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大森靖子@中野サンプラザ

片時も目を離せない、凄絶で美しい約2時間半だった。沖縄(4/29)での特別公演も残されているが、2014年にメジャーデビューを果たして以降、初となるワンマンツアー「♥︎爆裂!ナナちゃんとイくラブラブ洗脳ツアー♥︎」のファイナル。清濁入り乱れた剥き出しの人間性を浴びせ続け、その上で触れる者の魂に確かな浄化をもたらす。そんな大森靖子は、今後さらに多くの人々と深く関わっていくことを予期させてやまなかった。
大森靖子@中野サンプラザ
ステージの緞帳には、バックライトを浴びた大森靖子のシルエットが浮かび上がる。幕が開くと、彼女の背後には巨大な切り株のセット。その上には可愛らしいぬいぐるみが鎮座していた(「大森なので、大きな森にしてみました」とのこと)。“PINK”を皮切りに、まずは彼女のベーシックスタイルであるフォーキーな弾き語りが、それも牧歌的な「フォーキー」とは正反対の、抜き身の刃のように身軽で鋭く、フォークがレベルミュージックだったことを思い出させるように繰り広げられる。今にも壊れそうな、危ういヴィブラートに緊迫感を宿す一方、“デートはやめよう”では《エロいことをしよう》の歌声を誘うのだった。“絶対絶望絶好調”で賑々しく立ち上がるバンドサウンドは、まるで視界を極彩色に染め上げるファンファーレのようだった。名古屋、大阪、広島、東京で繰り広げられたバンドセットのうち、この日のメンバーは直枝政広(G/カーネーション)、畠山健嗣(G/H MOUNTAINS)、TATSU(Ba/LÄ-PPISCH)、奥野真哉(Key/ソウル・フラワー・ユニオン)、ピエール中野(Dr/凛として時雨)というもの凄い顔ぶれだ。大森靖子が手掛ける楽曲の力か、それとも彼女自身のアイコンとしての力なのか、奥野がダブステップのリフを操る“イミテーションガール”も、歌謡ソウルな“ノスタルジックJ-POP”も、長年活動を共にしてきたバンドのようなサウンドになっているところがまた凄い。
大森靖子@中野サンプラザ
歯に衣着せぬ物言いを絡めながらも「いろいろあって来てくれるのが、本当に嬉しいです」とオーディエンスに率直な思いを伝えると、“エンドレスダンス”や“子供じゃないもん17”で精度の高いポップの粋を見せつつ、“おまけ♡〜スーパーフリーポップ〜”がダンサブルなインプロヴィゼーションの応酬へと展開するうちに、大森靖子は華やかなドレス姿にお色直しする。そして自らフリーキーなピアノプレイを加えると、その後にはアコーディオンが添えられる“KITTY’S BLUES”や“キラキラ”と、劇的なピアノ弾き語りパフォーマンスを繰り広げてゆくのだった。
大森靖子@中野サンプラザ
これまでの3本のツアーと飛躍を振り返りつつ、「自分の中の邪念を消し去りたいんですよ。体の中に残しておきたくなくて。顔を整形したいんですけど、なりたい顔があるんじゃなくて、小顔にし過ぎて消えちゃいたいんですよ」と、笑い混じりにではあるが切実な思いを伝える。だからこそ、その直後に披露された“絶対彼女”は、どこまでもポップなのに深入りせざるを得ない。公式ブログ上で歌詞が公表されている新曲“春の公園(調布にて)”は、歌の在処を探るようなポエトリーリーディング風の一曲だ。ときに楽しげに舞い踊っては歌い、ときに身を削るようにのたうち回る本編の行く末、客席通路を進みながら一人一人に直に伝えるように“音楽を捨てよ、そして音楽へ”を届けると、彼女はそのピンクのマイクをスタンドごと客席の中央に、モニュメントのように残して去っていった。
大森靖子@中野サンプラザ
アンコールに応えた大森靖子は、たくさんの薔薇をあしらったデザインのドレスで姿を見せる。「かわいい、って言える人は、かわいいんですよ。本当ですよ?」「ミラーになりたいんです。みなさんが持って来てくれたものを、増幅して返したい。そういう芸術でありたいんです」。そんな思いが込められた新曲“マジックミラー”は、ステージ背景の巨大な鏡がオーディエンスの姿を映し出す、というユニークな演出と共に披露される。そして、敬愛する道重さゆみと、他のどんなライヴハウスよりも通い詰めたという中野サンプラザに寄せる思いを託した“ミッドナイト清純異性交遊”で、今回のステージは万感のフィナーレを迎えるのだった。(小池宏和)■セットリスト01. PINK
02. 秘めごと
03. 夏果て
04. デートはやめよう
05. 魔法が使えないなら
06. 絶対絶望絶好調
07. きゅるきゅる
08. イミテーションガール
09. ノスタルジックJ-POP
10. あまい
11. エンドレスダンス
12. 子供じゃないもん17
13. 君と映画
14. おまけ♡~スーパーフリーポップ~
15. KITTY’S BLUES
16. キラキラ
17. 歌謡曲
18. さようなら
19. 呪いは水色
20. 絶対彼女
21. 少女3号
22. あたし天使の堪忍袋
23. 春の公園(調布にて) (朗読)
24. 焼肉デート
25. 新宿
26. 音楽を捨てよ、そして音楽へ(アンコール)
01. マジックミラー
02. ミッドナイト清純異性交遊
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