あいみょんがsumika・スピッツと奏でた、愛と出会いの夜──対バンツアー「ラブ・コール2」全公演レポート〜Part4・東京編〜

あいみょんがsumika・スピッツと奏でた、愛と出会いの夜──対バンツアー「ラブ・コール2」全公演レポート〜Part4・東京編〜 - photo by 永峰拓也photo by 永峰拓也
今年6月より開催されてきた、あいみょん主催の対バンツアー「AIMYON vs TOUR 2024 “ラブ・コール2”」。そのファイナルとなる東京公演が、7月17、18日の2日間、東京ガーデンシアターにて開催された。各会場2デイズで開催されたこの対バンツアー、はじまりの愛知公演にはHYと大塚 愛、続く福岡公演にはドミコyonige、大阪公演には森山直太朗秋山璃月、そしてレキシが、それぞれ出演した。締め括りとなる東京公演の対バンにあいみょんが招いたのは、sumikaスピッツ
あいみょんが「ラブ・コール」と題した対バンツアーを開催するのは5年ぶりとなる。世代もスタイルも飛び越えて、敬愛、友愛、音楽愛……様々な「愛」によって結ばれたミュージシャンたちが集う、あいみょんにしか実現できない対バンツアー。熱く、優しさに満ちた空間が広がった東京公演の2日間をレポートする。


●7.17 vs. sumika

東京公演1日目、「ラブ・コールを受けて来ました、sumikaと申します!」──そんな片岡健太(Vo・G)の言葉に導かれて始まったsumikaのライブは、シャッフルビートが軽快に鳴り響く1曲目“Lovers”から、観客たち一人ひとりの手を直接握って光の方角へと引っ張るような力強さで会場を眩い景色に一気に染め上げていく。片岡健太、荒井智之(Dr・Cho)、小川貴之(Key・Cho)の3人に、5人のサポートメンバーが加わった総勢8人のミュージシャンが集うステージ上の景色はとても華やか。8人全員が全身全霊ノリノリで演奏している、その光景だけでも大きな祝祭感に満ちている。

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爽やかなメロディが駆け抜ける“Starting Over”、ヘヴィなロックサウンドが響く“1.2.3..4.5.6”、観客席のいたるところでタオルが舞い、拳が突き上げられた“マイリッチサマーブルース”、 メロウな“Summer Vacation”……さらに、小川がメインボーカルをとり、荒井のサックスも映えたダーク&ドープな“Babel”は小川、荒井、そしてサポートメンバーのDJによる3人のみで披露されるなど、ひとつのステージで様々な音楽性や演奏スタイルを見せていくその姿は、音楽の自由を体現しているようだ。ただ、どれだけ曲調はバラバラでも、どの曲にも深く刻まれたひとつの「芯」の存在を感じさせるところが、sumikaがsumikaたる所以である。

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MCでは、片岡があいみょんとの対バンに対しての思いを語る場面があった。「昨日は1日中、あいみょんを聴きながら街を散歩していました。散歩中にふと、小学4年生の頃に転校したヨシオカさんという人のことを思い出しました。僕はヨシオカさんのことが好きだったんです。でもヨシオカさんは海外に転校しちゃって。すごく泣いた記憶がある。このことを最後に思い出したのは成人式のときで、もう20年近く前のことだけど、あいみょんの曲を聴いていたら思い出して。この力ってすごいなと思いました。20年忘れていた好きだった人のことを思い出させる、そんな魔力を持った大好きなアーティストとの2マンということで……せっかくだから、どこでもやったことのない新しい曲をやってもいいですか?」──そう片岡が問い掛けると、観客たちの大きな拍手がそれに応える。演奏された「新曲」は、ピアノの旋律が印象的に響く、あいみょんの“初恋が泣いている”のカバー。披露されたのはワンコーラスだけだが、記憶をそっとすくい上げて、包み込むような美しい演奏だった。

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この日、初めての2マンとなったsumikaとあいみょん。彼らの初めての出会いは8年前の2016年だという。出会った頃のことを思い返しながら、片岡は「あいみょんの動向はこちらから探さなくても追えるし、ずっと近くにいて、いつでも会える存在だと思っていた」と語る。ただ彼はこう続けた。「……でも、大事なのは『ちゃんと会ってはいなかった』ということ。フェスですれ違うことはあるし、世間話をすることはあるけど、俺たちにとっての『会った』は、ステージを共にしたかどうか、だから。それでいうと、俺たちはこの8年間で1回もちゃんと会っていなかった。あいみょんが能動的に動いてくれたから、今日、俺たちは会えた。『いつでも会える』と思っていたら、絶対に後悔するんだなと思いました。だから俺も動かないと。会いたい人に会いに行かないと、絶対に後悔する。大事なことを教わったので、何年後になるかはわからないけど、また、あいみょんとsumikaで、ステージ上で再会したいと思います」
セットリストの最後を飾ったのは“運命”。《マイライフイズ共演さ》という歌詞が、この日だけの特別な意味を持つ。ステージを去る前に、片岡は「あいみょん、大好きだぞー!」と叫んだ。

