UNISON SQUARE GARDEN @ SHIBUYA-AX

pics by TSUKASA MIYOSHI
「大好きなアルバムを作って、ツアーしてきたわけだけれども、僕はその間もずっと曲を書いて詞を書いて、あの、僕は自意識過剰だから、凄いの出来た、これ早くみんなのために届けなきゃって一人でうわーってなって、出来た歌詞をプリントアウトして渋谷のスクランブル交差点でバラ撒こうかとも思うんだけど、やっぱりCDにして届けるべきなんで、そのためには続けるべきだって結論に達して、あの、明日からまた新しい何かを探しに行くんだと思います!」

公演中盤、いつになく雄弁に思いのたけを語った田淵(B.)に対
し、割れんばかりの歓声が上がっていた。UNISON SQUARE
GARDEN、セカンド・アルバム『JET CO.』を携えての全国ツアーを締めくくる、SHIBUYA-AXでのファイナルだ。新作のオープニングと同様、“メッセンジャーフロム全世界”“コーヒーカップシンドローム”と畳み掛けて幕を開けたステージでは、それぞれが感情の赴くままに奔放にプレイしている部分もあるのにガッチリと纏まった3ピースのアンサンブルが轟き、意志と少年性を帯びた斎藤(Vo./G.)の歌が突き抜けてゆく。

斎藤がところどころ発声のタイミングにタメを入れたり、ただでさえ符割りの細かい田淵のベース・ラインが感情に乗ってつんのめったり、ユニゾンのライブ・パフォーマンスの上手さというのは「正確に、ブレなく演奏される」という意味での上手さとは違う。でも、ステージ上とフロアの間で楽曲とともに感情の昂りがシンクロする中、むしろタメたりつんのめったりすることが「正解」になる。メンバー個々の演奏技術の確かさを踏まえた上でそうなっていることが、オーディエンスにジャストで伝わってくる。それがもの凄く気持ちいい。

七色に輝く照明にステージが照らし出されたダンス・チューン“ライドオンタイム”、そしてオーディエンスのハンド・クラップを巻いてエモーショナルに疾走した“マスターボリューム”を経て、斎藤が挨拶する。「ツアー13本目、ファイナルです。チケットも完売しました! あとはひたすら最高のライブにするだけなんで、最後までおつきあいください」。ここまではアップ・テンポでときに激しい音の交錯を聴かせるナンバーが続いていたが、一転、大らかで広がりのある“空の飛び方”や、CDに収められたバージョンよりも一層ジェントルにプレイされた“夜が揺れている”と、ユニゾンの美曲サイドが展開されてゆく。甘く切ない物語のバラード“気まぐれ雑踏”での、リズムを刻むというより歌を彩るようなドラム・プレイが素晴らしい。この曲のアウトロでは田淵の口笛、鈴木のマリンバというアレンジも決まった。メロウな美曲はユニゾンの一側面でしかないけれど、「ああ、いいバンドだなあ」としみじみ感じ入る瞬間であった。

『JET CO.』の曲は、田淵の絶妙なバランス感覚から生み出され
た、捩れながらもキャッチーな楽曲が多いアルバムだったが、生のエキサイティングなステージでプレイされるそれらは、更に大きく聴く者を巻き込んでゆく印象がある。チャーミングで悪戯な歌詞が弾ける“cody beats”や“アイラブニージュー”で、フロアは沸きに沸いた。それにしても、息つく暇もなく曲また曲である。冒頭で紹介した田淵のMCの折に、斎藤が「ワンマンよりもイベント出演が多くて、曲をいっぱいやりたいからMCが少なくなる」と言っていたけど、これではイベント出演のノリでワンマンをこなしているようなものだ。本編ラストをアルバムと同様“23:25”で締めくくり、アンコール1曲目の“スノウアンサー”で、『JET CO.』の曲はすべて披露された。さすがに、メンバー3人の顔にも疲労の色が見える。

「音楽という非日常を強く感じたツアーでした。楽しい日常を過ごしている人は、音楽によって一層楽しくなるでしょう。毎日死にたい、苦しい、辛いと感じている人は、この非日常で楽しむことが出来ます。皆さんは運がいい。僕も運がいい。もうすぐ日常が戻ってきます。死にたい、苦しい、辛いと思う人もきっといると思います。それは正直に言えばいい。奇麗事で片付くほど人生が甘くないことは分かっているつもりです。だからもうちょっと、最後までお付き合いください。楽しみましょう!」

この日2度目の田淵のMCに、またもや大きな歓声が沸いた。ユニ
ゾンがこれほどまでに激しいパフォーマンスで、ひたすらに楽曲を畳み掛ける理由を、見た気がした。彼らは、それに触れた者にとって確実に生きる力となるためのパフォーマンスを、行っているのだ。田淵は「非日常」と言う。でもその「非日常」は、日常に、現実に、具体的に働きかける力をもった「非日常」なのだと思う。全22曲で2時間。強靭かつクリアな意志に支えられた、濃密なステージであった。

さて、RO69のROCKIN’ ON JAPAN編集部日記でも既に報じられているが、6月20日、都内某所でツアー「裏ファイナル」が敢行されるそうだ。開演時間は16:00。場所は当日朝、発表されるとのこと。

UNISON SQUARE GARDEN twitter/本イベント専用アカウント(http://twitter.com/USG_JETCO)にて引き続き情報が開示されるので、ぜひともチェックして頂きたい。(小池宏和)

セットリスト
1.メッセンジャーフロム全世界
2.コーヒーカップシンドローム
3.カラクリカルカレ
4.チャイルドフッド・スーパーノヴァ
5.キライ=キライ
6.meet the world time
7.ライドオンタイム
8.マスターボリューム
9.空の飛び方
10.夜が揺れている
11.気まぐれ雑踏
12.箱庭ロック・ショー
13.cody beats
14.アイラブニージュー
15.MR.アンディ
16.フルカラープログラム
17.23:25

アンコール
18.スノウアンサー
19.サンポサキマイライフ
20.ガリレオのショーケース

ダブルアンコール
21.クローバー
22.センチメンタルピリオド