ザ・ミュージック @ 恵比寿リキッドルーム
2008.05.01 00:00
文字通り「復活」、正真正銘の「帰還」の一夜だったと言っていいだろう。ザ・ミュージック3年ぶりの単独来日公演はリキッドルームでのワンナイト・オンリー。場内は彼らのカムバックを待ち望んでいたダイハード・ファンが集結し、チケットは瞬間でソールドアウトだったという。ザ・ミュージックは2002年のデビュー・アルバム以降、ここ日本でも絶大なる人気を誇ってきた若手UKバンドである。しかし2nd『ウェルカム・トゥ・ザ・ノース』(2004)のリリース以降、バンドの方向性を見失いかけてしまったという彼らはその後4年にも及ぶ空白を経験。そして長きに亙る苦悩の時期を乗り越えて、6月には待望の3rdアルバム『ストレングス・イン・ナンバーズ』をいよいよリリースする。今夜のステージはそんなザ・ミュージックのカムバックを祝福し、日本のファンが再び彼らと共に歩みだしていく記念すべきターニングポイントとなった。1曲目が彼らのデビュー・シングル“テイク・ザ・ロング・ロード・アンド・ウォーク・イット”だったのもまた、象徴的なシーンだったと言えるだろう。「長い道を歩いていく」という本曲のテーマは、ザ・ミュージックというバンドの根源的なステートメントそのものだからだ。「We’re waiting for you!」とファンが叫べばステージ上のロブ(Vo)も「We’re waiting for you too!」と叫び返す、全14曲のステージは最初から最後までそんながっちりした絆で彼らとファンが繋がれたものだった。新曲と旧曲がほぼ半々で組み立てられたセットリストだったが、“ザ・スパイク”、“ストレングス・イン・ナンバーズ”といった新曲は瞬く間にフロアに浸透し、大きなうねりとなってステージ上の彼らにフィードバックされていく。ザ・ミュージックと言えばそのグルーヴ主体の音楽性がキモだが、今夜のライブはまさにひとつの大きな渦が、しかも上へ上へと向かって上昇していく竜巻のような渦が出現したパフォーマンスだったと言える。目を見張らされたのは彼らのプリヤビリティの格段の進化だった。フィル(Dr)のプレイが土台としてどっしり根を張り、その上で他の3人が思う存分に各自のプレイをぶっとばしていく。かつての彼らは自身の生み出したグルーヴに自分達自身が飲み込まれていってしまうような危うさをも感じさせていたが、今はがっちりグルーヴの手綱を握り締めていた。サウンドの引き出しも激増し、しかも出し入れ自在のしなやかさをも感じさせるパフォーマンスだ。加えて、ステージ上の4人のモチベーションというか、ライブという場所に臨む意識にも変化が見られたように思う。オーディエンスに身を乗り出し、煽り、ひとつになりたいと渇望するような彼らの切実さは、かつての野育ちで浮世離れした自然児ザ・ミュージックには見られなかったものだ。かつては隙あらばしゅぱぱぱぱ!とアンチ・コントロールなタコ踊りに突入していたロブも、今夜はほとんど客席から目を離そうとはしなかった。むしろステージ上の彼よりもフロアの私たちのほうがタコ踊りなのである。4年の不在は、あまりにも長かった。しかし、4年で彼らが得たものは、あまりにも大きかったのである。(粉川しの)