avengers in sci-fi @ SHIBUYA-AX

avengers in sci-fi @ SHIBUYA-AX - pics by 橋本塁(SOUND SHOOTER)pics by 橋本塁(SOUND SHOOTER)
傑作ニュー・アルバム『Disc 4 The Seasons』を携えての、全国ツアーに先行するリリース・パーティ『2 Yang 1 Wrong –Live 4 The Seasons』。結成から10年目を迎えているavengers in sci-fiである。新作に寄せる自信がひしひしと感じられるような、そしてポジティヴな意味でアべンズらしくないとでも言うべき、生々しく人間臭い、それゆえの感情表現が剥き出しになる素晴らしいライヴであった。6月にスタートする全国ツアー『Force 4 The Future Tour』では、もっと凄いことになっているだろう。なお、ツアーでは7/19、渋谷クラブクアトロでの追加公演も決定したことがこの日のステージ上で発表されたので、そちらもぜひチェックを。

開演時間を迎え、ステージ上のスクリーンに映し出されたのは、神社の境内を定点カメラが捉える映像だ。ふいに、鳥居の影からひょっこりと、狐の面+甚兵衛姿の物の怪?が顔を覗かせる。愛らしくもあり、同時に不気味でもあり(筆者の近くでは小さな女の子の「こわーい」という声も聴こえる)。フッと掻き消えてしまったりもするその姿に目を奪われていると、ステージ上のアンプの影からもひょいと顔(狐の面)が突き出され、フロアにどよめきが走る。太鼓を抱えた狐が現れてはいたずらな仕草で拍子を刻み、そこにプログラミングされたダンス・ビートが重なって歓声が上がる。不思議なムードに後押しされた高揚感の中、3人のメンバーが登場してそれぞれのポジションに収まるのだった。

木幡太郎(G./Vo./Syn.)、稲見喜彦(Ba./Vo./Syn.)、長谷川正法(Dr.)の3人の歌声が、アップリフティングなトライバル・ビートに乗せてさっそく放たれる先行デジタル・シングル“Yang 2”。若き男女を一息に巻き込んでゆくオープニングだ。ここから“Psycho Monday”へと連なる流れは『Disc 4 The Seasons』と同様である。アべンズらしいダンス・ロックでありながら、旋律の一部に、或いは歌詞の断片に和の情緒を忍ばせている。これらは、タイトルどおりに四季がテーマとして掲げられた新作を構成する要素でもあるだろう。アルバム特設サイトの解説によれば、この辺りのナンバーは「春」のイメージを担っているのだそうだ。

ジャケット姿の稲見が身振りを加えながら歌う“Wonderpower”が「Go! Go!」と勢いに満ちた掛け声と共に披露されると、木幡が「AXありがとう! なんか今日は、スーパームーンらしいぞ。月から変なもんが降りてきたな。今日は狂ったように踊ってってください!」と告げ、狂騒の電子盆歌と呼ぶべき“Beats For Jealous Pluto”が繰り出される。過去の楽曲群も肉体的な躍動感に満ちたパフォーマンスだ。長谷川は沸騰するフロアを笑顔で見つめながら、跳ね上がるビートを叩き出している。

眩いサウンドスケープの中からしっかりと歌が届けられ、確信に満ちたロックなリフで転がるのは“Pearl Pool”。そしてドリーミーな高揚感の中へと駆け上がってゆく“Skywalker”が、トンネルの中をくぐり抜けるようなCG映像と共に披露された。アルバムでも感じたが、どの曲もソング・ライティングに艶と華を感じさせてくれている。「今日はこどもの日だなあ。子どもみたいに楽しんで、ってベタなこと言ってもいいですか? ありがとう、なんか人気のあるバンドみたいだな。こんなに人が集まってくれて」。慎重に言葉を選ぶ印象の木幡だが、そんな彼の全身からも高揚感が溢れ出てしまっている気がする。序盤からずっと、軽やかなステップを踏みっぱなしである。

