【LIVE SPARKS!】 ふたりの息遣いから、バンドの躍動まで。令和のニューミュージックバンド・エルスウェア紀行が見せた多彩な「音楽旅行」

【LIVE SPARKS!】 ふたりの息遣いから、バンドの躍動まで。令和のニューミュージックバンド・エルスウェア紀行が見せた多彩な「音楽旅行」 - All photo by 髙野立伎All photo by 髙野立伎
安納想(Vo・G)とトヨシ(G・Dr・Cho)によるエルスウェア紀行。「令和のニューミュージック」を標榜しながら、ロック・フォーク・プログレなど自由なサウンドを行き来するこのバンドの名前には、「どこでもない場所を旅する記録」という意味が込められている。2月7日、ふたりが昨年11月から続けてきた全国ツアー「エルスウェア紀行 tour "strange town" 2025-2026」が、日本橋三井ホールにて終幕した。

【LIVE SPARKS!】 ふたりの息遣いから、バンドの躍動まで。令和のニューミュージックバンド・エルスウェア紀行が見せた多彩な「音楽旅行」
今回の旅における大きな挑戦、それは、「微光奏」(アコースティックバンド)と「遠景奏」(フルバンドセット)というふたつの異なる編成(安納は「ふたつの心臓」と言い表していた)を、ひとつのライブの中で表現する、というものだった。ライブはトヨシがアコースティックギターとバスドラムを担当する「微光奏」から始まり、次に「遠景奏」に移行(ここではトヨシはドラムを担当)。再びデュオの「微光奏」に戻り、最後はバンドの「遠景奏」へ──次々と編成が変わっていく、まさに旅のようなライブ。総じて、あまりにも濃密な音楽体験だった。

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「微光奏」では、安納の歌が、まるで長年の友人がすぐ隣で語りかけてくれるような温かな親密さを持って響いていた。特に忘れられないのが、“ひかりの国”。ミニマルな編成だからこそ童謡のように広く開かれた優しいメロディと、安納曰く「救いのない歌詞」の奥に光る希望のフィーリングが、ストレートに胸に沁みてゆく。一方、「遠景奏」では、計5名によるバンドサウンドの重みと気迫、ダイナミズムが遺憾無く伝わってきた。特に、スペクタクルなロックショーのような激烈なアレンジが施された“少し泣く”は、鳥肌が立つほどに圧巻だった。

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特筆すべきは、本編最初に「微光奏」で披露された新曲“温度と一部”が、本編最後に「遠景奏」で披露されたこと。ひときわエモーショナルに響く歌、各メンバーの音が互いに重なり合うことによって生まれる壮絶なバンドケミストリー。とにかく痺れた。ひとつの楽曲を、最小編成&最大編成というふたつの編成で披露することによって、両者のコントラストが鮮やかに際立っていたように思う。振り返ると、「微光奏」で披露された“キリミ”は、アコギの高速カッティングがパワフルな響きを放っていたし、逆に「遠景奏」で披露された“素直”は、たおやかで繊細な響きを感じさせた。

総じて思うのは、今回のライブ全体が、最小編成と最大編成、つまり、極と極の狭間の「あわい」を、音楽を介して巡る旅のような時間だった、ということ。言葉だけでは説明できないこと。白黒はっきりできないこと。そういったグラデーションを、音楽は雄弁に表現することができる。そうした原初的な気づきをもたらしてくれるライブだった。なお、安納は、MCで「ささやかな好き」「カテゴライズできない好き」「ひと言では言い切れないような夢」を持っていてもいいと語っていた。そうした彼女の思いも、今回のライブの構成と分かちがたく結びついていたように思う。

【LIVE SPARKS!】 ふたりの息遣いから、バンドの躍動まで。令和のニューミュージックバンド・エルスウェア紀行が見せた多彩な「音楽旅行」
アンコールの最後に披露されたのは、トイズファクトリーからのメジャーデビュー曲“のびやかに地獄へ”。同曲を披露する前、トヨシは、「メジャーデビューしても変わらない。これまで通り、変わり続ける」と告げた。メジャーデビューを新たな通過点として、エルスウェア紀行の旅は、またここから続いていく。(松本侃士)

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strange town tour 2025-2026 final
2026.02.07 日本橋三井ホール

●セットリスト
01. 温度と一部 
02. さよならに
03. キリミ
04. ひかりの国
05. ムーンドライバー
06. 少し泣く
07. 鬱夢くたしかな食感
08. 素直
09. 無添加
10. マイスレンジタウン
11. 天国暮らし
12. ひかりの位相
13. 問題のない朝
14. 天才は今度
15. あなたを踊らせたい
16. ロマンチックサーモス
17. まなざしはブルー
18. 冷凍ビジョン
19. とわの祭り
20. 温度と一部

Encore
21. ベッドサイドリップ
22. のびやかに地獄へ


提供:TOY'S FACTORY
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部
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