新曲“全速力”のイントロだ。ファンの反応はさすがに鋭い。KREVAと並んで「K」サインを繰り出しながらそこに待ち受けていたのは、今回のツアーで3度目のゲスト出演を果たしてくれた三浦大知である。その伸びやかな歌声をフィーチャーし、二人して思いっきりステージ上を跳ね回りながらのヴォルテージ高いパフォーマンスでこの曲を駆け抜けると、彼は「皆さんが羨ましくて。そっちで観たい」と言葉を残して、大歓声を浴びながら見送られるのだった。KREVAは文頭で触れたようにあらためて感謝の言葉を投げ掛け、「908 FESTIVAL 2014」(9/7・9/8 @日本武道館)について「(出演者を)発表したら、ちびんじゃねえぞ」と自信満々に語ると(一方、8/28の「908 FESTIVAL in OSAKA」には、既にAKLOと三浦大知の参加が決定)、もうひとつの新曲“Revolution”を披露し、今回のステージは大団円を迎える。

十年一日の如く振り返るには余りにも濃密、だからこそあの手この手を尽くして伝えようとする、アニヴァーサリーにして変わらずチャレンジングな、胸熱のステージであった。なお、KREVAは8/3(日)に、「ROCK IN JAPAN FES. 2014」のGRASS STAGEにも登場予定。思えば、彼が初めてソロの舞台として挑んだのが、「ROCK IN JAPAN 2004」のGRASS STAGEであった。あれから丁度10周年の感慨深いステージである。さらに、その前日8/2(土)には、KICK THE CAN CREWとしてGRASS STAGEのトリを務める。スペシャルな舞台が続くが、ぜひ楽しみにしていて欲しい。(小池宏和)

■セットリスト

01.トランキライザー
02.挑め
03.基準
04.ストロングスタイル
05.成功
06.PROPS KREVA Brend Mix
07.BESHI
08.王者の休日
09.ビコーズ~今夜はブギー・バック~ビコーズ
10.I Wanna Know You
11.かも
12.Na Na Na
13.KILA KILA
14.OH YEAH
15.イッサイガッサイ
16.Have a nice day!
17.希望の炎
18.アグレッシ部
19.音色

(encore)
01.全速力 feat. 三浦大知
02.Revolution
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