電気グルーヴ vs 神聖かまってちゃん @ LIQUIROOM ebisu

Photo by佐藤哲郎
リキッドルームの8周年企画シリーズのひとつで、この2組が対バン。と、最初にきいた時は「おお、いい組み合わせ!」と喜んだものの、そしてなんとなく合う気がしたものの、よく考えたら、結構違う。というか、全然違う。たとえば、「むちゃ」とか「反則」という意味合いにおいては、初期の電気、あるいは電気の前身バンドである人生と、今の神聖かまってちゃんは近いような気がしないでもないが、その「むちゃ」や「反則」の方向性、冷静に見たら、全然一致しないし。
というわけで、おそらく、お互い興味はあったかもしれませんが、それ以上の何か特別なものは特になかったのでは、と思います。単にリキッドからオファーが来て、別に断りたいとか思わなかったから出たんだと思います。ゆえに、こっちも、単に「観たいものを2つ一緒に観れる」というフラットなスタンスが正しい気がする。というようなことを考えながら、リキッドに向かいました。

しかし。先攻、神聖かまってちゃんの1曲目が終わる頃には、「ああ、これ、ライヴレポしに来てよかった」と思った。ちょっと新鮮なライヴだったのだ。どこが。「本来ライヴモードじゃない時期にやっているライヴ」というところがです。の子によると、今、レコーディング中らしくて、でもこれに出るのは決めてたからライヴやりに来ました、という感じだった。そんなかまってちゃん、めずらしくないですか? 僕は新鮮に感じた。ライヴモードもレコーディングモードもクソもねえ、みたいなバンドだと思ってので。
なので、「ギターのチューニングが合わない」と何度もブツブツ言ったり、チューニングを劒マネージャーに直してもらったり、それでに気に食わなくて結局ギターを置いて歌ったり、MCがわめきちらしすぎで、いつもに輪をかけて何言ってるんだかわからなかったり、そしてわめきちらしてはいないmonoもいつもに増して何言ってるんだかヒアリング不可能だったり、でっかく高い声での子のしゃべりに割り込んでくるみさこ、今日はうまくその会話に入れなかったり……というように、全体に、かなりジャンクな仕上がり。ただ、「もうすべてがドキュメント」であり「そのままをさらせばさらすほどエンタテインメントになる」のが神聖かまってちゃんというバンドであって、なので、曲が進むごとに、どんどん生々しくスリリングになっていく。
Photo by佐藤哲郎
あと、ほかにいいライヴになった要因としては、とにかくきびきびと次の曲にいこうとするちばぎんの進行がよかったのと、そのちばぎんとみさこのプレイそのものがよかったのと(これまでにないくらいグルーヴィーに感じた)、曲によって忙しく出たり入ったりしながらプレイするサポート・メンバーおふたり(ヴァイオリンとギター)のがんばりが光っていたとか、いろいろありました。それから、セットリストがよかった、というのもあります。
以下です。ね。いいでしょ。

1.知恵ちゃんの聖書
2. ロックンロールは鳴り止まないっ
3. 天使じゃ地上じゃちっそく死
4. 白いたまご
5. 友達なんていらない死ね
6. 通学Low
7. 聖マリ
8. 黒いたまご
9. 22才の夏休み
10. いかれたNEET
11. 学校に行きたくない

そのほかのハイライト、2つ。

・の子の1回目のMC。「今日は、リハが一番いいライヴでした」。フロア、大笑い。

・後半のMCの時。の子、飲んだペットボトルを、monoのところにあるシンセドラムのパッドの上に置きました。「ドンッ!」と音が出ました。って、そりゃ出ますが、フロア、びっくりし、そしてどっと笑う。メンバー、「そこに置くんだ?」とつっこむ。私も笑いました。

Photo by 成瀬正規
そして。後攻、電気グルーヴですが、ステージにブースが運び込まれ、石野卓球とサポートのagraph牛尾憲輔が登場して、音が出て、DEVICE GIRLSによる映像が流れ始めたあたりで、「あ、しまった。これ、ライヴレポしに来て失敗」と思った。なんで。この3日後=7月28日土曜日24:00、RED MARQUEE「TRIBAL CIRCUS」のステージと、まったく同じ、もしくはまったく同じではないにしても限りなく近いメニューであろうことに、気がついたからです。つまり、曲目・曲順・演出・構成など、書くと力いっぱいネタバレになる、だから書けない、ということです。たとえばWIREはステージもハコもでかいし、全然違うメニューに変えるという可能性もあると思うが、中3日で、ステージの規模がそう違わないリキッドとRED MARQUEEだったら、普通、同じセットでやる。電気に限らず誰でもそうだ。もっと言うと、このリキッド自体を「フジの試運転」と位置づけている可能性だってあるわけで、ああもう、レポを申し込む前に気づけよ俺、という話です。

で、また、悔しいことに、最っ高のライヴだったのだ。「ファン以外も知ってる過去の代表曲」「ファン以外は知らないけどファンにとってはとても大事な過去の曲」「最近の曲」の3つが混ざったセットリスト。で、電気なんだから当然過去の曲たちもリアレンジされているし、そしてそのリアレンジの方向がもういちいち超正しくて超かっこいいし、瀧も卓球も楽しそうでテンション高いし、あと私、電気のライヴ、3月のお台場の「Star Fes.」も4月の「キューン20イヤーズ&デイズ」も観れなくて大変に久しぶりだったし、もう、ああもう、本当に、至福でした。
電気がこうして普通にライヴをやっている、ということの得がたさ、ありがたさ、貴重さなどを、観ながら何度も何度も反芻した。しまいには、「もう、電気されいてくれればいいや」とまで思った、正直。「そういうのが『オールナイトニッポン』育ちのおまえらの一番イタいとこ!」(この日のMCより)と卓球に言われそうだが、自分がそういう、日本中にいる「電気グルーヴ絶対主義者」のひとりであることを、改めて思い出した。明るかったり暗かったり、テンション高くなったり低くなったり、今はこうしてカジュアルにライヴやってるけど長らく全然活動しない数年間もあったり、いろんな時期があったけど、「間違えた」ことは1回もない、電気は。サムくなったことも、みっともなくなったことも、しょぼくなったことも、恥ずかしくなったこともない。本当に、こんなにファンを裏切らない存在、ほかにいないと思う。ほんとはさすがにそろそろ新しいアルバムが聴きたいけど、今年はシングル出たし、もしそれでがまんしろと言われても、納得します。本当に、1分1秒でも、長く電気が続いてほしいと願う。
フジで観れるみなさん、ぜひお楽しみに。私も観ます。(兵庫慎司)
Photo by 成瀬正規