WHITE ASH @ SHIBUYA-AX

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昨年12月にリリースしたセカンドフルアルバム『Ciao, Fake Kings』を引っ提げたワンマンツアー「Lilium」のファイナルとなったSHIBUYA-AX。会場に入ると、聴こえてきたのはニルヴァーナの『ネヴァーマインド』。アルバムのジャケやツアータイトルと引っ掛けたお出迎えに、開演前からニンマリさせられた。

WHITE ASH @ SHIBUYA-AX
そして、SEであるthe pillowsの“White Ash”が流れ出すと、満員のオーディエンスが一斉にハンドクラップ。そして始まった1曲目は、その“White Ash”のカヴァー! 2月にリリースされたばかりの、the pillowsのトリヴュートアルバムにも、この曲で参加した彼ら。バンド名の由来となった楽曲でトリヴュートアルバムに参加するなんて、何て素敵な巡り合わせだろうと思っていたが、ライヴでも先人へのリスペクトと今の自分たちを、ド頭から思いっきりアプローチする展開。ロックを愛する彼ららしいと思う。さらに続けて、“Crowds”、“Number Ninety Nine”と、アグレッシヴなナンバーを畳み掛けていく。英詞も滑らかな歌と、小気味いいビートが生み出す、ブレのないグルーヴに、フロアには手があがりっぱなしだ。

WHITE ASH @ SHIBUYA-AX
のび太「いや~、何と、今日はツアーファイナルです。長かったような短かったような……どっち?」、山さん「短かった」、のび太「僕は長いと思ったよ」と、最初のMCで正直に意見が割れたところで(笑)、“Extreme”から再び演奏へ。のび太も山さんも彩もぐいぐい動いた“Ray”、勢いある剛のドラムからバンド感が楽しめた“Thunderous”……ツアーファイナルの成果が赤裸々になっていく。何となく線が細いイメージで受け取られているかもしれないバンドだが、そのサウンドやパフォーマンスは実に骨太。体の芯から突き動かされるようなパワーに溢れているのだ。だからこそ、隙間に見せる人の良いキャラクターとのギャップが堪らない。この日も、オーディエンスの声援にも、手をあげたり返事したりと、マメに応えていた。

WHITE ASH @ SHIBUYA-AX
中盤は、「音楽ってルールがないから、自由に楽しんで欲しくて(アルバムを)作った」というのび太のMCの真意が、より伝わってくるようなセットリストへ突入。特に「僕がとびきり楽しめる曲」と前置きした“Zodiac Syndrome”は、ゆったりと踊る心地好さを、思いきり提示してくれた。続く“Vain Promises”や“Under The Lightless”もそうだったが、ミドルテンポの楽曲は、ライヴだとさらに魅力を増す。速い楽曲で一体感を味わう傾向が強い昨今のライヴ事情の中で、このさり気ない主張は、オーディエンスにも徐々に伝わり始めていると思う。さらに彼らは、「次の曲は、山さんからギロさんに変身します! みなさん、一緒に踊りましょう!」なんて山さんがギロを抱えて改名までした(!!)“Bacardi Avenue”、「次の曲はひと癖あるので、みんなついてきて下さいね!」とのび太が付け加えた“Delayed”と、入口を広げることも忘れない。

WHITE ASH @ SHIBUYA-AX
ライヴで聴くのが楽しみだった、みんなの歌“(Y)our Song”で、照明も空気もパーッと明るくなったところで、山さんのMC。このツアー、何処も楽しかったけれど、名古屋で指から血を流したり、福岡でお尻を強打したり、トラブル続きだったこと。だから、飲み屋で出会った住職さんにお札を作ってもらったこと。「このおかげで、今日はトラブルなしでーす!」と胸を張る山さんに、「わかんないけどね、まだ途中だから」と冷静に突っ込むのび太。このコンビネーションもライヴならではだ(笑)。そして、のび太が「昨日がホワイトデーだったんで、僕らからのお返しで」と言って披露されたのは“Would You Be My Valentine?”。スウィートに酔いしれてバンドもオーディエンスも横ノリに。その流れで、あたたかな“Long Time No See”でも、ゆらゆらと揺れるオーディエンス。こういった曲調でも、聴き入るだけではなくフロアの身体が揺れるあたりは、流石WHITE ASHのライヴである。

ここからさらなる展開が。ギターを置いたのび太が、「まだまだ行けるって人!?」と問い掛けたら、終盤に向けて導火線に火を点けた合図! “Paranoia”、“Velocity”、“Jails”と、キラーチューンの連発に、フロアからはコールとクラウドサーフィンも続出し、これでもかと言わんばかりに温度が上がっていく。最後は「またライヴハウスで会いましょう!」というのび太の言葉から“Casablanca”へ。思いを燃やし尽くすようにして本編を終えた。

WHITE ASH @ SHIBUYA-AX
止まないアンコールに応えて、まずは山さんが一人でオン・ステージ。このツアーから金髪にしたということで、黒髪が良かったと思う人、金髪が良いと思う人、それぞれに手をあげさせて多数決をとる(結果、山さん曰く「ざっくり金髪」でした)。そして3人が出てくると、のび太に振られて彩も「楽しい!」と一言。しかし、お楽しみはさらに続いていた。スペシャルゲストとしてLilium聖歌隊が登場し、美しいコーラスと共に季節外れのクリスマスプレゼント“Xmas Present For My Sweetheart”が贈られたのだ。何と雪まで舞う演出も! 最後は“Kiddie”と“Stranger”、トドメに青く輝くテープも噴き出し、熱狂を高め切ってステージを降りた。

WHITE ASH @ SHIBUYA-AX
「去年、本格始動5周年を迎えて。これからもカッコいい音楽を作っていきたい」と決意も語っていたのび太。このツアーは全個所ソールドアウトとなった。彼らの意志は、一つ一つ積み上がって、少しずつだが世の中を動かしつつある。これからも、この真摯でピュアなバンドに期待してならない。(高橋美穂)
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