昨年10月にリリースされたニュー・アルバム『1989』を引っさげての最新ツアー「ザ・1989・ワールド・ツアー」を5月5日(火)・6日(水)の日本公演よりスタートさせたテイラー・スウィフト。
RO69では、昨日5月6日(水)に行われたツアー2日目、東京ドーム公演のオリジナル・レポート記事を公開しました。
―――――――――――――――――――――――
【テイラー・スウィフト @ 東京ドーム】
あらゆる意味で期待、想像以上の素晴らしいエンターテイメントだった。テイラー・スウィフトが最新作『1989』を経て到達した境地、2015年に相応しいポップ・アイコンの新しいあり方を示したステージだったと思うし、そんな彼女と日本のロイヤルなファンの絆みたいなものも、強く、強く感じた東京ドームだった。
『1989』ワールド・ツアーをここ日本からキックオフしたテイラーの意気込みも並々ならぬものがあったと思うが、『1989』のオープニングにならい“Welcome To New York”で幕を開けたこの日のステージ、暗転と共に沸き起こった大歓声もまた、ツアーのスタートの地に選ばれた日本のファンの興奮と喜びに満ちたものだった。ブロードウェイのネオンと夜景が映し出されたステージに12人の男性ダンサーを従えテイラーが登場すると、その歓声はさらにヒートアップする。文字通りブロードウェイ・ミュージカル調の振り付けとフォーメーションで1曲歌い終えたところで、スパンコールのジャケットを脱ぎ、黒のビスチェとパープルのマイクロ・ミニスカートになったテイラー、2曲目は『1989』でもとりわけエレクトロでダンサブルな“New Romantics”で、『1989』と今回のツアーの傾向が冒頭2曲ではっきり示された格好だ。“Blank Space”は最初の合唱ポイントで、テイラーがステージ中央の花道を歩み進めるとさらにさらにさらに大きな悲鳴のような歓声で包まれる。今回のツアーのステージは至ってシンプルで、メインステージとこの花道のみがテイラーの歌うスポットということになる(後に花道は驚きの可変を見せるのだが)。
開演前に観客全員に配られたブレスレットが赤く光り、ハードエッジなイントロでがらりとムードが変わったところで黒のビキニとホットパンツに着替えた彼女が再び登場し、“I Knew You Were Trouble”が始まる。半裸のダンサーと絡みながら踊るダンスがセクシーだわ、激重のベースとバスドラとばんばん吹き上げるスモークがめちゃくちゃロックだわ、髪振り乱し歌うテイラーが男前だわで最高のパフォーマンスで、オープニングからしきりに「かわいい!」「テイラー、かわいいい!」と叫び続けていた筆者の後ろの席の女の子たちの歓声が「かっこいい!」「テイラー、かっこいいい!」に変わるくらい、まさにキュートとクールをくるくる行き来して輝いていたのがこの日のテイラーだ。
「日本に戻って来られて本当に嬉しい。これまでZeppや武道館でもコンサートをやってきたけれど、今日は55000人のスタジアムだなんて信じられない」とテイラー。感極まった様子でぐるっと55000人超満員のドームを見渡す彼女の表情も印象的だ。レーザーが交錯する演出もディスコテックな“I Wish You Would”、そして個人的にこの日の演出で最っっ高に楽しかったのが“How You Get The Girl”。ネオンカラーに光る傘がそこかしこで回されるミュージカル調の演出に加え、ピンク・ドットのAラインのスカートをふんわり揺らめかせながらスキップするように歌い踊るテイラーがもうとにかく可愛い、可愛いってこんなに幸せな気分になるものなのか!っていうくらい可愛い! この曲に象徴されるように、『1989』ツアーはネオンカラーとスパンコールとビジューが煌めく非常にカラフル&シャイニーな世界観が特徴で、スワロフスキーでデコったマイクといい、ツアー・ロゴがピンクと水色でもろ「キキララ」カラーだったことといい、そこらへんも日本の「カワイイ」との親和性がすごく高いツアーだと思った。
ギター・ソロのインタールードを挟み、白のビスチェとホットパンツに着替えての“I Know Places”はダブステップのリズムがこれまた『1989』での新機軸を証明するナンバーで、25歳のテイラー・スウィフトの現在地を示すような大人っぽくソウルフルな歌声もばっちりはまっている。ちなみに今回のショウの転換にはセレーナ・ゴメスやハイムらテイラーの友達が登場し、彼女にまつわるエピソードを語る映像がインサートされる構成で、だいたいこの映像が衣装替えのタイミングになっていた。
