SOUND SHOOTER @ 新木場スタジオコースト

SOUND SHOOTER @ 新木場スタジオコースト - ドットマンズドットマンズ
SOUND SHOOTER @ 新木場スタジオコースト - andropandrop
SOUND SHOOTER @ 新木場スタジオコースト - Nothing’s Carved In StoneNothing’s Carved In Stone
SOUND SHOOTER @ 新木場スタジオコースト - THE BACK HORNTHE BACK HORN
SOUND SHOOTER @ 新木場スタジオコースト - BEAT CRUSADERS / pics by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)BEAT CRUSADERS / pics by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)
「『SOUND SHOOTER』、今年で5周年です。僕が普段、オフィシャルで写真を撮らせてもらっているバンドだけが出るという、ユルユルなイベントです。今日は、おかげさまでチケット完売しました! 後ろの方まで人で一杯なので、すみませんが皆さん、ちょっとずつ前に詰めて貰えますか」。前説に登場した、他でもない本日のイベントの主役であるカメラマン・橋本塁がそう話を切り出す。いきなりユルユルなんだかパツンパツンなんだか分からない倒錯MCだけれども、何しろめでたい。3/7にはlocofrank、FRONTIER BACKYARD、ONE OK ROCK、cinema staff、meaning、ivory7chordらが顔を揃えた大阪編が行われ、そして今回、満場のオーディエンスと共に新木場スタジオコーストで東京編を迎えた『SOUND SHOOTER Vol.5』である。

「オープニング・アクトは内緒だったんですけど、今日、初ライブで、今日解散します。ドットマンズです!」という橋本塁の紹介を受けて、暗転したステージに表れたのは男4人組のバンドだ。姿勢を正して深々と礼をする菅原卓郎に似たボーカリストと、暴れ回りながら鋭いリフを繰り出す滝善充に似たギタリストと、低い位置にセットされたマイクでスクリームする中村和彦に似たベーシストと、狂ったような手数でアンサンブルを牽引するかみじょうちひろに似たドラマー。全員、黒地に白の水玉という橋本塁柄の衣装を身に纏っているので、ドットマンズというらしい。これにはオーディエンスも嬉しい悲鳴である。中村に似たベーシスト、って面倒だな、中村のベースは、ボディの柄が水玉模様に。そして、ひと際大きな水玉が描かれた半袖・短パン姿の滝がなんかおかしい。彼らは 9mm Parabellum Bulletの来るニュー・アルバムからのリード・トラック“The Revolutionary”を含めた5曲を披露し、水玉模様に彩られた『SOUND SHOOTER』の幕を切って落としてくれた。

ステージの転換中には、スクリーンに美しい朝の風景写真によるスライド・ショーが行われる。そして橋本塁が再びステージ上に現れ、「音源を出してから初のライブです。僕は彼らの、歌詞とか、ステージのバックで流される映像とかが好きで、念願かなって登場してくれます」。と紹介するのは、こちらも4人組のバンド、andropだ。美しいギター・フレーズと効果的に使われるファルセット・ボイス、そしてそれに不釣り合いなほど力強いビートとグルーヴが混在したロック・サウンドが溢れ出す。CGや、実写映像をモザイク状に処理した美しいイメージ映像などを背に、昨年12月にリリースされたアルバム『anew』からの曲群を披露していった。決して荒ぶる演奏ではないのだが、自責の念が物語として伝えられる“Image Word”など、歌の世界観に聴く者を巻き込んでゆくスタイルがとてもいい。彼らのような新進気鋭バンドもきっちりフォローして紹介してくれる辺りが、ライブ現場の最前線に生きる橋本塁ならではだ。