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ここで、アルバムの中でも中盤の大きなポイントを担っていた、“Stairway To The Sun. I”と“II”の組曲スタイルの大作へ。美しいコーラス・ワークに彩られた、極めてドラマチックでエモーショナルな「出会い」の物語だ。“I”を木幡の熱いシャウトが締め括っても、“II”が更にファンキーに突き進んでゆく。“Wish Upon The Diamond Dust”では、視界を覆い尽くすような雪がフロアへと舞い落ちてきた。差し込む照明を反射して、余りにも美しい光景だ。ここから稲見のヴォーカルが映えるロック・ナンバー“Starmine Sister”へと連なるセットも見事だった。“Wish Upon The Diamond Dust”の歌詞に引っ掛けて、木幡が「天使が雪を降らせてくれたかな。天使の名前はミヤシタって言うんだ。マネージャーに無理にお願いしたら降らせてくれた。みんな、雪の中わざわざ来てくれてありがとう」と冗談めかして話す。

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新作の世界観を中心に練り上げられたステージの終盤は、“Wish Upon The Diamond Dust”と共に「冬」のイメージを形作る“Two Lone Swallows”。その後には「Are You Ready!?」と声が上がって“Universe Universe”から“Homosapiens Experience (Save Our Rock Episode.1)”と必殺ナンバーが続き、うわ、まだこれが残っていたかという“Sonic Fireworks”へ。鉄壁である。咲き乱れる花火の映像が、楽曲とシンクロして流される演出も最高だ。辿り着いた本編ラストは、3人のメンバーが揃ってスティックを振るい、そこに太鼓を担いだ狐軍団が飛び入りしての“The Planet Hope”。アルバム同様のクライマックスである。《せめて狂ったようにハグして》。エレクトロニックな祭り囃子の中、この曲はそんな切実な歌い出しから始まるのだった。

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アンコールではまず長谷川が、文頭のツアー追加公演決定について発表しながら、「みんな来てくれるのは分かってるんだけど、絶対また遊びに来てくれ!」と念を押す。木幡は、新作収録曲のうち今回のステージで唯一プレイされなかった“Lady Organa”について、音源とスマートフォン用無料アプリ【Toneconnect】を使った仕掛けがあるから遊んでみて、と紹介していた(詳しくは『Disc 4 The Seasons』特設サイトをご覧ください)。そんな斬新かつユニークなアイデアも含めて、『Disc 4 The Seasons』はアべンズのフューチャリスティックなサウンドが生々しいエモーションと躍動感に裏打ちされ、強い求心力を放つ作品になった。

ギター、ベース、ドラムスというオーソドックスな3ピース・バンド編成のまま、機材の要塞に埋もれて新しいサウンドを目指してきたアべンズは、活動そのものがロマンと希望に満ちたメッセージだったと言える。ただ彼らはその一本気な向上心の先で、もしかすると浮世離れしたピーターパンになってしまうことを恐れたのではないだろうか。アートの分野のすべてがそうではないかもしれないが、受け止めてくれる人とのリアルな交感を目指すロック・バンドにとって、独りよがりな夢想ですべてが完結してしまうことは恐怖に他ならないはずだ。

『Disc 4 The Seasons』の生々しさ、これまでの音響の冒険をすべてツールとして使いこなすようなしなやかさ、狂おしいぐらいに積極的に訴えかけるソング・ライティング、そして四季というアルバムのテーマはすべて、それに触れるものとの強い結びつきを、世界との関わりを目指している。素晴らしいロック・アルバムだ。それはちょうど、優れたSF作品が、現実社会に鋭く訴えかけてくる姿と、良く似ている。木幡がこの夜のスーパームーンについて話していたからだろうか、アンコールの最後は“Odd Moon Shining”だった。アべンズはこんなにもロマンチックで、そしてリアルなバンドだ。ぜひ新作に触れて、ツアーに出掛けてみて欲しいと願う。(小池宏和)


avengers in sci-fi @ SHIBUYA-AX
セット・リスト

01: Yang 2
02: Psycho Monday
03: Wonderpower
04: Beats For Jealous Pluto
05: Delight Slight Lightspeed
06: Pearl Pool
07: Skywalker
08: Stairway To The Sun. I
09: Stairway To The Sun. II
10: Radio Earth
11: Before The Stardust Fades
12: Wish Upon The Diamond Dust
13: Starmine Sister
14: Two Lone Swallows
15: Universe Universe
16: Homosapiens Experience (Save Our Rock Episode.1)
17: Sonic Fireworks
18: The Planet Hope

アンコール
01: Nayutanized
02: Odd Moon Shining

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