ようやく、と言って差し支えないだろう。’09年にメジャー・デビューを果たしてからというもの、そのアグレッシブなサウンドと突き抜けるような美メロをもちあわせる音楽性や海外での活躍が注目を浴び、独特の戦略性にも溢れた活動でロック・シーンに旋風を巻き起こしているFACT。新年早々にリリースされた2作目のフル・アルバム『In the blink of an eye』を引っ提げ、初となる国内ツアー『FACT – JAPAN TOUR '10』が敢行されている。当初予定されていた公演分のチケットは瞬く間にソールド・アウト。急遽、今回レポートする渋谷クラブクアトロ公演に先だって、2月8日にはShibuya O-EASTでの追加公演も行われていた。いかにFACTのステージがシーンに渇望されているか、ということである。渋谷クラブクアトロに集ったオーディエンスたちは、ざっと見てメタル・ヘッズもパンク・キッズも、ルックスに表れた趣味嗜好を越えたところで、一緒になってFACTの登場を待ちわびている。年末に出演したCOUNTDOWN JAPAN 09/10のTシャツ着用の人も多い。これぞFACTという、彼らの特殊な射程レンジの広さが如実に表れた光景だ。今回のツアーの東名阪公演では、海外アクトとの交流もさかんなFACTらしく、海外からのゲストが招かれている。1組目の登場となるのは、カナダのバンド、テン・セカンド・エピック(TEN SECOND EPIC)。いかつい風貌の5ピースでサウンドもダイナミックだが、やたら奇麗な歌メロ・スタイルで徹底している。ボーカリストのアンドリューが「最新アルバム『ホームタウン』発売中デース!」とかサービス精神旺盛な日本語MCを連発して、尻上がりに盛り上がっていった。彼らは今後FACTとの帯同のほか、2/15の渋谷eggmanで自らヘッドライナーを務めるイベント出演、そして各地の大型輸入盤店でのインストア・ライブも予定している。2組目の出演者となったのが、オーストラリア出身の5人組、クロージャー・イン・モスコー(CLOSURE IN MOSCOW)だ。このバンドがすこぶるカッコ良くてびっくりしてしまった。マーズ・ヴォルタやセイオシンを彷彿とさせる、キャッチーでメジャー感がありつつもちょっと変態的なプログレ入ったエモ・バンドだ。個人的に好きだこういうの。テクというよりも世界観を叩き付けてくる感じがいい。表現力豊かなハイトーン・ボーカルで耳を引くのはボーカリストのクリストファーだが、唐突に「オレハ、シコルノダイスキー、シコシコシコ、シコシコ」とか言い放っている。誰だそんなの教えたのは! FACTのメンバーだろう! でも本来は、別のバンドがゲストに決まっていたところキャンセルになってしまい、FACT/Hiroの話では「一週間前に連絡したら速攻きてくれた。ほんといいやつらだから」ということだった。そしていよいよFACTの登場である。大歓声を浴びて登場するメンバー。フロアにはやはりというか、能の小面を被っているオーディエンスもちらほら。EIJIによる重機関砲のような凄まじいビートとエレクトロニックな同期を交えたエキサイティングなロック・サウンドが弾け、のっけからまるで大きなサッカー・スタジアムにいるかのようなシンガロングが起こる。実際、新作『In the blink of an eye』はリリースから間もないし、爆発力はそのまま、格段に展開の奥深さが増した、手っ取り早く言えばややこしくなって難易度が跳ね上がったFACTの歌メロが心配だったのだが、オーディエンスはOIコールを交えつつ難なく英語詞の歌を歌いこなしてゆく。すげえな、FACTのファンは。“slip of the lip”のブライトなコーラスがシンガロングされたとき、その美しい光景にはフロアから自然と拍手が沸き起こったりするほどあった。「みんな酸欠、大丈夫? ちょっと深呼吸しようか」とHiro。「FACT、激しいの好きだからさ(笑)ごめんね」。そう言いながらもほとんど間を置かず、今度はイントロから高速32ビートでぶっ飛ばされる“paradox”へと傾れ込んでしまう。ずっとこんな調子なのである。どうツッコむべきやら。とりあえず、過呼吸になってしまった人はビニール袋とか、無ければTシャツの胸元の部分とかで鼻と口を覆うようにして、安静にしてください。周りの人にも助けを求めて下さい。ぐらいのことしか言えないなあ。「初めて(日本で)ツアーやって、ほんと楽しいです! ありがとう。おれらが何らかの形で、みんなの足しになれば嬉しいです」。終盤になって、Hiroはそんなふうにも話していた。激しいバンド・アンサンブルもスクリームも、豊かな美メロもあるFACTの音楽性は、その先で更にオーディエンスの熱いシンガロングを捕まえることで、完成するのではないか。そんな気がした。実質的にジョイント・ツアーの形を取っているのでFACTの出演時間は長くはないが、何しろ凄まじく濃い楽曲群を矢継ぎ早に繰り出すので、なかなかお腹一杯のステージであった。まだツアー日程中盤なので曲タイトルの表記などはなるべく控えたが、デビュー・アルバムとニュー・アルバムから、ほぼ半々ぐらいの選曲だ。名古屋、大阪の公演においても、オーディエンスは思う存分歌って欲しい。そんなの、言われるまでもないことかな。
(小池宏和)
FACT@渋谷クラブクアトロ
2010.02.10 10:23