クラクソンズ @ 赤坂ブリッツ
2011.01.11 13:00
昨年9月にも来日公演を行ってくれていたが(粉川しのさんによるライブレポートはこちら→http://ro69.jp/live/detail/40150)、そのときは東京・一夜限りのプレミア・ライブだったので、セカンド・アルバム『サーフィング・ザ・ヴォイド』を携えての2度目の、しかも東名阪ツアーという形になった今回の来日は嬉しい。結論から書いてしまうと、個人的に9月のショウは観ておらず、久方ぶりのクラクソンズであったので、飛躍的に力強さを増した彼らのライブ・パフォーマンスには驚かされた。今回のレポートはまだツアー初日のものなので、今後のステージに出掛ける予定の方は以下、ご注意下さい。ほぼ定刻にけたたましいサイレンのような“アトランティス・トゥ・インターゾーン”のシンセのイントロが鳴り響き、盛況な赤坂ブリッツのフロアが沸き返る。厚みのあるサウンドはサポート・キーボード奏者の操る同期に頼る部分が大きいものの、デビュー時期の楽曲も『サーフィング・ザ・ヴォイド』モードのヘヴィでラウドな質感に鍛え直されていることが分かる。クラクソンズ最大の個性と言えるジェイミー(Vo./B.)のファルセット・ヴォイスと、楽曲によってはリード・ヴォーカルを務めるジェイムス(Vo./Key.)の歌声が、不穏で重々しい爆音と未知のコントラストを描きながら届けられていった。“トゥー・レシーバーズ”では微妙なテンポ・チェンジを挟み込んで生バンドとしてのダイナミズムを生み出し、オーディエンスのハンド・クラップを誘いながら転がってゆく。もちろんそのアンサンブルには危うさが付きまとうのだけれど、まるで長く付き合ってきたポンコツ車を乗りこなすように、アンサンブルの不安定さも予め考慮されているとでもいった印象の堂々としたパフォーマンスなのである。かつてのクラクソンズは、そんな(雰囲気としての)頼もしい大物感を受け止めさせるバンドではなかった。華々しくデビューした頃の作品の評価に、ライブ・パフォーマンスが追い付いている。メンバーも、オーディエンスのレスポンスの良さには終始笑みを零しながら上機嫌であった。ジェイムスがニコニコしながら「タダイマ東京! ゲンキ!?」とフロアに向けて問いかける。ステファンがつんのめるような独自のグルーヴで鋭いビートを繰り出し続け、そして今回、とりわけ注視したくなったのはサイモンのギター・プレイである。彼のギターはバンド全体の音像からすると余り目立たないというか、従来のロックのギター・サウンドから掛け離れた、ユニークな効果音のような音色を響かせていることが多い。“ツイン・フレイムス”や“エコーズ”といったセカンド・アルバムの曲群が披露されているときに、ジェイミーがサイモンの名前をコールし、ひとりスポット・ライトを浴びながらリフを弾くという場面があったのだが、余りにも突飛なサウンドなのでちょっとおかしかった。そこではたと思ったのだ。ジェイミーのファルセットやけたたましいシンセ音はクラクソンズの表の顔だが、余りにも「ロックらしからぬ」サイモンのギター・サウンドは、ロック・バンドとしてのクラクソンズの目立たない屋台骨なのではないか、と。ニュー・レイヴは原因不明の熱病のように訪れ、原因不明のまま沈静化していった。際立った個性ゆえにニュー・レイヴの大本命に祀り上げられてしまったクラクソンズは、シーンの引き潮から脱するためにあの重いサウンド・デザインやライブ・パフォーマンス力の向上を迫られたのだろう。しかし、「消費されない、代役の利かない唯一無二のロック・バンド」たる姿勢表明は、予めあのサイモンのギターに、宿されていたのではないか。きらびやかなシンセ・サウンドと照明の閃光が同調して高揚感を誘う“マジック”、『サーフィング・ザ・ヴォイド』の最終ハイパー・トラック“サイファースピード”と連なってゆくクライマックスは素晴らしい盛り上がりを見せていた。本編最後にサイモンのギターは、フェイザーと空間系エフェクトがどっぷりと効いた、まるでパイプ・オルガンのようなサウンドを響かせていたのだった。ここまでの本編が1時間でアンコールは2曲。短い時間だったけれど、『近未来の神話』というビッグ・マウスを着実に現実へと引き寄せているクラクソンズをしっかり確認することができた。本当に、調子に乗ると恐ろしいバンドだ。明けて11日にはZepp TokyoにてPOLYSICS、the telephonesらと相見えるイベント『EX-PRESS ver.4/II.I.II』が、そして単独公演としては引き続き1/13に名古屋、1/14に大阪と公演が予定されている。今のクラクソンズの姿を、ぜひ見届けて欲しい。(小池宏和)