「次はNothing’s Carved In Stoneです。何か足りないと思ったら、お酒が足りないんだよね。呑んでいいっすか? カンパーイ!」とステージ上で缶を開ける橋本塁。「僕だけじゃ悪いんで」と、前線のオーディエンスに紙袋から取り出した缶を景気良く振る舞ったりしている。「拓の、MC以外の声はかっこいいし、アレンジとかもすごい好きです」という歯に衣着せぬ紹介によって呼び込まれたNCISなのだが、これはもう凄絶の一語に尽きるパフォーマンスであった。アレンジがもつれながら転がってぶっ飛ぶ感じとかはいつものことだ。しかしお祭りモードに振り切れたNCISはこんなふうに弾けてしまうのかという、恐竜同士が笑ってじゃれあっているのだけれど一撃一撃が致死量ダメージになりかねないというような、そういう異常なテンションのアンサンブルになっていた。フロアも、騒ぐことが目的なのではなくて否応無しにもみくちゃにならざるを得ない、ちょっと歯止めが効かないような雰囲気になっていった。なお、橋本塁に「4年ぶりの登場」とも紹介されていたが、それは初の『SOUND SHOOTER』のときのELLEGARDENとストレイテナーの出演を指しているのだと思われる。歴史である。

転換中のスライド・ショーは、次に出演するバンドの過去のライブ写真となっていた。橋本塁も「3本の指に入るぐらい、フォトジェニックなバンドです」と言っていたが、瞬間で切り取られたTHE BACK HORNのステージ上での表情やアクションは本当にかっこいい。自ずと期待が高まる。そしていよいよステージに姿を現した生バックホーンは、これが意外にもというか、お祭りムードのはっちゃけたパフォーマンスを見せる他のバンドとは一味違って、序盤はカッチリと纏まった、どちらかというとジェントルな演奏を聴かせ始めた。山田の歌が真っ直ぐに突き刺さってくる。そして彼らが向き合う「生命」というテーマに真摯に向き合った名曲“美しい名前”がプレイされたとき、バックホーンは自分たちの表現の本質となる部分をこのステージに残そうとしているのではないか、と思った。松田が「橋本塁先生には、ファインダーを覗かないで撮る、という必殺技がありまして、話しながらいきなりパシャッ、と。そうやってバンドの本質を切り取ってゆくんだな、と」と語っていたが、つまり今回のステージは、橋本塁とバックホーンの真剣勝負なのだ。バンドの核となる部分をきっちり見せつけるから、それを捉えてくれ、というパフォーマンスなのだ。聴く者を奮い立たせるような新曲“戦う君よ”からの、アッパーに転がり出した終盤。溜め込んだ力を一気に解放するように、バンドはラスト3曲を駆け抜けていった。実に素晴らしいステージであった。

「えー……酔っぱらっております」と橋本塁。「ビークルは、ファーストが出たときからファンでした。まさか自分が撮れるようになるなんて、感無量です。今日はビークル兄さんたちが、お前のイベントなんだからお前がセット・リスト決めろよ、と言ってくれまして。……好きな曲ばっかり選んじゃいました」。という余りにもスペシャルな、本日のアンカー=BEAT CRUSADERSの登場である。これがもう、ただただライブ用キラー・チューンを詰め合わせました、というような、抑揚もへったくれもない鬼セトリに。おまんコールからの“ISOLATION”、そして“Ghost”のコーラスがフロアに広がったのち “FEEL”のグッド・メロディというふうに、息つく暇もないアッパー系の連打なのだ。クボタが「まあカメラマンだから、ファンの目線で選んでくれてると思うんだよね。なので間違いないと思います」と言っていたが、本当にファンの聴きたい曲アンケートを集計して上位の曲だけを並べたようである。カトウがラジオDJ風に演奏曲を紹介するたびに、大きな歓声が沸き上がっていた。アンコールではなんと、元バンドマンでクボタと対バンしたこともあるという橋本塁が、クボタとポジションを交換してしまう。橋本塁がベースを弾き、クボタがカメラを構えるというサプライズ。新し過ぎる。そして、セットの最後に配置されていたのは、京葉線沿線に生息する某ネズミ君のマーチ。それが勢い良くプレイされて、華々しくフィナーレが飾られたのであった。

ミュージシャン以外の人物がこれだけ前面に出ていて、しかもそれが楽しくて仕方がないというイベント、他に類を見ないと思う。ステージの上下、縦横無尽に駆け巡り、ここぞとばかりにパフォーマーをいつもより接写したりする橋本塁の姿が目に焼き付いた。『SOUND SHOOTER』、今後も更に拡大しながら、続けていって欲しい。多くのオーディエンスの首元に巻かれた、ぐしょぐしょの SOUND SHOOTER水玉オフィシャル・タオルが、なんとも印象的な一夜であった。(小池宏和)
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