「ギタ女」という言葉が浸透したのはここ最近のことだけど、今の若い女の子たちがアコースティックギターを手にするきっかけになった存在としてYUIの名前を挙げることはとても多い。山崎あおいや藤原さくら、井上苑子など、新世代のシンガーソングライターたちがYUIに影響を受けたことを公言している。思えばYUIがデビューしてから、ちょうど10年。彼女の歌を聴いていた女の子たちがデビューするには、十分な時間が経っていたのだ。
YUIとしての活動休止から、FLOWER FLOWERの始動、そして入籍と妊娠のニュースと、ここ数年様々な変化があった彼女。そんな中、この夏、YUIとして8年間の活動において制作されたミュージックビデオの全てをパッケージしたBlu-rayとDVD『FIND ME YUI Visual Best』がリリースされた。
DISC1の1曲目“It's happy line”から、だだっ広い土手のような場所にあぐらをかいてギターを掻き鳴らして歌う姿が飛び込んでくる。彼女の地元である福岡の天神駅で路上ライヴをする様子なども生々しいが映画のワンシーンのように美しい。デビュー当時の、まだ何者でもなかった彼女に、衝撃的なほど魅了される映像である。
その後も舞台は東京へと移ったりしながら、YUIのMVは基本的に、彼女が大好きな海辺や、どこにでもあるような田舎道、一人暮らしの部屋のような場所で撮影されていることが多く、衣装もパーカーにジーンズといったラフなものばかり。メイクだってごくナチュラルで、マスカラさえ整えれば、もう何も必要ないくらいに端正な顔立ちは同じ女性ならば思わず「ズルい!」なんて言いたくなるほど。そう、ロケーションが田舎であればあるほど、衣装がラフであればあるほど引き立つ、YUIがそこで歌っているだけで胸をキュッと締め付けるような存在感がある。
しかし楽曲同様“CHE.R.RY”のMVは彼女のポップさを全面に押し出したある意味異質なものであった。桜が舞い散る窓辺に腰掛け、ガーリーな白いワンピースを身にまとい恋心を歌ったこの曲の大ヒットにより、彼女はその後もキュートなラブソングを歌うポップシンガーとしてのイメージを背負いながら活動を続けていくことになる。
メイキングやCMスポットなども含む3枚組。今回の映像作品を通じてYUIのヒストリーを辿りながらわかるのは、地元の路上でも、上京してからも、そしてブレイク後も、いつでもYUIは歌いながら「特別な居場所」を求め続けてきたということ。“LOVE&TRUTH”や“again”といったロックな楽曲で闘いながら、時に“SUMMER SONG”や“Sea”といった伸びやかなメロディで自らを癒やしながら、いつだってひたむきで凛とした横顔で歌い続けるYUIの歌唱シーンは、やはり多くの女の子たちが憧れるにふさわしい光と影を放っている。
現在は、目覚ましいイメージチェンジを遂げたFLOWER FLOWERのyuiとして、伸び伸びとした自由さとハッとするほど瑞々しい感性で音楽を響かせてくれている彼女。YUIとしての映像作品をまとめた今作には『FIND ME』というタイトルが付いているが、彼女が自分自身を、自分の居場所を、探し続けたこの特別な季節の中で培った想いや出会いは多くの実りをもたらしながら眩しい光を放っていて、ミュージシャンとしてのこれからを更に照らしてくれるような気がした。実に嬉しいアイテムだ。(上野三樹)
『FIND ME YUI Visual Best』ダイジェスト映像