デジタリズム @ SHIBUYA AX
2011.10.08 11:45
1月のDJセットでの来日、7月のフジ参戦に続き、今回が今年3度目にして3年ぶりの単独ライヴ・ツアーである。デビューからまだ4年、リリースしたアルバムはまだ2枚、つまりはまだまだ若手の部類に属するデジタリズムだけれども、既にエレクトロ/ダンス・シーンにおいて突出した存在感と文脈を示しているデュオでもある。今年リリースされたセカンド『I LOVE YOU DUDE』では、歌物のポップネスをより洗練させ、温かなぬくもりと手触りを増したサウンドを新提示してみせた彼ら。ジャスティスと共に2000年代後半のエレクトロを革新させた存在であった彼らは、2作目の本作によって早くもその革新性すら包括する普遍の境地に辿りついたとも言える。厳然たる「ライブ・アクト」としてDJセットとは別格の評価を築いてきた彼らだけに、この日のSHIBUYA AXも見事にフルハウス。ステージ上手にイェンスとイシが使用するDJセットが、下手には生ドラム・セットが組まれていて、それぞれを数本のLEDスタンドがぐるっと取り囲むシンプルなステージ。そのスタイルはフジで見られたものと同様だ。バックには『I LOVE YOU DUDE』のアルバム・ジャケットを模したハート形のスクリーンが3つ設置されている。
イントロに続くオープニング・ナンバーは『I LOVE YOU DUDE』からの“Encore”。続く“I Want I Want”ではステージ中央にスタンドマイクを立ててイェンスが歌う。たとえばこの“I Want I Want”と続く“Forest Gump”を比べた場合、ファーストの『デジタル主義』における歌物と、セカンド『I LOVE YOU DUDE』における歌物では全く意味が違うのだということが、今回のライブの初めて理解できた気がした。『デジタル主義』におけるそれはあくまでも音のレイヤーの一種であり、翻って『I LOVE YOU DUDE』におけるそれはバックトラックの上位に位置する楽曲のテーマそのものであるということ。“Forest Gump”のジョン・ライドンを彷彿させるようなパンキッシュなボーカル・スタイルは新境地ではないか。むしろ「歌」である意味が一気に強くなっただけに、イェンスのヴォーカルのへなへなっぷりが今後彼らの課題になってくるのではないかと思えたほどだ。続く“Antibiotics”はイシとオーディエンスの生手拍子も交えてのハードでモノトーンなパーカッブ・ナンバーで、その直後のド派手なコズミック・チューン“Magnets”との対比も鮮やか。前半の流れは歌物のバラエティと打ち込み物のバラエティをそれぞれ別個に提示するようなセットだったと言い換えてもいいだろう。対する中盤はいわゆるデジタリズムのアンセムがドロップされる祝祭のサイドと化した。“Zdarlight”、そして客電もついてマックスの光量の中でプレイされた“2 Hearts”は間違いなくこの日の最大のクライマックスだった。この曲の歌メロはもうほとんど単なるニュー・オーダー、80Sにもほどがあるアナログなチューンなわけだが、この現時点におけるデジタリズムの究極のポップ・ナンバーを境にして、後半戦は徐々に混沌と先鋭の色を深めていく。アリーナ・クラスのコンサート会場からネオンカラーの点滅するクラブへとハシゴするかのような、さっきまでステージに向かって合唱を向けていたオーディエンスが一心不乱に踊り出すような落差とスリル。“Blitz”や“Circles”といった『I LOVE YOU DUDE』からのキャッチーかつポップなナンバーが、バキバキにプリミティブなフロア仕様に再構成され直されていくのが面白かった。むしろ『I LOVE YOU DUDE』の普遍性が、ステージ上で彼らにダンス・アクトとしての出自を再確認させる余裕を与えたと言えるかもしれない。
アンコールのラストはもちろん“Pogo”。4年前にこの曲を初めて聴いた時は「これ以上のアンセムをデジタリズムは今後書くことができるんだろうか?」と心配になるくらいだったけれど、そんな“Pogo”がこの日のセットリスト中で3指には入るけれども1番のクライマックスにはならなかったあたりに、彼らの現在形の勝利が高らかに象徴されていたように思う。(粉川しの)