ブルーのビスチェにシンプルなブラック・パンツに着替えたテイラーが花道の切っ先に立つと、そのまま花道がするすると上昇し、縦長のフロート装置になる。フロートの上でアコースティック・ギター1本で弾き歌った“You Are in Love”以降の数曲は、恋や友情、孤独や挫折についてファンにしきりに話しかけながら歌い進む様も含めて、テイラーの原点を彷彿させるシンガー・ソングライターとしてのパフォーマンスのナンバーだ。「17歳の時に『ロミオとジュリエット』からインスパイアされた曲よ」と紹介して“Love Story”のピアノをぽろろんと弾き始めるテイラーの姿は、2011年の武道館公演の頃の彼女を思い出させてくれるものだった。あの頃の彼女は典型的な「アメリカン・ガールフレンド」であり、カントリーに出自を持つSSWという捉えられ方だったわけで、改めて『1989』でテイラーが遂げたエレクトロ化、ポップ化のインパクトを確認しないではいられない。
ホワイト・スパンコールのミニドレスに着替えての“Style”はまさにそんな『1989』のエレクトロ&ポップを象徴するサウンド&パフォーマンスで、インダストリアルでヒップホップなアレンジが効いた“Bad Blood”では上下黒のボンテージ風スーツも合わせてめちゃくちゃ格好良い。男子ダンサー相手に「逆壁ドン」する小芝居も、180センチの長身のテイラーがすると様になりすぎていてちょっと笑ってしまった。
テイラー・スウィフトの「ポップ化」とは、マドンナやガガのように鉄壁の世界観と共にリアリティを超越していくものではないし、ビヨンセのようにスーパー・プロフェッショナルな歌とダンスによるエンターテイメントの正義、というものでもない。テイラー・スウィフトの魅力とは、いかにポップ化しようとも彼女自身は「そのまんま」であることだ。「唯一無二のポップ・アイコンであり、同時に“普通”である」といういまだかつてないタイプの存在に彼女が成り得たのはこのSNS時代の必然かもしれないし、一昔前の憧れのワナビーと言うよりも、より共感、共振に近い関係性がテイラーとファンの間にはある。テイラーが恋多き女というか男運がない女子であることをファンはみんな知っているし、そんな彼女が「ぜったいあんたとヨリなんて戻さないんだから!」(“We Are Never Ever Getting Back”)と歌う時の、あの「ウィー!イー!」の大合唱のカタルシスはまさにその共感と共振の産物だ。
ピアノの弾き語りからゴージャスなバンド・サウンドのクライマックスへと雪崩れ込んだ“Wildest Dreams”、凧が飛び交い、紙吹雪が舞い散った“Out Of The Woods”、そしてラストはもちろんこの曲“Shake It Off”!遠心力が生まれるんじゃないかってくらいの高速で回り続けるフロートの上でダンサーたちと縦一直線になって踊りまくるテイラー、飛び跳ね、全身でシェイクしてそれに応えるファンの歓喜、揺れまくるフロア、そしていつまでも鳴り止まなかった拍手と歓声。ちょっと泣きそうになるくらいの、共感の先の多幸感に満ちたフィナーレだった。(粉川しの)
1. Welcome To New York
2. New Romantics
3. Blank Space
4. I Knew You Were Trouble
5. I Wish You Would
6. How You Get The Girl
7. I Know Places
8. All You Had To Do Was Stay
9. You Are in Love
10. Clean
11. Love Story
12. Style
13. This Love
14. Bad Blood
15. We Are Never Ever Getting Back
16. Enchanted / Wildest Dreams
17. Out Of The Woods
18. Shake It Off
―――――――――――――――――――――――
なお、テイラー・スウィフトはこのあと5月15日のロック・イン・リオ・USA出演を経て、5月20日より「ザ・1989・ワールド・ツアー」のアメリカ公演を敢行予定となっている。