【完全レポ】躍動するロックンロールにしびれる夜。吉川晃司の東京体育館、ツアーファイナルレポ


吉川晃司が、8月27日に全国ツアー「KIKKAWA KOJI Live 2016 “WILD LIPS” TOUR」の東京公演を東京体育館で開催した。RO69では、この模様をロングレポートでお届けする。

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●セットリスト
1.Wild Lips
2.The Sliders
3.サラマンドラ
4Dance To The Future
5.Oh,Yes!!
6.にくまれそうなNewフェイス
7.LA VIE EN ROSE
8.Expendable
9.ONE WORLD
10.MODERN VISION
11.スティングレイ
12.BOMBERS
13.A-LA-BA・LA-M-BA
14.Black Corvette’98
15.恋をとめないで
16.Fame & Money
17.THE GUNDOGS
18.Juicy Jungle
19.BOY’S LIFE
(encore)
20.Over The Rainbow
21.せつなさを殺せない
22.Dream On

今年、約3年ぶりにリリースされた、自身19枚目となるフルアルバム『WILD LIPS』を提げての全国ツアーは、東京2デイズがファイナル。この最新アルバムが非常にアグレッシブでダンサブルな仕上がりだったこともあり、ライブでの演奏を楽しみにしていた人も多いはず。会場となった東京体育館は3階後方まで満員だった。

ステージに降ろされた透かしの幕の向こうに、バンドメンバーのシルエットが浮かび上がり、タイトなドラムの音とともに、最新作の象徴でもあるリップマークが投影される。客席では、事前に1人ずつに配られたリストバンド型のライトが、一斉に赤く点滅。今宵のライブへの期待に早くも大歓声が沸き起こる。ヘヴィでソリッドなギターが鳴り響き、“Wild Lips”でショーはスタート。そこから畳み掛けるように、ニューアルバムから5曲を演奏し、早くもシンバルキックも炸裂! このオープニングからの圧倒的なドライブ感たるや。強烈で心地好いビートを、オーディエンスだけでなく、吉川自身が楽しんでいるのが、その声やアクションから伝わってくる。

吉川のライブは、いつもサポートメンバーが楽しみなのだが、今回は、バンマスのホッピー神山(Key)と、菅原弘明(Key & G)がしっかりとサウンドの軸をコントロールする中、生形真一(G)、ウエノコウジ(Ba)、湊雅史(Dr)という、名前を見ただけで、その爆発力を想像してワクワクしてしまうようなメンバーが新たにラインアップ。そして、そのサウンドは予想を上回る熱量と疾走感とを生み出していった。新作からの楽曲が攻めているのはもちろんなのだが、“にくまれそうなNewフェイス”から“LA VIE EN ROSE”という超ヒット曲連発の流れにも、キャリアを重ねてもなお枯れることのない、むしろ、よりヴィヴィッドなロックへの衝動を感じた。特に“LA VIE EN ROSE”は、ホッピー神山の放つシーケンスが80’sのフレーバーを散りばめながら、疾走感溢れるギターアレンジで、驚くほどにロックンロールのスリルを感じさせる楽曲に変化していた。「壊す」ことを恐れない、その攻撃的とも言える姿勢は、やはり今回のバンドメンバーによるところが大きいだろう。というより、吉川自身がそういうモードであったからこその人選だったのかもしれない。ライブのMCでも「新しいメンバーは、ロック色を濃くしてみました。わがままな人たち、我が道を歩んでる人たちです」と紹介していたのが印象的。

そして「ここからの2曲だけは休むところ。あとはもうイキっぱなしだから」と言いつつ、「エロイ歌を」と披露した“Expendable”ではAOR感の漂う官能的なファルセットを、さらにスローな“ONE WORLD”では思わず引き込まれてしまうほどの低音を聴かせ、改めてボーカリストとしてのレンジの広さを感じさせる。その後はもう宣言通りのアッパーなセットリストで、吉川自身もギターを弾きながら極上のブギーを奏でる“スティングレイ”、華やかなシンセ音がゴージャスに彩る“A-LA-BA・LA-M-BA”(サビはもちろんシンガロング!)、ウエノの高速ダウンピッキングベースにしびれるイントロからテープキャノンも飛び出した“恋をとめないで”と、とびきりポップな名曲たちが、とびきりソリッドなロックに形を変えて繰り出されていく。“Juicy Jungle”で聴かせるダンサブルでプリミティブなビートにもロックのグルーヴが加わって、会場中が気持ちよさそうにそのリズムに体を揺らす。

アンコールでは、「話し始めたら明日の(ライブの)開演前まで話しちゃいそうだけど」と、オリンピックで水球の日本代表チームが躍進したことなどに触れ、自身もかつては水球選手だったこともあり、「水球日本代表への応援歌をということで」オファーを受けてオリンピック直前に制作したという楽曲“Over The Rainbow”を披露してくれた。そして、この夜のラストは“Dream On”。《信じろ 瞳に宿る光/その流行らない 愚直さが/美しい》と、まっすぐな歌声が広い会場中に力強く響き渡り、ステージは幕を閉じた。スクリーンには「Have a nice dream」そして「See you」の文字。あっという間の2時間半だった。全22曲の濃密なライブ。自身の最高点を常に更新し続けるロックスター、吉川晃司。最高。(杉浦美恵)