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sumikaのパフォーマンスの興奮冷めやらぬ中、場内の照明が落ち、ステージ上の暗がりに人影が表れ、楽器の位置につくと、それを迎え入れるように観客たちからの拍手が会場を包む。その中でも、舞台袖からステージの真ん中まで軽やかに小走りで駆け寄っていくシルエットには、一段と大きな歓声と拍手が。照明がついて場内が明るくなると、迫力と包容力、そのどちらともを感じさせる7人編成のバンドの姿が照らし出される。真ん中にいるのはもちろん、あいみょん。会場のいたるところから彼女の名を呼ぶ声が聞こえる。東京公演一日目、あいみょんのライブが始まる。

あいみょんがsumika・スピッツと奏でた、愛と出会いの夜──対バンツアー「ラブ・コール2」全公演レポート〜Part4・東京編〜 - photo by 永峰拓也photo by 永峰拓也
期待と緊張感が膨れ上がって、膨張して、「静かに爆発寸前」といった感じの会場の空気を、ギュッと引き締めつつ解放するよう軽快なドラムのカウントからはじまった1曲目は“ジェニファー”。余計な飾り気はなく、でもリッチに響くバンドの演奏と、伸びやかな歌声は目が覚めるような素晴らしさだ。立て続けに“桜が降る夜は”を、曲の世界観を彩るようにピンク色の照明に照らされながら披露すると、「AIMYON vs TOUR “ラブ・コール2”へようこそ!」と挨拶をするあいみょん。まずはステージに立つスターらしく明快に声を張り上げるが、すぐに「こんばんはぁ~」と彼女の「素」である関西弁のイントネーションになる。「今日はsumikaとの初めての2マン。目撃してくださってありがとうございます」と告げると、続けて、sumikaのライブの熱狂的な盛り上がりに言及。特に観客たちが曲に合わせてタオルを振りまくる姿に衝撃を受けたようで、「照れ屋さんなファンが自分には多いと思っていたけど(笑)、sumikaの熱量に巻き込まれて自然と腕、上がっていたでしょ?」と、自身のファンたちに「ちょっと、見てたわよ」という感じで語り掛ける。この日のあいみょんは、演者のパフォーマンスだけでなく、ファンのノリも伝播し合いながら新しい景色が作られていく対バンライブの光景に「あれこそ音楽って感じがする」と喜びを露わにしていた。MCでは「今日は誰と来たの?」、「私のライブは初めて?」、「タオル見せてー」、「sumikaのタオルめっちゃ可愛くない⁉」と気の置けない友達と話でもしているかのように気さくに観客たちに話しかけ、挙句の果てには何人かの観客とは直接会話までしはじめる、あいみょん。名実ともに国民的なアーティストの彼女はしかし、とても自然な仕草で、ステージと客席の間にある境界線を飛び越えてゆく。

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太く強烈なビートに乗せてハンドマイクでステージ上を闊歩しながら歌う“愛を伝えたいだとか”、ゆるやかでエキゾチックな空気感が魅惑的な“ノット・オーケー”、普遍的な歌の力を感じさせる“マリーゴールド”や“愛の花”、清涼感溢れるメロディが逞しいバンド演奏によって一層際立つ“会いに行くのに”、そして、sumikaのライブに感化され、観客たちの持つタオルがフリフリと舞った“貴方解剖純愛歌 ~死ね~”……などなど、あいみょんもまた、ひとつのステージの中で様々な表情を見せていく。MCでは「sumikaのメンバーをそれぞれ何と呼んでいるか?」という話題も。「sumikaは『お兄ちゃんバンド』という感じがする」と語るあいみょん、片岡は「かたけんにーに」、荒井は「荒井さん」、小川は「おがりん」と呼んでいるという。「おがりんは、フェスで会っても変な歌を歌ったりして笑かしてくれる」と話す楽しそうにあいみょん。彼女の中で小川だけは、ちょっと独特な立ち位置らしい。

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「自分へのご褒美のようなツアーになった」と、対バンツアーに対しての喜びを噛みしめる場面もあった。終盤に披露された“夢追いベンガル”ではマイクを持ってステージを降り、興奮気味の観客たちとハイタッチを交わしながらアリーナを駆け抜け、喜びと音楽を体当たりでぶつけ合うパフォーマンスを見せた。ラストの“GOOD NIGHT BABY”演奏前には「私のファンの人も、sumikaのファンの人も、混じり合うようにして盛り上がってくれてありがとうございます」と告げ、さらに「かたけんにーにが言っていたように、またいつか必ず。次はsumikaが呼んでくれたりして」と、チラッと舞台袖を見やりながら再会への期待を言葉にした。最後の最後、お返しとばかりに「sumika大好きー!」と叫んだ、あいみょん。2組の8年越しの「本当の出会い」を祝福する、愛と熱気が溢れる夜だった。

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