凛として時雨 @ Zepp DiverCity

All pics by 河本悠貴
最初の一音が鳴った瞬間にZepp DiverCityを支配する、冷徹な爆風のような音世界。3ピースのロック・バンドという枠組みを遠く置き去りにした次元で鳴り響く、熾烈なる極限の美に満ちたアンサンブル……全国10ヵ所のライブハウス公演、そして6月28日の日本武道館ワンマンまで続く『凛として時雨TOUR 2013“Dear Perfect”』の初日、東京:Zepp DiverCity。時雨のツアーとしては2011年の『TOUR 2011“αβ+1”』以来約1年半ぶりということで、ぎっちぎちにフロアを埋め尽くしたオーディエンスの飢餓感が開演前から尋常ではないテンションを生んでいた。が、前作『still a Sigure virgin?』から2年半の時を経て、最もソリッドで強靭な時雨の「今」を最新アルバム『i'mperfect』に結実させたTK/345/ピエール中野の鳴らすサウンドは、まさに初日から絶頂そのもの。Zepp DiverCityに渦巻く期待を遥かに上回る圧巻の音像で、会場丸ごと驚愕と感激の彼方へと鮮やかに導いてみせる、最高のステージだった。

まだツアーが始まったばかりなのでセットリスト掲載は割愛するが、シングル曲“abnormalize”をはじめアルバム『i'mperfect』の楽曲群を軸としつつ、1時間半ほどのセットの中に時雨ヒストリーを凝縮するような意欲的な内容。交感神経を切り刻むように鳴り渡る“Beautiful Circus”でのTKの超速プレイに、ひときわ強烈に胸に噴き上がってきた戦慄と畏怖。クリーントーンの残響音の果てに轟々たる音の銀河を生み出した“キミトオク”の無上の恍惚感。“abnormalize”のサビで悲壮なまでに狂おしく麗しく絡み合う、TK&345のメロディとハーモニー……それらひとつひとつが、触ると弾けそうなほどの緊迫感と熱量をもって、心と身体に飛び込んでくる。メランコリックなバラード・ナンバー“Missing ling”が聴く者すべての脳内風景を真っ白に染め上げるように目映くスパークした場面は、全編クライマックスのようなこの日のアクトの中でも特に鮮烈な感動をもって胸に残った。

そして、『i'mperfect』でアンサンブルをよりソリッドかつダイレクトに研ぎ澄ませたことによって、ひときわ露になった時雨の音楽の本質――フィクションとしての異世界の魔物を描き出して悦に入る衝撃映像的音楽ではなく、誰もが己の中に抱いている壮絶なる異物の存在を指し示すための、苦悶や軋みに満ちた表現としての時雨――が、この日のライブではさらにくっきりと浮き彫りになっていた。そんな時雨の音楽が、僕らの魂を揺さぶり続ける獰猛でエモーショナルなロック・ミュージックたり得ているのは、3人それぞれのプレイヤー/アーティストとしての類稀なるポテンシャルのみならず、時代への/人間への批評眼の鋭利さと揺るぎなさゆえである、ということも、この会場にいた誰もが改めてリアルに感じていたに違いない。

中盤の「P'S CORNER」ことピエール中野のMC&ドラムソロ独壇場コーナーで「わりと久しぶりにこうやって人前でしゃべるっていうね。ツアーも1年半ぶりぐらいなんで。久々ですねみなさん! お変わりなく!」と呼びかけるピエールの語り調子こそまだこなれていなかったものの、オーディエンスとのコミュニケーションでフロアの温度を天井知らずに上げていくエネルギーはさすがだ。「Say、バイブス!」「タマスジ!」「ランランルー!」といったお馴染みのコール&レスポンスに加えて、ピエール自身「一度やってみたかった」という「ピエール『バイブス!』→観客『(無反応)』という自虐プレイ」でひとりアウェイ感を味わってみたり、この場の狂騒感を全身で心行くまで堪能しているようだった。「今日でここZepp DiverCityは1周年らしいので……よい1周年になっていたらいいなと思います」とおずおず語った345のMCも、フロアの熱い歓声を巻き起こしていた。

音圧よりもその音楽世界のスケール感と凄絶な世界観に圧倒された1時間半は、体感時間的にはあっという間に過ぎていった。次回公演=5月3日・香川:高松MONSTERから全国をサーキットする『凛として時雨TOUR 2013“Dear Perfect”』。初日からこれだけの完成度を見せていた3人、ツアーの果てに辿り着く武道館公演『凛として時雨TOUR 2013“Dear Perfect” ONEMAN LIVE at 日本武道館 ~10th Tornado Anniversary~』ではどんな世界を見せてくれるのか?――と想いを馳せるだけで胸躍って仕方がない。それほどの名演だった。(高橋智樹)