タヒチ80 @ 恵比寿リキッドルーム

タヒチ80 @ 恵比寿リキッドルーム
タヒチ80 @ 恵比寿リキッドルーム
昨年9月にベスト盤『シングルズ・クラブ』、そして今年2月に5枚目となるオリジナル・アルバム『ザ・パスト、ザ・プレゼント&ザ・ポッシブル』をリリースしたタヒチ80。もともと3月に予定されていたツアーは震災のため延期されてしまっていたが、その振替公演が6月25日に横浜ベイホールでスタートし、京都と大阪を回って今夜の恵比寿リキッドルームで最終日を迎える。

オープニング・アクトを務めるのは、フグ(Fugu)ことメディ・ザナード。1人でキーボードを弾きながら歌うシンプルなスタイルで、ハイトーンの歌声によるフランス語の歌詞が印象的。途中でアコースティック・ギターに持ち替え、2006年発表のアルバム『アズ・ファウンド』のオープニング曲“ヒア・トゥデイ”ではタヒチ80のグザヴィエが一足早く現れ、ギターとコーラスでサポートした。

15分間のステージ転換を経て、タヒチ80が登場。これまでライブのサポート・メンバーだったラファエル・レジェ(Dr)とジュリアン・バーバガッロ(Key/Percussion)が正式に加入して6人編成になった彼らだが、今回のツアーにはこのうちラファエルだけが帯同しているようで、キーボードの位置にはメディ・ザナードがついている。ステージ前方には、オリジナル・メンバーのメデリック(G)、グザヴィエ(Vo)、ペドロ(B)の3人(かねてから耳の問題を抱えているシルヴァン(Dr)は不参加)。

1曲目は新作『ザ・パスト、ザ・プレゼント&ザ・ポッシブル』からの“Solitary Bizness”。アニメーションの映像と、ステージ上に置かれた、色を変えながら光る4つのボックスが曲をカラフルに彩る。デビュー・アルバムの人気曲“I.S.A.A.C.”が終わると、グザヴィエが「日本に来られて嬉しいよ。次は飛行機に乗ることについての歌。また明日も乗らなきゃいけないんだけどね」と笑って話し、“Gate 33”に入る。

ほとんどの曲のあいだで気さくにMCを挟むグザヴィエは続いて「次の曲は日本の人たちのために歌うよ。元は9.11のために作られた曲だったんだけど」と語り、未発表曲集『ア・ピース・オブ・サンシャイン』収録の“Better Days Will Come”へ。アルバムごとに新たな領域を開拓してきたタヒチ80のキャリア全体から万遍なく披露される楽曲は、手法ひとつを取ってもエレクトロニックなものからアコースティックなものまで幅が広い。“Keys To The City”ではドラムとのタイミングが合わず、出だしを2度も間違えて笑いを誘った。

今夜最初のハイライトになったのは、「次の曲ではみんなにダンスしてほしいな。ね、danceって日本語で何て言うの?」と訊ねたグザヴィエが、オーディエンスからの「ダンス!」という返事に、「え、日本語はないの?…まあいいや、Let's dance!」とシャウトして弾き始めたインスト曲“Antonelli”。この曲から間髪入れずにダンス・チューンの“Big Day”に入ると、フロアは大歓声に沸く。

ライブ本編では、「1stアルバムからの曲をやるよ。最初のコードを弾くから、どの曲か当ててみて。当たったらその曲をやるよ。当たらなくても結局やるけど」という冗談から始まった“Made First (Never Forget)”の弾むようなビートも楽しかった。タヒチ80には“Memories Of The Past”のように、ストリングスを取り入れたオーケストラルな曲にも優れたものがあるけれど、今夜はどちらかと言えばダンサブルな曲が多めに選ばれている。グザヴィエがベースを弾きながら歌った“Crack Up”では、ラップトップとミキサー類を操るペドロによってDJセットのような雰囲気が作り出され、ブルーと紫を基調にしたクールなライティングの中、本編のフィナーレが盛大に締めくくられる。

繰り返されるボーカルのメロディが美しいバラード曲“4 a.m.”で始まったアンコールは、“Wallpaper For The Soul”、“1000 Times”、“Soul Deep”、“Yellow Butterfly”が続けざまに演奏される、まさに初期のベスト・ヒット的な内容。楽曲構成上の実験や曲のバラエティの豊かさがバンドの音楽性を多方面に広げる一方で、優れたポップ・ソングへの憧憬とグザヴィエのイノセントな歌声がどの曲にもタヒチ80ならではの個性を与えている彼らの魅力が凝縮されたセットだった。

タヒチ80 @ 恵比寿リキッドルーム
そしてダブルアンコール。「あと1曲聴いてもらえるかな?」というグザヴィエの言葉に、客席が期待していた曲はおそらくみな同じだったのではないだろうか。「みんな歌詞は知ってるよね? みんなが最初に聴いたタヒチ80の曲だと思うよ」。始められた曲は、もちろん“Heartbeat”。「僕が君のそばにいるとき/僕の鼓動を感じるかい?」と歌われるこの曲は、それ自体が1つの鼓動のように私たちの体を脈打たせ、生命を謳歌する夏を鼓舞するようにリキッドルームを包み込んだ。(高久聡明)


セットリスト
1. Solitary Bizness
2. I.S.A.A.C.
3. Gate 33
4. Better Days Will Come
5. Easy
6. Want Some?
7. Keys To The City
8. Antonelli
9. Big Day
10. Me & The Princess
11. Defender
12. The Past, The Present, & The Possible
13. Tune In
14. Made First (Never Forget)
15. All Around
16. Darlin'
17. Crack Up

アンコール1
18. 4 a.m.
19. Wallpaper For The Soul
20. 1000 Times
21. Soul Deep
22. Yellow Butterfly

アンコール2
23. Heartbeat
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