おとぎ話 @ 下北沢CLUB Que

おとぎ話 @ 下北沢CLUB Que - pic by reipic by rei
夏フェス・シーズンも大盛況のおとぎ話が、この8月ど真ん中に、デビュー以来慣れ親しんだCLUB Queでワンマンショウ『SUMMER BABE 2009』を決行。しかも、開催直前にはメンバー全員での富士山登頂を成功させ、おとぎ話Tシャツ着用のライブ来場者には、その富士山登山記念写真をプレゼントする、というファン・サービス企画まで携えての登場となった。

「ジャパニーズ・オルタネイティブ・ロックンロール・バンド、おとぎ話です!」赤いラメパウダー顔の有馬がいきなり目を引く。妙に似合っているのが可笑しいというか、余計に腑に落ちないというか。ステージは“KIDS”からのスタートだ。あの味のある少年声で伸びやかな歌を届けてくる有馬。今回のワンマンは、現在鋭意製作中というおとぎ話の、来たるニュー・アルバム収録曲の幾つかを披露してくれたことも大きなトピックであった。2曲目には早々に新曲“科学くん”を投下。今度はエモーショナルなギターを掻き鳴らしつつ歌う。

「おとぎ話の夏は、今日で終わりです!」えー! なんでー?というオーディエンスの声が飛び交う。「夏半ばにして、いろいろやり過ぎて。みんなでサマソニ行って山のぼって、こんなこと考えてるロック・バンドはおとぎ話だけだろう、と思ってたら、monobrightがまったく同じことを考えてました」。……まあとにかく、楽しそうではある。

広がりのある美しい音響をフロアに届けた“NIGHT SWIMMING”から一転、若き悪意を込めてダーティなドライブ感で疾走する“火星”へ。そしてここでまたもや新曲を投下、ドラマーの前越が書いたというサビの歌詞をいきなりオーディエンスにシンガロングさせる“I like sports”である。今日のおとぎ話はCLUB Queのステージとフロアの「近さ」がそうさせるのか、はたまたそのCLUB Queのホーム感がそうさせるのか、伸び伸びと「歌」を聴かせてくれる感じがして良い。彼らのソング・ライティングの豊かさが実に良くわかる。

女子オーディエンスからギタリストの牛尾に嬌声が飛べば、「牛尾くん、カッコイイんだけど、富士山行くって決まってから、もうブルブル震えちゃって」とひとしきり妬みいじりに精を出す有馬。ここでアコギにスイッチし、牛尾のエレクトリック・ギターとの音のコントラストを描き出す。美しい。“BLUE BLUE”からロマンチックな“おとぎ話の空”、牛尾がドキリとするようなフレーズを爪弾く“おとぎ話の「愛」のテーマ”、そして「このへんで、人気ないところ見せちゃおうかな! おまえのために歌ってやるぜ!」と有馬が最前列の男子オーディエンスを指差し“Boys don’t cry”と繰り出す。更にはここでも新曲を披露、穏やかだが固い決意に満ちた、感動的な“泣きだしそう”のメロディが溢れ出した。

「いやー、アコギ初めてやったんですけど、いいんですよ。やっぱりね、新しいことにチャレンジしていかないと。風間とね、最近、売れてもいないのにテングになってる、このままじゃダメだ、って話してて」。もともと妙に自信に満ち満ちている有馬な気はするが、それにしてもこのアコギ・セットは良かった。僕は有馬&牛尾のグランジ色の強いエレクトリック・ギターの響き合いがとても好きだが、今回の有馬のアコギへのスイッチは、歌のエモーションを汲みながらドラムを叩く前越、常にニコニコと楽しそうにメロディアスなベースを奏でる風間、そしてクールながら変幻自在の牛尾のギター・プレイと、おとぎ話のメンバーの顔をくっきり浮かび上がらせる働きがあった。

メロウでエモーショナルに展開する“俺たちに明日は無い”の壮大なアウトロで改めてメンバーの名前がコールされる。そして牛尾のギター・イントロから風間がハンド・クラップとコーラスを煽り立て、最新EPの“青春”だ。ロック・イン・ジャパン・フェスティバルのステージでもやってくれたが、“Festival Express”のオープニングに有馬が一瞬、ミッシェル・ガン・エレファントの“ブギー”のギター・フレーズを挟み込んでアベフトシを追悼する。「ロックンロールは死なないんだよー!」。そして本編ラストの“GALAXY”では有馬はハンド・マイクで歌い、身振りで感情の高ぶりをストレートに伝えてステージをクライマックスへと導いていったのであった。

アンコールでも再びアコギ・セットの“WHITE SONG”、ビートがソリッドに立ったロック・ナンバー“E.T.M”と新曲を立て続けに披露した今回のおとぎ話。伸び伸びとしたスタンスではあったが、彼らのニュー・モードをきっちりと刻み付けたステージになった。富士山登頂も、彼らにとっては必要な、新しい冒険だったのかも知れない。ちょっとまだ気が早い気はするが、新作アルバムの到着が今から楽しみだ。(小池宏和)

1.KIDS
2.学くん(新曲)
3.ネオンBOYS
4.また、よろしく
5.NIGHT SWIMMING
6.火星
7.I like sports(新曲)
8.BLUE BLUE
9.おとぎ話の空
10.おとぎ話の「愛」のテーマ
11.Boys don’t cry
12.泣きだしそう(新曲)
13.SMILE
14.new song
15.俺たちに明日は無い
16.DEAD(新曲)
17.青春
18.Festival Express
19.GALAXY

アンコール
20.WHITE SONG(新曲)
21.E.T.M(新曲)
22.Fun Club
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