ヴァン・シー
ゴールデン・シルバーズ
ロボッツ・イン・ディスガイズUKロック・ファンにはおなじみのライブ・イベント、ブリティッシュ・アンセムズ。7回目の開催となる今回は、09年の活躍が期待される新人勢を中心としたラインナップ。オーストラリアからゲストとしてヴァン・シーが出演したり、日本の新鋭を中心としたTEQUILA69ステージが新設されたり、といった新たな試みもオーディエンスを魅了していた。
会場に入って真っ先に目に入ってくるのが、今回初登場となるTEQUILA69ステージ。場所はコースト出口すぐ、これまで飲食店が並んでいたエリアにステージ・トレーラーが横づけされている。The Mirraz、Psysalia Psysalis Psyche、Quattro、The John’s Guerrilla、Veni Vidi Vicious、Plastic Zooms、Pills Empire、The Haikus、Buffalo’3という計9アクトが出演。海沿いで、寒風吹きすさぶロケーションではあったが、新しい音に貪欲なオーディエンスが集うこのイベントらしく、常時にぎわいをみせていた。
メイン・ステージには、今回計8アーティストが出演。一番手は、イギリスはブライトン出身の3人組、ザ・エクサーズ(The Xcerts)。本国でも3月30日にデビュー・アルバムを発売予定という新人だが、演奏はエモーショナルでなかなか堂々としたもの。楽曲がもつ疾走感や清々しさといった魅力を、きっちりと引き出してきている。一度聴くと歌いだしたくなるキャッチーなコーラスも満載で、フロアも盛り上がりやすい。
続いて、1月にバンド3枚目となるアルバム『ウィー・アー・イン・ザ・ミュージック・ビズ』(ジャケ写のボディ・ペインティングがインパクト大)で日本デビューを果たしたガールズ・デュオ、ロボッツ・イン・ディスガイズ。お尻をフリフリしたりと奇抜な衝動的アクションを次々みせてフロアを圧倒。決して上手いわけではないが、どっしりした演奏ぶりで、姐御的オーラも漂わせている。サポート・ドラマーのお姉様もタイトなドラミングでカッコイイ。オーディエンスの動物的本能を刺激するような、パンキッシュなエレクトロ・ロックは即効性抜群。夏フェスのステージで観てみたいアーティストだ。
トランペットの音色が、荒涼とした大地を切り拓いていくように高鳴る。次は、元フォールズのギタリスト、アンドリューが率いる5人組バンド=ユース・ムーヴィーズの出番だ。彼らは、変拍子が入り組む抒情的なアンサンブルを、実にダイナミックに聴かせる。どの曲も一筋縄ではいかないプログレッシブな展開をみせるが、うまくポップにまとめ上げられている。加えて、開放感あるホーンの音色が、パフォーマンス全体に突き抜けるような快感をもたらしていた。
08年のグラストンベリー・フェスの新人枠コンテスト優勝者として、早くも同フェスのメイン・ステージでのパフォーマンスを経験。今春のデビュー・アルバム発売が待たれる3人組ゴールデン・シルヴァーズが登場。甘いギター・ポップや疾走感溢れるガレージ・サウンドをベースに80年代ブラック・コンテンポラリー風のアーバン・テイストやディスコがファニーに融合。場内をほっこりした陽なグルーヴで包んでいく。引き出しの多さを感じさせるだけに、デビュー作の方向性がどうなっているのか本当に楽しみ。
フロア前方から悲鳴のような歓声が。女の子たちからの熱い支持を早くも日本で獲得していることを印象づけたのがチーキー・チーキー・アンド・ザ・ノーズブリーズ。サフォーク出身のティーンエイジャー5人からなるギター・ロック・バンドだ。ルックスもなかなかかわいいし、演奏には瑞々しさが滴っている。どの曲にも初期衝動がみなぎっているが、ところどころにソングライティング力の高さを感じさせるフックがちりばめられている。ツイン・ボーカル体制でうまく奥行を出していて、そこも見どころの一つになっていた。
続いて、日本からACIDMANが登場。まず、出音一発で、フロアにビリっとした緊張感を走らせていた。今日一番ともいえる音圧。ここまで新人バンド中心の流れだったため、さすがに格の違いを感じさせる。積み重ねてきたキャリアに相当する重みが音に宿っていていて、圧倒的な求心力なのだ。MCによれば、意外にもスタジオ・コーストでの初ライブだそう。“波、白く”“Free Star”新曲“CURVE WITH THE SENSE”など全7曲を披露。メリハリのきいた演奏で、貫禄をみせつけてくれた。
オーストラリアからゲスト参加という形で出演したのが、かの地の人気レーベル<モジューラー>発の4人組エレクトリック・バンド、ヴァン・シー。リミックス・ワーク(クラクソンズ、ファイストなど)も評価が高く、昨年発表したデビュー・アルバム『V』もスマッシュ・ヒットを記録中だ。“ストレンジャーズ”“チェンジズ”といった胸キュン・チューンを繰り出し満員のフロアを揺らした。もともとの出自が打ち込み中心のシンセユニットなだけにあまり演奏面では期待をしていなかったが、想像以上にしっかりしていて伸びやかな気持ちいいグルーヴを生み出している。ボーカルが控えめだったのは意図的なものなのかわからないけど、ちょっとそこが残念。個人的にはボーカルが強調された方が、曲の抜け感が最大限に発揮されるような気がする。
ラストを飾るのは、ザ・フラテリス。サポート1名(ギターやキーボードを担当)を従えた布陣でステージに登場。暗幕と楽器だけ、という実にシンプルな舞台セット。幕開けの“カントリー・ボーイズ&シティ・ガールズ”から、ツイン・ギターになっていることもあって迫力満点。早くも4曲目で“気取りやフラッツ”、そして6曲目で“チェルシー・ダガー”を繰り出すという、短距離型全力疾走を思わせる凝縮されたセットリスト。そうした高揚感あふれる曲での爆発もいいけど、ライブのたびに“ホイッスル・フォー・ザ・クワイア”“ベイビー・フラテリ”なんかでみせられる、メランコリックな表情にもはっとさせられる。しみじみといい曲なのだ。シーンの流れに左右されない普遍性を備えた“歌”をもつライブ・バンドとして、独自のスタンスを築きつつある彼ら。「フラテリスのライブは絶対楽しいから!」と足を運ぶオーディエンスの大きな期待を受け止め続けてきている。やっぱりいいバンドだ。(森田美喜子)